2017.06.17 Saturday

今後排除される危険性があるのは性犯罪を扱う創作物だけではない

 昭和の治安維持法と同様、現実の犯罪を実行していない一般人でも、犯罪っぽいことを計画したとみなされただけで処罰の対象になりかねない共謀罪は、過去に繰り返し国会で審議され廃案になってきた経緯があります。ところが今国会では「組織犯罪処罰法改正案」に「テロ等準備罪」を新設する名目なのにテロとは無関係に対象犯罪を大幅に拡大した法案として提出され、政府の趣旨説明も一貫しないまま、衆議院では強行採決、参議院では委員会を省略する異例の「中間報告」で採決を強行され成立してしまいました。
 過去の国会で議員として共謀罪審議に関わっていた保坂世田谷区長のブログでは、成立した共謀罪の多くの問題点がわかりやすく指摘されています。
保坂 じゃあ、「等」とはなにかというと、テロを除くすべての組織的犯罪だというわけです。「等」のところが非常に多い。外務省は「テロ等準備罪」という言葉を使わないんですよ。「計画罪」という言い方をしています。これはあまりにも、矛盾があるからですね。ここには、印象操作があると思います。
「テロ等準備罪」と聞くと、多くの人は一本の法律ができるんだと勘違いします。「テロを共謀の段階で取り締まる一本の法律」というイメージです。実際には、爆弾や生物化学兵器などのテロに対しての共謀罪とか予備罪は、すでに日本にはある。そのことをちゃんと理解する必要があります。
(2017.05.02 保坂展人 鈴木耕 矛盾だらけの「共謀罪答弁」と「テロ等準備罪」という印象操作(対談・動画))
金田法務大臣は「一般の人は捜査の対象とならない」と述べながら、盛山法務副大臣は、「捜査上、一般の人を対象とした調査はありえる」としていて、答弁は食い違っています。これまでの政府の説明は、「組織的犯罪集団を対象とするもので、およそ一般の人が対象になるものではない」というものでしたが、「組織的犯罪集団」の定義や範囲が、大きな論点となります。「正当な目的で活動する団体でも、変質して組織的犯罪集団となる場合がある」とも言われています。
(2017.04.24 保坂展人 「277の共謀罪」に「テロ等準備罪」がないのはなぜか?)
ここからが問題です。「一般の人」と自他共に認識している人であっても、「組織的犯罪集団との関与」が疑われる事態となり捜査対象となった段階で、「一般の人」ではなくなる。つまり、捜査対象となったのは「非・一般の人」なので、「一般の人」を捜査対象としたことにはならないという理屈です。金田大臣の答弁を分解するなら、「仮に、組織的犯罪主集団に関わる者として『一般の人』の人が捜査対象になったと考えると、その時点で『一般の人』とは呼べない存在になるから、あくまで『一般の人』は無関係である」という論旨が答弁の本質なのではないでしょうか。
(2017.05.10 保坂展人 共謀罪の対象ではない「一般の人」はどこにいるのか?)
 「犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定したので一般人は処罰対象にならない」としていた点も今月に入って説明が変わった。一日の参院法務委で金田勝年法相は「組織的犯罪集団と関わりがある周辺者が処罰されることもあり得る」と答弁を一転。林氏も「構成員以外を一般人というのなら、一般人が計画に参画することはあり得る」と認めた。
(2017.06.14 東京新聞)

 恣意的な運用の危険性が指摘されているにもかかわらず、法案を審議する国会では、野党議員に自民党の土屋正忠理事が「テロ行為だ」とヤジを飛ばしていました。どういうつもりなのでしょうか。
 「共謀罪」法案を審議した二十一日の衆院法務委員会で、法務省の林真琴刑事局長の席に詰め寄った民進党議員に、自民党の土屋正忠理事が「テロ行為だ」とヤジを飛ばしたとして、民進、共産両党が抗議した。
(2017.04.22 東京新聞)

 そして共謀罪の成立と同じ日に埼玉県警は、複数の性犯罪で逮捕されていた性犯罪者が1件の犯行について「(著作権者に無許可でネットに公開されていた)成人向けの同人漫画をまねてやった」と供述したことを理由に、その性犯罪者とは面識がない漫画家の自宅を訪問、法的根拠もないのに漫画家側に対して「作品内容が模倣されない配慮」などを要請し「少女が性的被害に遭うような漫画は今後書かない」との返答があったとして「(他の事件でも)同様のケースがあれば今後も申し入れを検討する」意向を複数の新聞社に伝えました。どういうつもりなのでしょうか。
 県警は今月7日に漫画家を訪ね、作品内容が模倣されないような配慮と、作中の行為が犯罪に当たると注意喚起を促すことなどを要請した。漫画家は「少女が性的被害に遭うような漫画は今後描かない」と了承したという。県警幹部は「表現の自由との兼ね合いもあり難しいが、社会に与える影響を考慮した。同様のケースがあれば今後も申し入れを検討する」としている。
(2017.06.14 毎日新聞)

 もし犯罪者が手口を模倣する可能性が本当に問題なら、この新聞記事などで事件の手口を公開することにも同じ問題があるはずです。なぜ漫画家だけ自粛要請されたのでしょうか。
 弁護士など多くの人が埼玉県警の行動について疑問を呈していますが、暴力的な漫画を描いていた漫画家が配慮を求められるのは当然であるかのように警察の圧力を擁護する人もいるようです。しかしこの性犯罪者は漫画に描かれていた手口以外でも複数の性犯罪で起訴されている常習犯であり、漫画を排除すれば性犯罪を犯さなくなるわけではありません。そして、どの新聞社の記事を見ても埼玉県警は「エロ漫画限定で自粛要請する」とは言っていません。警察は「申し入れ」圧力の前例作りとしてエロ漫画家を利用したかっただけです。
 2009年には、警察がコンビニに対して暴力団を扱った漫画の取り扱い自粛要請を行った前例もありました。極端な対象を選びながらじわじわと前例を踏み越え、治安維持法があった時代のように、すべての出版物について憲法違反の検閲を正当化しようとしているようにも見えます。
 刑法学者で、共謀罪に反対の論陣を張ったことでも知られる京都大学・高山佳奈子教授は「表現の自由に対する重大な脅威」と懸念を表明。AERA dot.の取材に「性表現は弾圧されやすいが、同じ理屈ならミステリー小説やホラーなども規制されるべきことになってしまう」とコメントし、また「そもそも有害図書等規制が行われている趣旨は“子どもがまねをする”ためで、大人はまねをしないことが大前提。(表現物を)勝手にまねをする大人が出ても、それは100%その個人の責任」と、容疑者の供述に何ら正当性がないことを強調する。
(2017.06.15 AERA dot. 佐藤圭亮)
 この〔福岡県警から福岡県コンビニエンスストア等防犯協会への〕要請書には、「これらは暴力団を美化する風潮があり、青少年が誤った憧れを抱き、暴力団に加入してしまう恐れがあることから、売り場からの撤去を検討すべきだと考えている。ご理解の上、適切な措置をお願いしたい」とあった。
(「暴力団排除」と言論規制/宮崎 学)

 2017年の国会では禁欲教育論者の自民党・赤枝恒雄衆院議員が、青少年同士の出産問題を扱った性描写のない漫画原作の映画「コドモのコドモ」を名指しして、別のドラマの話と混同させるように映画とは異なる内容を語り、悪影響だと中傷していました。「コドモのコドモ」は原作漫画にも映画にもいっさい性描写がない作品ですが、映画が公開された2008年当時に、元「世界日報」記者で、安倍晋三・岡崎久彦の対談本「この国を守る決意」の編集者で、「新しい歴史教科書をつくる会」元理事で、「美しい日本をつくる会」代表だった純潔教育論者の桜井裕子らがチャンネル桜などで誇張した解釈をもとに批判を行っていたため、いまだにデタラメな伝聞情報だけで中傷され続けているようです。
 以前から性教育弾圧を行ってきた自民党は宗教色の強い青少年政策を推進し、表現規制を強める「青少年健全育成基本法案」も繰り返し提出しているので、今後は警察がこのようなカルト議員の指示で、性教育的な趣旨であっても青少年の出産問題を扱う創作物全般に自粛を求めるような危険性も考えられます。
 社会の中のいろいろなメディアも悪いんですけれども、「十四才の母」なんていう大ヒットしたテレビ番組があったんですね。「十四才の母」、これはよくできていました、ストーリーが。塾に行って、塾に行っているということで、ちょっと遊んでいて、女の子とたまたま川に入っちゃって、ぬれたから乾かそうと思って小屋に入ったら、そういう関係になっちゃったということ。僕たちこれでいいの、いいのと言いながらしちゃっているんですけれども。
 それから「コドモのコドモ」という、これは小学生同士が、くっつけっこというのがはやった時期があるんですよ。くっつけっこをやったときに、やはりできちゃった。
 今言ったとおり、日本では合法ですよ、十四歳のセックスは。ところが、外国、八十九カ国は、十四歳の性行為はレイプ事件ですよ。ましてや小学生は。しかし、日本ではそれは認められていて、こういうメディアの番組の悪いのは、そういう、子供たちが性行為をして、結末はみんなハッピーエンドです。最初は親は反対していた、ずっと。おろしなさい。病院まで行った。だけれども、子供は逃げて帰ってきて、嫌だ、産みたい。親も反対していたけれども、産んだ。その後は、おじいちゃんもおばあちゃんも子供を愛してくれて、ハッピーエンド。
 僕は、こういう余り好ましくない行為自体がハッピーエンドで終わっているというのは、子供たちに対する影響も余りよくない。
(2017.02.22 赤枝恒雄衆院議員 第193回国会 予算委員会第三分科会)
「コドモノコドモ」という映画です。これはフィクションですが、11歳、小学校5年生の春菜ちゃんという子が子供を産むというものです。ランドセルを背負った小学校5年生が子供を産むというストーリーでございますけれども、日本ではこれまで「14歳の母」というテレビドラマがございました。
(2008.09.28 桜井裕子)

・関連
→ 小池百合子と表現規制を推進する宗教組織と高橋史朗の関係
→ 赤枝恒雄議員は以前から問題発言の多い自己責任論者(過去発言まとめ)
→ 赤枝医師の発言の信憑性
→ TVタックルで性感染症自己責任論
→ 集票に利用される宗教と政治家を利用する宗教

2016.12.08 Thursday

パチンコ企業を営業時間や賭金の規制がないカジノに参入させるカジノ解禁は依存症を悪化させる

 自民・公明と維新が異例の短時間でカジノ解禁法案を成立させる国会運営を新聞各紙が批判する一方で、ネットではカジノ解禁を正当化したがる言説があふれていますが、悪質な嘘が多いです。

 まず、橋下徹などによる「既にパチンコや公営ギャンブルによるギャンブル依存症があるから同じ」説ですが、アメリカでギャンブル依存症を研究するマサチューセッツ工科大学のナターシャ・ダウ・シュール教授は、営業時間や賭金に制限がないカジノの連続性が依存症につながると指摘しています。終日ギャンブル場にいる常連客を見たことがある人なら想像がつくと思いますが、営業時間規制がないと依存症患者は持ち金がなくなるまで家に帰らず、問題は悪化します。IR法案は従来型のギャンブル営業規制に抜け穴を作り海外カジノ並みに24時間営業で青天井のカジノ営業を可能にする「国際競争力の高い」規制緩和が前提。パチンコ企業を営業時間や賭金の規制がないカジノに参入させるカジノ解禁は、依存症を悪化させる危険性が高く「包括的なギャンブル依存症対策」とは矛盾します。
“Another core aspect of the addictiveness is their continuous nature. You’re not interrupted by anything; you’re not waiting for the horses to run, you’re not waiting for the guy next to you to choose his card to put down; there’s no roulette wheel spinning. It’s just you and the machine. It’s a continuous flow without interruption,” Schull said.
(2011 Slot Machines: The Big Gamble CBS 60 Minutes)
第六条 政府は、特定複合観光施設区域が地域の特性を生かしつつ真に国際競争力の高い魅力ある観光地の形成の中核としての機能を備えたものとなるよう、必要な措置を講ずるものとする。
(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)
確かに自助グループへの支援など依存症対策の強化は必要ですが、依存症が完治しない病気である(回復はするが、いったん依存症になったら脳の状態は戻らない)ことを踏まえると、依存症対策をすればカジノを作っていい、という主張は「消防車を増やすから火事を出してもいい」といったレベルの論理であり、まさにマッチポンプでしかありません。
(2016.12.06 稲葉剛)

 「カジノ反対派はパチンコ業界と癒着」説はまったく逆。海外カジノにも参入実績があるパチスロ大手ユニバーサル社からファミリー企業に毎月100万円のコンサルタント報酬を受け取っていた自民党の石原宏高議員のように、パチンコ企業と密接な関係にあるのはカジノ推進派議員のほうです。ユニバーサル以外のパチンコ大手セガサミーやダイナムもカジノ参入を公言。カジノを推進するIR議連の幹部はパチンコ業界団体の「政治分野アドバイザー」も務めています。収益悪化で衰退しているパチンコ業界が、大幅な規制緩和になるカジノ参入を狙っているだけで、カジノ推進派とパチンコ業界が対立してるわけではありません。パチンコ企業と密接なIR議連はカジノ解禁と同時にパチンコの換金も合法化していく方針だそうです。
 なんとも不思議な「コンサルティング契約書」である。
 平成23年6月1日に結ばれ、甲は石原宏高代議士の夫人が代表の有限会社IMS。乙は遊技機メーカー・ユニバーサルエンターテインメント(UE)の香港法人で、岡田和生UE社会長がサインをしている。
(2013.03.21 現代ビジネス 「比カジノ事業の疑惑が日本に飛び火!? 石原宏高代議士のファミリー企業に月100万円のコンサル料を支払ったUE社の思惑とは」 伊藤博敏)

 「カジノ法案に反対した野党はパチンコや公営ギャンブルに反対してない」説はデマで、少し検索しただけでも、赤字競輪場の廃止場外発売所パチンコの出店地域規制を厳格化などのギャンブル規制が提言されています。議会でパチンコや公営ギャンブル施設の乱立を容認してるのは自民党側です。
1980年代以降、各ギャンブルとも、売り上げが減り、赤字経営に陥るなど地方自治体の足かせになっているところも出てきました。政府はその売り上げを伸ばすために、「競輪・オートレース法改正案」(2002年)、「競馬法改正案」(04年)を出してきました。日本共産党は、この法案がギャンブル事業の業務を民間事業者に委託できるものであり、競馬で重勝式投票方法でのギャンブル性の拡大、学生の購入制限の解除などが盛り込まれていることから、反対しました。
(2007.02.24 しんぶん赤旗)

 「カジノは富裕層向け」「パチンコより健全」「カジノの入場年齢制限はパチンコより厳しい」説は嘘。現在の海外カジノで主流のビデオスロットは、1回に最大200ラインまで賭けられる機種や、オンラインで数百台を連動させる高額ジャックポットの広域型プログレッシブマシンなど、演出効果も射幸性も中毒性もパチスロ以上で、1セントから賭けられるペニースロット。48州でカジノが解禁されているアメリカでは、カジノ区域外の空港やコンビニや飲食店にまでスロットマシンが並んでいて、出店地域制限も入場年齢制限も機能していません。日本のパチンコ店駐車場で乳幼児の死亡事故が多発した原因は、風営法により入場年齢制限が厳格化され、地方によってはベビーカーの入店まで禁止する警察指導が行われたからで、入場年齢制限はパチンコのほうが厳しそうです。つまり海外カジノ並みの「国際競争力の高い」IR施設を運営する場合、パチンコより入場年齢制限が緩和されてしまいます。
日本のパチスロにはない多彩なゲーム性が楽しく、なかなか飽きることがない。ラスベガスでは空港、コンビニ、スーパーなど、街中のいたるところにスロットマシンが置いてあるが、人気の理由はやはり、そのゲーム性の高さだろう。
(2014.07.16 SPA!)
ペニースロット なぜ楽しいのか。それは的中パターンや的中ラインが増え(たとえば右写真の場合、的中ラインが20ある)、的中率が劇的に高まるからだ。簡単に言ってしまえば、「回すたびに毎回何かが当たりそう」といった楽しい気分でプレーできるというわけだ。
 毎回当たっていたのではカジノ側が儲からないような気もするが、そんな心配は無用だ。じつはペニースロットといっても、1セントだけ賭けてプレーしている者などほとんどいない。一度に数十枚賭けるのが常識で、メーカー側の話によると、統計では平均約70枚賭けているという。そして各当たりの配当は必ずしも賭けた枚数よりも多いとは限らないのでカジノ側は損をしないというわけだ。
(2005.08.10 週刊ラスベガスニュース)

 「カジノは外国人観光客向け」説は嘘で、カジノを推進するIR議連はすでに「外国人限定」案を「カジノ施設の運営が成り立たない」として撤回しました。当初「外国人専用」としてカジノ合法化したベトナム韓国でも、後に自国民も入場可能に法改正しているように、外国人観光客だけでは経営が成り立たない施設が大半なのが現実。48州でカジノが解禁されているアメリカでも地元住民向けのサービスに注力するローカルカジノが増えています。
 外国人への入場限定案については、維新の党などに「カジノ施設の運営が成り立たない」などの慎重論があった。
(2014.10.10 日本経済新聞)

 「カジノで税収が増える」「成長戦略の目玉になる」説には無理がある。現在パチンコの貸玉料金には消費税がかかっていて、不正カード防止のため警察OB天下り会社がカード売上や利用状況をオンライン監視しているので、賭金あたりの税率は高く脱税もバレやすく、店が赤字でも消費税の納付義務があります。ところが「国際競争力の高い」海外並みルールのカジノでは客への還元率が95%以上なので、パチンコ企業と客をカジノに移行させると賭金あたりの税率は激減。IR施設の維持にも費用がかかるので、海外でも集客が減り赤字に転落しているIR施設が多く、長期的な税収増は困難。カジノ移行するパチンコ企業への減税になるだけ。
 公営ギャンブルと比較しても、たとえば競輪場は賭金の20%以上が運営自治体の取り分なのに、運営赤字で撤退する自治体が多いのが現状。運営の取り分が少ないカジノで税収が増えるとは考えにくい。
 シンガポールは、カジノ付き統合リゾート(IR)が売り上げを落としている。同国でIR「リゾーツ・ワールド・セントーサ」を運営するゲンティン・シンガポールは、2015年10〜12月期の最終損益が780万シンガポール(S)ドル(約6億3600万円)の損失となり、前年同期の8920万Sドルの黒字から赤字に転落した。富裕層客の減少などが要因だ。
(2016.03.04 SankeiBiz)

 「日本のパチンコ・公営ギャンブル売上は海外カジノ売上より多い」説は比較する数字の間違い。パチンコや競馬競輪競艇の売上は「賭金の総額」ですが、海外カジノの売上として公開されている数字は「賭金の総額から客への配当金を差引いた収益」。海外カジノは客への還元率が95%以上なので、数字が低く見えるだけ。
・カジノ売上高:カジノで顧客の賭け金の総額から、顧客に支払った額を差し引いたものを基本とし、金額を調整したもの。各国の会計基準や各社でそれぞれ「Casino Revenue」、「Gross Gaming Revenue」、「Gross Gaming Win」、「Operating Revenue」等の用語が用いられ調整項目が異なるが、本レポートにおいては便宜的に「カジノ売上高」と定義する。
(平成26年6月 東京都 IR(統合型リゾート)に関する調査業務委託報告書)

 「カジノ運営はアメリカのカジノ大手」という話は最初だけで、最後まで面倒を見てくれるわけではありません。アメリカのカジノ大手MGMリゾーツとラスベガス・サンズはベトナム進出時、カジノを「外国人専用」とする法規制が経営に不利と判断、開業直前で撤退した前科があり、儲からないと判断したら即撤退します。カジノも日本の公営ギャンブル場と同様に長期的には収益が悪化する例が多いのですが、もしアメリカのカジノ大手が日本から撤退した場合、日本でカジノを運営するのはパチンコ企業ばかりになりそうです。
アメリカのカジノ大手ラスベガス・サンズも、ベトナムでの計画が頓挫した。これらは、ベトナム国内の住民にカジノで遊ぶことが認められそうになく、中国からの旅行客だけに頼ることは経営に不利だと判断したためだという。
(2013.12.19 NewSphere 「建てれば客が来る」アジアのカジノ建設ブームに海外紙が警鐘)

 「カジノはIR地域にしか設置されない」条文も信用できません。競馬なども合法化当初は地域限定でしたが全国に拡大、場外発売所やネット販売も解禁されました。しかも競艇では、法律上の明文規定がなかったのに監督官庁が全国に場外発売所を認可していた前例があります。名古屋などで住民が設置に反対する行政訴訟を起こしましたが、法律にない場外発売所も「他の公営ギャンブルで前例があるから」と裁判所が認める判例を出してしまいました。この判例に従うと、カジノも「他の公営ギャンブルで前例があるから」と、全国的な場外カジノやオンラインカジノを監督官庁の認可だけで解禁される可能性があります。日本のギャンブルは監督官庁の利権になっていて、事業全体の売上低迷が問題になると安易な規制緩和が強引に行われる傾向があるので要注意です。
このように,自転車競技及び小型自動車競走においては,法律の明文において場外発売場の設置が認められているのであるから,同種の公営競技で共通の構造を有する競走法や競馬法が,場外発売場の設置を認めない趣旨で立法されたものと解することには合理的な理由がなく,そのように解すべきものとは認められない。
(平成18年7月20日 名古屋地方裁判所民事第9部)

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【追記】

 「依存症患者のギャンブル利用をマイナンバーで制限」案は悪用される危険性が高いです。競馬など既存のギャンブルでも一時的に設定された高額入場料や入場制限が緩和されてきた歴史があります。カジノ法案を通過させる言い訳の依存症対策も数年後にはギャンブル依存症とは無関係なゲーム規制だけの話に矮小化され、マイナンバーはギャンブル施設の集客目的にだけ悪用される事態になりかねません。アメリカの地元民向けローカルカジノでもリピーターを囲い込むために様々な工夫が行われています。
 具体案としてあがっているのがマイナンバーを活用して入場回数を管理する方法。過去に依存症と診断されたことがある人や、依存症の疑いがある人に対し、入場回数を制限したり、入場を禁止したりする制度を検討します。上限回数などは与党協議で詰めるとのこと。
 この方針では「入場回数の制限や禁止に当たるかどうかを調べるために、全入場者がマイナンバーを提示」しなくてはならないことになります。
 つまり、自らの社会保障や税番号の制度である「絶対他人に知られてはいけない」はずのマイナンバーを持ち歩き、カジノの入口で提示するというまるで冗談のような事態になってしまうのです。
(2016.12.19 BUZZAP!)
 統計によるとラスベガスのカジノの売り上げの3分の1は地元民、3分の1が車で4〜5時間で来ることができる南カリフォルニア(ロスアンゼルス、サンディエゴ地区)からの来訪者、そして残りの3分の1がニューヨークやシカゴなどの全米各地および世界各国から航空機を使ってやって来る観光客によって支えられている。
(1998.09.16 週刊ラスベガスニュース)
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2016.07.25 Monday

小池百合子と表現規制を推進する宗教組織と高橋史朗の関係

 東京都知事選で有力候補とされている小池百合子元防衛相が、2011年の国会で表現規制に関する請願を紹介していた件が話題ですが、この「仮想の児童ポルノ単純所持を処罰すべき」とする請願の要旨は、「日本会議」政策委員の高橋史朗が自民党の機関紙に発表した主張とほとんど同じです。
 現行の「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」では児童ポルノの売買や譲渡は処罰の対象としているが、「単純所持」は処罰されない。また、ネット上においても、児童ポルノをパソコンや携帯電話に取り込む「単純所持」が許される限り、違法画像が児童ポルノサイトに掲載されると、不特定多数の利用者がコピーを繰り返し、画像が無数に広がり、負の連鎖を断つことができない。さらに、漫画やアニメ、ゲームソフト等「仮想のわいせつ画像や性的虐待の表現」も目に余り、これ以上、児童ポルノの氾濫を放置しておくことはできない。一日も早く児童ポルノサイトに接続できなくなる制度等を導入し、全ての「単純所持」を処罰できる有効な法律改正をすべきである。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。
一、児童ポルノに関して、全ての「単純所持」を処罰できるよう、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の早期改正をすること。
(2011 第178回国会 請願の要旨)
 さらに高橋史朗は,「児童ポルノの定義から絵を削除したが,疑問が残る」(p.61),「同法案は実存する児童を被写体としたポルノに限定したが,コミック,アニメなどの児童ポルノについても厳しく規制すべきである.悪質で露骨な性描写の目立つ『少年少女向けポルノコミック』なども児童をターゲットにした大人のいやしき商業主義にもとづくものであり,当然規制すべきである」(p.60)と主張している.
(1999 高橋史朗 「児童買春 豊かな社会の心の貧困 問われる大人の性モラル 児童買春等処罰法が成立」『月刊自由民主』555号 自由民主党)(2016.01.08 Ingsoc)

 小池百合子は宗教組織「日本会議」国会議員懇談会の副会長ですが、高橋史朗は「生長の家学生会全国総連合」委員長から日本会議の母体「日本青年協議会」の幹部になった人物。
 また高橋は、「臨時教育委員会」専門委員、内閣府「男女共同参画会議」委員など、自民党政権でも重用されていて「付き合いで請願の紹介議員になった」程度の関係性ではありません。
 2008年にも小池百合子は表現規制に関する請願の紹介議員をしていますが、この請願の紹介議員は日本会議系の規制派議員だらけだったと指摘されています。
 日本会議の集会には崇教真光や霊友会や佛所護念会教団やキリストの幕屋などの信者が多数参加、そして統一教会など宗教団体のイベントでは高橋ら日本会議幹部が講師を務めています。
 確かに、GHQに押収された「生長の家」の創始者・谷口雅春の著作をアメリカのアーカイブから見つけ出したのだとすれば、教団としては大金星にちがいない。世代的にも地理的にも「日本青年協議会」系の学生運動と距離のあった高橋が「日本青年協議会」の幹部となったのは、この宗教的実績が根拠だと見るのが自然だろう。
(2015.11.08 菅野完)

 日本会議は「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の母体でもあり「表現の自由」などの人権を保障しない考え方に改める自民党の憲法改正草案に強い影響を与えた団体だと報道されていますが、小池は2012年民主党政権時の衆議院予算委員会で、この自民党改憲草案を丸のみしろと当時の野田総理に要求していました。
○小池委員 私は、社会保障と税の一体改革、先ほどから、処分が甘い、そして命をかけると言っていたのにと、このように申し上げているわけでございますけれども、また、ある意味で、この法案そのものは自民党案の丸のみということを表現される方もおられます。私は、むしろ安全保障の案を丸のみしてほしい。ましてや、憲法改正草案もちゃんと準備いたしておりますので、いっそのこと丸のみするということも、我が国が有しているエネルギーそして時間ということを考えたら、いっそのこと早いんじゃないですか。どうですか、総理。
(平成24年7月9日 第180回国会 予算委員会 会議録)
「緊急事態であっても、基本的人権は制限すべきではない。」との意見もありますが、国民の生命、身体及び財産という大きな人権を守るために、そのため必要な範囲でより〔表現の自由などの〕小さな人権がやむなく制限されることもあり得るものと考えます。
(平成24年10月 改正草案Q&A 自由民主党 憲法改正推進本部)
〔阪口正二郎教授〕「財産権を『大きな人権』に位置付け、『財産権という大きな人権を守るため』と表現の自由が制限されていいというのは、全く逆です」
 重要な人権が制限されかねないと、なぜ阪口さんは考えるのか。「この『Q&A』では『(人権は生まれながらに誰もが持っているという)西欧の天賦人権説に基づく規定は改める必要がある』と書いており、国民に憲法尊重義務を新たに課すと主張するなど、人権より国家が優位だと考えている印象を受けます。そこで『国民の生命、身体及び財産という大きな人権を守るため』という部分を、『国家を守るため』と読み替えてみると、その意図がはっきりします」
(2016.05.23 毎日新聞 江畑佳明)
第一八条(基本的人権の制限) 権利は義務を伴う。国民は、互いに自由および権利を尊重し、これを濫用してはならない。
  2 自由および権利の行使については、国の安全、公共の利益または公の秩序の維持のため、法律により制限することができる。
(2013.4.26 産経新聞80周年「国民の憲法」) 起草委員長 田久保忠衛(日本会議議長)

 分裂選挙で自民党都連の公認でない小池を多くの自民党議員が支援しているのも、都連のメンツより宗教組織との関係を重視する議員が多いからでしょう。「日本会議国会議員懇談会」特別顧問「親学推進議員連盟」会長でもある安倍首相側は小池の出馬を容認している説もあり、党と対立するほどの大義もないようです。
 「保育所の広さ制限などの規制緩和(安全性無視の詰め込み)」「子供食堂などを活用(行政の責任放棄)」「満員電車ゼロへ2階建通勤電車の導入促進(乗降に時間がかかり遅延するなど過去に失敗例あり)」「空き家をシェアハウスにして保育士に現物支給(違法タコ部屋)」など小池のトンデモ政策や、公式サイトに掲載されている日本会議議長の田久保忠衛との対談「東京に核ミサイルを」のようなリスク無視の思想も、宗教組織に影響された非現実的な精神論でしかありません。東京五輪を控えた都知事選にもかかわらず、小池が外国人差別発言を繰り返しているのも、宗教的な差別意識を選挙に利用する意図がありそうです。

 高橋史朗は「親学推進協会」の会長ですが、小池百合子は2012年に国会内で行われた「親学推進議員連盟」勉強会にも参加していました。この宗教的な勉強会では高橋が講演し、先天的要因による発達障害児への差別を助長するトンデモ資料を配布、関係者の抗議が殺到したと報道されました。
 高橋史朗は宗教団体「モラロジー研究所」の特任教授で、差別的な親学関連書籍の多くはモラロジー研究所から出版されています。
 超党派の国会議員でつくる「親学推進議員連盟」が5月末「発達障害を予防する伝統的子育て」をテーマに勉強会を開いたことが分かった。配布資料には発達障害児の育児環境を「(子どもへの)声かけが少ない」とした表や「発達障害児は笑わない」「予防は可能」などの記述もあった。発達障害は子育ての問題だと受け取られかねない内容に、関係者の抗議が殺到、議連側は最終的に陳謝した。
(2012.06.12 毎日新聞)
 改正教育基本法成立の数日後にできた「親学推進協会」(富山県)も、独自に親学を広めた。約20の専門学校や短大で親学の授業が行われ、協会が認定した「親学アドバイザー」は1300人以上いる。
 同協会長は明星大学特別教授の高橋史朗氏だ。日本会議によると、高橋氏は現在、日本会議の運動方針作りに関わる政策委員を務める。
 親学という言葉は07年1月、第1次安倍政権の「教育再生会議」第1次報告に、「親として必要な『親学』を学ぶ機会を提供する」と盛り込まれた。
 日本会議は同年3月の理事会で、安倍政権に「親学」普及本部の設置などを求める「教育改革プラン」を決定。自民党が野党だった12年4月には、超党派の「親学推進議員連盟」が発足し、安倍晋三首相が会長に就いた。
 高橋氏は第2次政権の13年からは、内閣府の男女共同参画会議の議員を務める。
(2016.06.17 朝日新聞)

 「新しい歴史教科書をつくる会」は都知事選で小池支持を表明していますが、高橋は埼玉県教育委員に指名される2004年ごろまで「つくる会」副会長として教科書の監修に関与していました。この「つくる会」は、2013年に漫画「はだしのゲン」について図書館や学校からの撤去を各所に要請していた凶悪な表現規制団体です。政治的理由による撤去要請ですが、要請を受けた教育委員会が「性的な乱暴シーンが小中学生には過激」という理由をこじつけて撤去に応じたことも問題になりました。
本会議で全会一致で不採択となったものの、その後市教委が漫画の内容を改めて確認した結果、「首を切ったり、女性への性的な乱暴シーンが小中学生には過激」と判断し、その月の校長会でゲンを閉架措置とし、できるだけ貸し出さないよう口頭で求めたとのことです。それにより、市内の小中学校49校のうちゲンを全巻保有していた39校全てが閉架措置を取ったとのことです。
(2015.08.06 はだしのゲン図書館撤去問題はそれからどうなったのか Timesteps)
 新しい歴史教科書をつくる会(杉原誠四郎会長)は11日、漫画「はだしのゲン」の内容が皇室や国歌を否定するもので、学校教育法の趣旨に反しているなどとして、「ゲン」を教育現場から撤去することを求める要請書を下村博文文部科学相あてに提出した。
(2013.09.11 産経新聞)

 高橋史朗は、育鵬社のデタラメな教科書を執筆している「日本教育再生機構」の理事でもあります。そして自民党の都政で、東京都教育委員会はこの育鵬社の教科書を採択しています。
育鵬社の教科書といえば今やトンデモなデマとして広く認知されている「江戸しぐさ」を掲載していたことで非常に有名。また、アメリカ合衆国の反進化論団体らが唱えるインテリジェントデザイン説(ID説)の一種として知られる「サムシング・グレート」についてのコラムが掲載されていたことで「トンデモ科学が教科書に載せられている」として批判が巻き起こっていました。
(2015.07.23 BUZZAP!)

 高橋は親学関連の書籍などでも「江戸しぐさ(現実の江戸とは全く関係ない1970年代以降に作られたマナー集)」「サムシング・グレート(村上和雄が天理教の信仰を取り入れたインテリジェントデザイン説)」「ゲーム脳(ゲームや携帯電話を全否定する親学推進協会評議員・森昭雄の妄言)」を肯定的に紹介していますが、親学以前は著書で統一教会による純潔教育を擁護し、米キリスト教福音派の反中絶・反避妊カルト「Focus on the Family」による反コンドームデマを日本に拡散していたことでも知られています。つまり高橋たちが伝統的保守というイメージもインチキで、海外で新たに捏造されたニセ「伝統」デマまで持ち込み、日本の宗教に悪影響を与えているのです。
 日本大学の澤田昭夫教授によれば、安全セックス運動の裏にあるセックス産業の欺瞞をあばき、健全な家庭の復活を目指すアメリカの一大家庭運動「フォーカス・オン・ザ・ファミリー」が指摘するのは、発見できるコンドームの穴の大きさは一ミクロンであるが、エイズのウイルスはその一〇分の一で、人間の精子の約四五〇分の一しかないという事実である。
(1994 高橋史朗「間違いだらけの急進的性教育」P37-38)
「HIVはコンドームを通り抜ける」という噂は、アメリカの反避妊団体「AMERICAN LIFE LEAGUE」が広めたガセネタが元になっています。キリスト教原理主義者は避妊用品の販売・配布を妨害するためにコンドーム否定論を広めているのです。
(→HIV感染予防についてよくある誤解)

 また、2009年の衆院選で小池百合子のために小選挙区候補を出馬辞退させて共闘した幸福実現党など、日本会議以外の宗教団体も小池の選挙を支援しているようです。都知事選には幸福実現党の独自候補も出馬していますが、野口健などの信者小池支持に回っています。
 幸福実現党は「表現の自由を守る」などと発言することもありますが、幸福の科学は1991年に「ヘア・ヌードは日本全土を色情地獄化する試み」「自由には方向性が必要」と主張する「ストップ・ザ・ヘアヌード」デモを行い、日比谷公園の野外ステージで取材に来たテレビカメラに向けてヘアヌード雑誌を燃やすパフォーマンスを行ったことがある凶悪な表現規制団体です。宗教上の都合で「表現の自由」を制限するために権力を持とうとしているようなものです。

 このように、日本会議以外の宗教組織も含めて、小池の宗教的政策に影響を与えている支持層には表現規制推進派が多いので、小池の選対役員が発表したコメント「目をそむけたくなるものも中にはあり、そこをどのように線引きするか議論が必要」も、不明確な基準による表現規制を推進する宗教議員の常套句「行き過ぎた表現は規制すべき」と同じ意味にしか解釈できないのです。
 そして、政治資金に関して舛添要一や猪瀬直樹より疑惑が多い小池では、もし都知事に当選してもまた前任者たちと同じような理由により辞職する可能性が高いという指摘もあります。

・関連
→ 自然災害と宗教を選挙に利用する石原都知事の「津波は天罰」発言
→ 差別発言をくりかえす石原都知事に媚びる週刊誌
→ コンドーム普及を妨害する偏見
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→ 集票に利用される宗教と政治家を利用する宗教
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