2016.07.25 Monday

小池百合子と表現規制を推進する宗教組織と高橋史朗の関係

 東京都知事選で有力候補とされている小池百合子元防衛相が、2011年の国会で表現規制に関する請願を紹介していた件が話題ですが、この「仮想の児童ポルノ単純所持を処罰すべき」とする請願の要旨は、「日本会議」政策委員の高橋史朗が自民党の機関紙に発表した主張とほとんど同じです。
 現行の「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」では児童ポルノの売買や譲渡は処罰の対象としているが、「単純所持」は処罰されない。また、ネット上においても、児童ポルノをパソコンや携帯電話に取り込む「単純所持」が許される限り、違法画像が児童ポルノサイトに掲載されると、不特定多数の利用者がコピーを繰り返し、画像が無数に広がり、負の連鎖を断つことができない。さらに、漫画やアニメ、ゲームソフト等「仮想のわいせつ画像や性的虐待の表現」も目に余り、これ以上、児童ポルノの氾濫を放置しておくことはできない。一日も早く児童ポルノサイトに接続できなくなる制度等を導入し、全ての「単純所持」を処罰できる有効な法律改正をすべきである。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。
一、児童ポルノに関して、全ての「単純所持」を処罰できるよう、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の早期改正をすること。
(2011 第178回国会 請願の要旨)
 さらに高橋史朗は,「児童ポルノの定義から絵を削除したが,疑問が残る」(p.61),「同法案は実存する児童を被写体としたポルノに限定したが,コミック,アニメなどの児童ポルノについても厳しく規制すべきである.悪質で露骨な性描写の目立つ『少年少女向けポルノコミック』なども児童をターゲットにした大人のいやしき商業主義にもとづくものであり,当然規制すべきである」(p.60)と主張している.
(1999 高橋史朗 「児童買春 豊かな社会の心の貧困 問われる大人の性モラル 児童買春等処罰法が成立」『月刊自由民主』555号 自由民主党)(2016.01.08 Ingsoc)

 小池百合子は宗教組織「日本会議」国会議員懇談会の副会長ですが、高橋史朗は「生長の家学生会全国総連合」委員長から日本会議の母体「日本青年協議会」の幹部になった人物。
 また高橋は、「臨時教育委員会」専門委員、内閣府「男女共同参画会議」委員など、自民党政権でも重用されていて「付き合いで請願の紹介議員になった」程度の関係性ではありません。
 2008年にも小池百合子は表現規制に関する請願の紹介議員をしていますが、この請願の紹介議員は日本会議系の規制派議員だらけだったと指摘されています。
 日本会議の集会には崇教真光や霊友会や佛所護念会教団やキリストの幕屋などの信者が多数参加、そして統一教会など宗教団体のイベントでは高橋ら日本会議幹部が講師を務めています。
 確かに、GHQに押収された「生長の家」の創始者・谷口雅春の著作をアメリカのアーカイブから見つけ出したのだとすれば、教団としては大金星にちがいない。世代的にも地理的にも「日本青年協議会」系の学生運動と距離のあった高橋が「日本青年協議会」の幹部となったのは、この宗教的実績が根拠だと見るのが自然だろう。
(2015.11.08 菅野完)

 日本会議は「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の母体でもあり「表現の自由」などの人権を保障しない考え方に改める自民党の憲法改正草案に強い影響を与えた団体だと報道されていますが、小池は2012年民主党政権時の衆議院予算委員会で、この自民党改憲草案を丸のみしろと当時の野田総理に要求していました。
○小池委員 私は、社会保障と税の一体改革、先ほどから、処分が甘い、そして命をかけると言っていたのにと、このように申し上げているわけでございますけれども、また、ある意味で、この法案そのものは自民党案の丸のみということを表現される方もおられます。私は、むしろ安全保障の案を丸のみしてほしい。ましてや、憲法改正草案もちゃんと準備いたしておりますので、いっそのこと丸のみするということも、我が国が有しているエネルギーそして時間ということを考えたら、いっそのこと早いんじゃないですか。どうですか、総理。
(平成24年7月9日 第180回国会 予算委員会 会議録)
「緊急事態であっても、基本的人権は制限すべきではない。」との意見もありますが、国民の生命、身体及び財産という大きな人権を守るために、そのため必要な範囲でより〔表現の自由などの〕小さな人権がやむなく制限されることもあり得るものと考えます。
(平成24年10月 改正草案Q&A 自由民主党 憲法改正推進本部)
〔阪口正二郎教授〕「財産権を『大きな人権』に位置付け、『財産権という大きな人権を守るため』と表現の自由が制限されていいというのは、全く逆です」
 重要な人権が制限されかねないと、なぜ阪口さんは考えるのか。「この『Q&A』では『(人権は生まれながらに誰もが持っているという)西欧の天賦人権説に基づく規定は改める必要がある』と書いており、国民に憲法尊重義務を新たに課すと主張するなど、人権より国家が優位だと考えている印象を受けます。そこで『国民の生命、身体及び財産という大きな人権を守るため』という部分を、『国家を守るため』と読み替えてみると、その意図がはっきりします」
(2016.05.23 毎日新聞 江畑佳明)
第一八条(基本的人権の制限) 権利は義務を伴う。国民は、互いに自由および権利を尊重し、これを濫用してはならない。
  2 自由および権利の行使については、国の安全、公共の利益または公の秩序の維持のため、法律により制限することができる。
(2013.4.26 産経新聞80周年「国民の憲法」) 起草委員長 田久保忠衛(日本会議議長)

 分裂選挙で自民党都連の公認でない小池を多くの自民党議員が支援しているのも、都連のメンツより宗教組織との関係を重視する議員が多いからでしょう。「日本会議国会議員懇談会」特別顧問「親学推進議員連盟」会長でもある安倍首相側は小池の出馬を容認している説もあり、党と対立するほどの大義もないようです。
 「保育所の広さ制限などの規制緩和(安全性無視の詰め込み)」「子供食堂などを活用(行政の責任放棄)」「満員電車ゼロへ2階建通勤電車の導入促進(乗降に時間がかかり遅延するなど過去に失敗例あり)」「空き家をシェアハウスにして保育士に現物支給(違法タコ部屋)」など小池のトンデモ政策や、公式サイトに掲載されている日本会議議長の田久保忠衛との対談「東京に核ミサイルを」のようなリスク無視の思想も、宗教組織に影響された非現実的な精神論でしかありません。東京五輪を控えた都知事選にもかかわらず、小池が外国人差別発言を繰り返しているのも、宗教的な差別意識を選挙に利用する意図がありそうです。

 高橋史朗は「親学推進協会」の会長ですが、小池百合子は2012年に国会内で行われた「親学推進議員連盟」勉強会にも参加していました。この宗教的な勉強会では高橋が講演し、先天的要因による発達障害児への差別を助長するトンデモ資料を配布、関係者の抗議が殺到したと報道されました。
 高橋史朗は宗教団体「モラロジー研究所」の特任教授で、差別的な親学関連書籍の多くはモラロジー研究所から出版されています。
 超党派の国会議員でつくる「親学推進議員連盟」が5月末「発達障害を予防する伝統的子育て」をテーマに勉強会を開いたことが分かった。配布資料には発達障害児の育児環境を「(子どもへの)声かけが少ない」とした表や「発達障害児は笑わない」「予防は可能」などの記述もあった。発達障害は子育ての問題だと受け取られかねない内容に、関係者の抗議が殺到、議連側は最終的に陳謝した。
(2012.06.12 毎日新聞)
 改正教育基本法成立の数日後にできた「親学推進協会」(富山県)も、独自に親学を広めた。約20の専門学校や短大で親学の授業が行われ、協会が認定した「親学アドバイザー」は1300人以上いる。
 同協会長は明星大学特別教授の高橋史朗氏だ。日本会議によると、高橋氏は現在、日本会議の運動方針作りに関わる政策委員を務める。
 親学という言葉は07年1月、第1次安倍政権の「教育再生会議」第1次報告に、「親として必要な『親学』を学ぶ機会を提供する」と盛り込まれた。
 日本会議は同年3月の理事会で、安倍政権に「親学」普及本部の設置などを求める「教育改革プラン」を決定。自民党が野党だった12年4月には、超党派の「親学推進議員連盟」が発足し、安倍晋三首相が会長に就いた。
 高橋氏は第2次政権の13年からは、内閣府の男女共同参画会議の議員を務める。
(2016.06.17 朝日新聞)

 「新しい歴史教科書をつくる会」は都知事選で小池支持を表明していますが、高橋は埼玉県教育委員に指名される2004年ごろまで「つくる会」副会長として教科書の監修に関与していました。この「つくる会」は、2013年に漫画「はだしのゲン」について図書館や学校からの撤去を各所に要請していた凶悪な表現規制団体です。政治的理由による撤去要請ですが、要請を受けた教育委員会が「性的な乱暴シーンが小中学生には過激」という理由をこじつけて撤去に応じたことも問題になりました。
本会議で全会一致で不採択となったものの、その後市教委が漫画の内容を改めて確認した結果、「首を切ったり、女性への性的な乱暴シーンが小中学生には過激」と判断し、その月の校長会でゲンを閉架措置とし、できるだけ貸し出さないよう口頭で求めたとのことです。それにより、市内の小中学校49校のうちゲンを全巻保有していた39校全てが閉架措置を取ったとのことです。
(2015.08.06 はだしのゲン図書館撤去問題はそれからどうなったのか Timesteps)
 新しい歴史教科書をつくる会(杉原誠四郎会長)は11日、漫画「はだしのゲン」の内容が皇室や国歌を否定するもので、学校教育法の趣旨に反しているなどとして、「ゲン」を教育現場から撤去することを求める要請書を下村博文文部科学相あてに提出した。
(2013.09.11 産経新聞)

 高橋史朗は、育鵬社のデタラメな教科書を執筆している「日本教育再生機構」の理事でもあります。そして自民党の都政で、東京都教育委員会はこの育鵬社の教科書を採択しています。
育鵬社の教科書といえば今やトンデモなデマとして広く認知されている「江戸しぐさ」を掲載していたことで非常に有名。また、アメリカ合衆国の反進化論団体らが唱えるインテリジェントデザイン説(ID説)の一種として知られる「サムシング・グレート」についてのコラムが掲載されていたことで「トンデモ科学が教科書に載せられている」として批判が巻き起こっていました。
(2015.07.23 BUZZAP!)

 高橋は親学関連の書籍などでも「江戸しぐさ(現実の江戸とは全く関係ない1970年代以降に作られたマナー集)」「サムシング・グレート(村上和雄が天理教の信仰を取り入れたインテリジェントデザイン説)」「ゲーム脳(ゲームや携帯電話を全否定する親学推進協会評議員・森昭雄の妄言)」を肯定的に紹介していますが、親学以前は著書で統一教会による純潔教育を擁護し、米キリスト教福音派の反中絶・反避妊カルト「Focus on the Family」による反コンドームデマを日本に拡散していたことでも知られています。つまり高橋たちが伝統的保守というイメージもインチキで、海外で新たに捏造されたニセ「伝統」デマまで持ち込み、日本の宗教に悪影響を与えているのです。
 日本大学の澤田昭夫教授によれば、安全セックス運動の裏にあるセックス産業の欺瞞をあばき、健全な家庭の復活を目指すアメリカの一大家庭運動「フォーカス・オン・ザ・ファミリー」が指摘するのは、発見できるコンドームの穴の大きさは一ミクロンであるが、エイズのウイルスはその一〇分の一で、人間の精子の約四五〇分の一しかないという事実である。
(1994 高橋史朗「間違いだらけの急進的性教育」P37-38)
「HIVはコンドームを通り抜ける」という噂は、アメリカの反避妊団体「AMERICAN LIFE LEAGUE」が広めたガセネタが元になっています。キリスト教原理主義者は避妊用品の販売・配布を妨害するためにコンドーム否定論を広めているのです。
(→HIV感染予防についてよくある誤解)

 また、2009年の衆院選で小池百合子のために小選挙区候補を出馬辞退させて共闘した幸福実現党など、日本会議以外の宗教団体も小池の選挙を支援しているようです。都知事選には幸福実現党の独自候補も出馬していますが、野口健などの信者小池支持に回っています。
 幸福実現党は「表現の自由を守る」などと発言することもありますが、幸福の科学は1991年に「ヘア・ヌードは日本全土を色情地獄化する試み」「自由には方向性が必要」と主張する「ストップ・ザ・ヘアヌード」デモを行い、日比谷公園の野外ステージで取材に来たテレビカメラに向けてヘアヌード雑誌を燃やすパフォーマンスを行ったことがある凶悪な表現規制団体です。宗教上の都合で「表現の自由」を制限するために権力を持とうとしているようなものです。

 このように、日本会議以外の宗教組織も含めて、小池の宗教的政策に影響を与えている支持層には表現規制推進派が多いので、小池の選対役員が発表したコメント「目をそむけたくなるものも中にはあり、そこをどのように線引きするか議論が必要」も、不明確な基準による表現規制を推進する宗教議員の常套句「行き過ぎた表現は規制すべき」と同じ意味にしか解釈できないのです。
 そして、政治資金に関して舛添要一や猪瀬直樹より疑惑が多い小池では、もし都知事に当選してもまた前任者たちと同じような理由により辞職する可能性が高いという指摘もあります。

・関連
→ 自然災害と宗教を選挙に利用する石原都知事の「津波は天罰」発言
→ 差別発言をくりかえす石原都知事に媚びる週刊誌
→ コンドーム普及を妨害する偏見
→ HIV感染予防についてよくある誤解
→ 茨城県立高校の必修道徳テキストでカルト宗教信者のニセ科学本を引用
→ 集票に利用される宗教と政治家を利用する宗教

2011.03.18 Friday

自然災害と宗教を選挙に利用する石原都知事の「津波は天罰」発言

 知事引退を撤回した出馬会見で石原慎太郎知事が「津波は天罰」と被災者を中傷する宗教的発言をしたうえ、その後の会見で新聞記者から発言意図を確認されても撤回せず「日本に対する天罰だ」と重ねて主張したことが問題になり、宮城県知事から抗議を受けた石原都知事は発言の翌日にようやく謝罪しました。
 東京都の石原慎太郎知事は14日、東日本大震災への国民の対応について記者団に問われ「我欲で縛られた政治もポピュリズムでやっている。それを一気に押し流す。津波をうまく利用して、我欲をやっぱり一回洗い落とす必要がある。積年にたまった日本人の心のあかをね。やっぱり天罰だと思う。被災者の方々はかわいそうですよ」と述べた。
 知事は一連の発言の前に、持論を展開して「日本人のアイデンティティーは我欲になっちゃった。アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等だ。日本はそんなもんない。我欲だよ。物欲、金銭欲」と語っていた。
 同日、この後に開いた都庁の記者会見で「天罰」の意味について「日本に対する天罰だ」と釈明。「大きな反省の一つのよすがになるんじゃないか。それしなかったら犠牲者たちは浮かばれない」と話した。天罰について発言した際、「『被災された人は非常に耳障りな言葉に聞こえるかもしれないが』と言葉を添えた」としたが、実際には話していなかった。
(2011.03.14 共同通信)
 東京都の石原慎太郎知事は15日、記者会見し、東日本大震災を「天罰」とした14日の発言について「撤回し、深くおわびします」と陳謝した。
 知事は「行政の長である私が使った『天罰』という言葉に、添える言葉が足りなかった。かつてない困難の中にある被災者の皆さまの失意と無念は拝察するにあまりある。同じ日本に住む者として、明日はわが身、わがことであると思う」と述べた。
(2011.03.15 共同通信)
 では、逆に考えて、石原慎太郎は「我欲を捨て、正しい治世を行なえば、災害は起こらない」と考えているのでしょうか? しかし、そう考えの人間が上に立てば、災害対策が蔑ろにされることは容易に想像がつきます。
 災害と一言で言っても、地震や津波といった自然由来の部分は人間の力ではどうにもならないとしても、備えや事後の対処といった人為由来の部分については、ちゃんとした対策をすれば、ひとりでも多くの人の命や財産を救うことができます。今回の地震と津波は確かに大きな被害を発生させました。報道などでは為す術が無かったかのように報じられていますが、それでも堤防や物資などの備えや、その後の人々の行動が、被害から人々を守ったという側面もあるはずです。
 本来であれば、現在地震の影響を受けている東京都の知事である石原慎太郎が行なうべきは、まず第一に都民の混乱や不安に対する対処、第二に東京の災害対策に対する評価と新たな対策なのですが、石原はそうしたことを飛び越えて、自ら「天罰という宗教的道徳観」に逃げ込み、現実の被害を腐したのです。
(2011.03.16 赤木智弘の眼光紙背)

 「津波は天罰」と発言する3日前の、11日の地震直後の緊急会見では石原都知事は「(東京が)今程度の損壊で済むようなら、他県に比べてありがたい」と、被災者に対して他人事という意識が感じられる発言もしていました。
 また石原都知事は10年前からテレビなどでたびたび「東京湾に造ったっていいくらい日本の原発は安全」と主張していました。しかし現実には、津波による被害を受けた福島原発は以前から「津波が発生した際には機器冷却海水の取水が出来なくなる」と指摘されていたのに、東京電力は津波対策も機器点検も怠っていたのです。

 自然災害の被害に対して「天罰」という言葉を使うことじたい被災者を中傷した問題発言ですが、謝罪会見で石原都知事は「添える言葉が足りなかった」と釈明し「天罰」の存在は否定しませんでした。
 ネット上などでこの石原発言を擁護してる人たちは、発言の前後の文脈では被災者に配慮しているので中傷する意図はないなどと弁明しています。
 しかし、この中傷発言の前後の文脈が噛みあわないのは、石原都知事が「天罰」が実在するという前提で語っているからでしょう。今回の謝罪会見で石原都知事が「天罰」の存在を否定しないのは、被災者への謝罪より石原の選挙を支える宗教団体への配慮を優先しているように見えます。この時期の出馬会見でわざわざ「津波は天罰」という露骨な宗教的発言を行ったのは、これまで石原都知事が「同性愛者は遺伝とかのせい」「変態はDNAが狂ってる」など非科学的な差別発言を繰り返してきたことの延長で、信仰心を示して宗教団体の支持を固めることが目的なのでしょう。討論会も延期され、通常の選挙活動すら自粛されかねない今回の都知事選では、これまで以上に宗教団体の影響力は大きいかもしれません。
 石原慎太郎自身は霊友会の信者で「法華経に生きる」という著書もありますが、それだけではなく慎太郎は崇教真光の教祖を自宅にも招くほど親密で対談本もあり、今回知事引退する意向だった石原慎太郎に出馬を説得した息子の石原伸晃は崇教真光の信者として大祭に出席しています。また、石原親子は個人的に信仰する団体だけでなく複数の宗教団体と関係して選挙協力を受けていることは週刊誌の選挙取材でも指摘されていて、2009年当時全選挙区に候補を擁立していた幸福実現党石原宏高の選挙区では対立候補の出馬をとりやめたり、立正佼成会の拠点である石原伸晃の選挙区で民主党が対立候補を擁立しなかったなど、宗教団体を対立候補の出馬調整にも利用しているようにも見えます。そして今回の都知事選では石原慎太郎は、かつて統一教会の大会に祝電を送っていた松沢成文神奈川県知事を出馬辞退させるかわりに副知事に起用するのだそうです。
石原知事は4選を果たした場合に、松沢氏を副知事など重要ポストで起用する考えを示唆した。
(2011.03.14 時事通信)
 宗教団体などを支持母体とする候補者が、差別的発言を繰り返すことで選挙の争点をずらし、宗教保守層の支持を固める手法は、アメリカなど海外の選挙でもよく使われています。しかし、キリスト教原理主義の人口が多いアメリカ南部と違い、東京都は宗教信者の票だけでは知事選には当選できないはずです。知らないうちに宗教団体の扇動にのせられてしまう人が多いのでしょうか。
(→ 差別発言をくりかえす石原都知事に媚びる週刊誌)

 奈良・平安時代の日本では「天譴(天罰)」という迷信の意味は、儒教の「為政者に対する天の譴責」という思想に基づいていました。ところが、大正の関東大震災の後に内村鑑三などのキリスト教信者などが流行させた「震災は堕落した国民への警告」という狂った言説が、公職者などにとって都合がいいものだったため、日本でも「天譴」という迷信は自業自得という意味にすりかえられ、当時の道徳教育は儒教主義だったのに、震災の後は中学校の「修身」の授業でも被災者の生徒たちに「地震は人々の贅沢を戒める天罰」と教えていたといいます。
 当時の天譴論に対する反論は、実業家の渋沢栄一に反論した芥川龍之介の『大正12年9月1日の大震に際して』にも書かれています。
『日本震災史』によれぱ,「天譴」の思想はもともと儒教主義に基づくものであり、奈良・平安の王朝時代に既にこの「天譴」ということばが用いられているということである。このことばの本来の意味は,「為政者に対する天の譴責」ということだとされているのだが,大正時代に再びよみがえったこの天譴の思想は、少々異なったニュアンスをもって登場してきている。
(1982 仲田誠 『災害と日本人』)
 同胞よ。面皮を厚くせよ。「カンニング」を見つけられし中学生の如く、天譴なりなどと信ずること勿れ。僕のこの言を倣す所以は、渋沢子爵の一言より、滔滔と何でもしやべり得る僕の才力を示さんが為なり。されどかならずしもその為のみにはあらず。同胞よ。冷淡なる自然の前に、アダム以来の人間を樹立せよ。否定的精神の奴隷となること勿れ。
(1923 芥川龍之介 『大正十二年九月一日の大震に際して』)
もし先生の説明を受け容れるならば、このクラスで私だけが天物暴殄の罪を犯して、私だけが天譴を受けたことになるのではないか。私のことなど、どうでもよい。貧しい、汚い、臭い場末の人々、天物暴殄に最も縁の遠い人々、その人々の上に最も厳しい天譴が下されたことになるのではないか。私は、先生の説明が一段落つくのも待たずに、右のような趣旨の質問をした。先生が何とお答えになったかは覚えていない。何とお答えになったとしても、私は「天譴」および「天物暴殄」という概念を受け容れることは出来なかった。
(1975 清水幾太郎 『わが人生の断片』)

 地震の後はさまざまな宗教団体の施設が帰宅難民の一時避難所などに役立っていたという話もあります。しかし、もし被災者に対して「地震は天罰だ」と罵るような宗教団体があったら、人助けをしても偽善にしか見えず感謝されないでしょう。
 同様に「地震は天罰」と主張した人物をまた都知事に選ぶなら、いくら被災地を支援しても、東京都民はインチキ宗教の信者のような人たちだと思われるかもしれません。

・関連
→ ポーランドの「乱交ゲーム」というデマと日本の青少年厳罰論に共通する悪意
→ 差別発言をくりかえす石原都知事に媚びる週刊誌
→ 赤枝医師の発言の信憑性
→ TVタックルで性感染症自己責任論
→ 宗教右翼を煽動したジェリー・ファウエルの残した妄言

2011.01.31 Monday

差別発言をくりかえす石原都知事に媚びる週刊誌

 石原都知事が2010年12月の記者会見で青少年条例の話から、同性愛者について「遺伝のせい」「どこか足りない」など差別的な発言をしたことが毎日新聞や東京新聞や朝日新聞で報道されました。ところが、読売新聞や産経新聞、そしてほとんどのテレビ局は、会見の場に記者がいたはずなのに、都知事の差別発言について報道しませんでした。そして週刊新潮は、都知事の差別発言を批判した人物を槍玉にあげ、さらに性教育まで批判する、まるで宗教広報誌のような論調の記事を掲載して差別に加担しています。
 東京都の石原慎太郎知事は7日、同性愛者について「どこかやっぱり足りない感じがする。遺伝とかのせいでしょう。マイノリティーで気の毒ですよ」と発言した。石原知事は3日にPTA団体から性的な漫画の規制強化を陳情された際、「テレビなんかでも同性愛者の連中が出てきて平気でやるでしょ。日本は野放図になり過ぎている」と述べており、その真意を確認する記者の質問に答えた。
 7日の石原知事は、過去に米・サンフランシスコを視察した際の記憶として、「ゲイのパレードを見ましたけど、見てて本当に気の毒だと思った。男のペア、女のペアあるけど、どこかやっぱり足りない感じがする」と話した。同性愛者のテレビ出演に関しては、「それをことさら売り物にし、ショーアップして、テレビのどうのこうのにするってのは、外国じゃ例がないね」と改めて言及した。
(2010.12.07 毎日新聞 真野森作)
〇七番(福士敬子君) それから、青少年条例は、知事答弁を避けられました。都小P協の要請時、知事が、テレビに同性愛者が平気で出ると発言されたとの報道がありました。条例案を勘違いされていませんか、伺います。発言の趣旨はどんな思いでおっしゃったのか、お答えをいただきたいというふうに思います。以上です。
〇青少年・治安対策本部長(倉田潤君) 本条例案の性交等につきまして、同性か異性であるかということについて何ら変わりはございません。
(2010.12.08 東京都議会会議録)
 東京都の石原慎太郎知事は17日の記者会見で、過激な性描写のある漫画などの販売を規制する都改正青少年健全育成条例が成立したことに関連し「世の中には変態ってやっぱりいる。気の毒な人で、DNAが狂っていて。やっぱりアブノーマル。幼い子の強姦(ごうかん)がストーリーとして描かれているものは、何の役にも立たないし、(百)害あって一利もない」と述べ、規制の必要性を改めて強調した。
(2010.12.17 時事通信)
続いて東京の一般参加者が、
「東京都では性教育への圧力が高まっています。来校した看護師の方に実物のコンドームの装着の仕方は教えてもらえなかったりと、圧力に屈しています」
 また各分科会には、日教組の主張の代弁者である共同研究者がいるが、ここでは、女性の共同研究者が、
「石原都知事が同性愛に対して“足りない”と言うのは、哀しい差別です」
と、こう主張し始めた。
「全体主義の戦争をした国だから同調圧力があり、異質性を認めることができないのです。韓国併合で朝鮮人を無理やり帰化させ、自分たちに同調させた過去がありますからね」
家族は要らず、学校はコンドームの装着法を教えなければならず、同性愛者の権利は認められるべき…。そんなことが“教育研究”の名を借りて、大声で叫ばれているのである。
(2011 週刊新潮 2月3日号 『ゆとりをもう一度! 同性愛者の権利を! 売国と自虐で喝采! 正気を疑う「日教組」亡国の教研集会』) (2011.01.31 yudai TwitLonger)

 石原都知事の「同性愛者は遺伝とかのせい」「変態はDNAが狂ってる」説はまったくデタラメで、暴論の根拠すら示されてません。また、幼い子を強姦する描写がある漫画が一般向けとして売られている実例もありません。「テレビ出演は外国じゃ例がない」説もひどい嘘で、カミングアウトしている有名人や政治家はたくさんいます。レズビアンとして知られている、東京都と姉妹都市提携を結ぶニューヨーク市議会のクリスティン・クイン議長も、石原の差別発言と表現規制を批判しています。

 石原都知事は就任以来、根拠のない偏見に基づいた差別的な発言を数多く繰り返しているのは有名ですが、問題発言をまとめたサイト「石原慎太郎の監視小屋」Wikipediaなどをあらためて見ると、自分が忘れていた事例や見落としていた発言も多くうんざりします。石原親子は複数の宗教団体と関係していることも公言しています。
 2010年の東京都青少年条例の改正について会見などで質問される機会が増えてから、石原都知事はこれまで以上に、宗教的な発言や、LGBTや漫画読者などを蔑視する発言を繰り返すようになりました。しかしテレビ等では相変わらず石原都知事はなぜか大御所タレント的な扱いで、カメラの前で差別発言をしてもほとんど報道されない存在になっています。TOKYO MXテレビではマツコ・デラックスがレギュラー番組『5時に夢中』の中で石原都知事の発言を批判しましたが、MXテレビの幹部は石原都知事の方針に反するアニメ好きを今後は社員に採用しないことも考えていると週刊現代は煽っています。
 宗教団体などを支持母体とする候補者が、差別的発言を繰り返すことで選挙の争点をずらし、宗教保守層の支持を固める手法は、アメリカなど海外の選挙でもよく使われています。しかし、キリスト教原理主義の人口が多いアメリカ南部と違い、東京都は宗教信者の票だけでは知事選には当選できないはずです。知らないうちに宗教団体の扇動にのせられてしまう人が多いのでしょうか。
 さらにこの〔MXの〕幹部は、条例によって番組だけでなく、新卒採用の方針も変えなければならないと頭を抱える。
「うちはアニメに強い放送局ということで学生にも人気があるのですが、会社は『今後のことを踏まえて、アニメ好きを過度にアピールする学生は採用しないほうがいいのでは』と考えています。
(2011 週刊現代 2月12日号) (2011.01.31 かるび Twitter)
今週発行の週刊誌に、TOKYO MXの新卒採用に関して、
「アニメが好きか否か」が採用の基準であるかのような記事が掲載されましたが、
そのような事実はまったくございません。
応募をお考えの皆様、ご心配なくエントリーをお願い申し上げます。
(2011.01.31 TOKYO MX 新卒採用ブログ)
 今回〔2004年米大統領選〕、CNN他のアンケートによると、ブッシュに投票した理由で最も多かったのは「モラル政策」がトップだったと報道された。具体的には中絶問題とそれに伴う幹細胞研究、およびゲイ結婚への反対だ。
 経済政策への関心は二番目で、対テロ、戦争に関する政策は三番目だった。
(2004.11.03 町山智浩アメリカ日記)

 東京都の青少年条例改正案を作成した東京都青少年・治安対策本部の部長らは警察からの出向職員だそうです。東京都以外でも警察関係者が青少年条例を主導している自治体が多いため、警察の権限を拡大する方向に条例改正されているという指摘もあります。かつては警察官の妻たちの組織「母の会」が悪書追放運動を扇動してきたともいわれています。そして警察も条例改正への圧力に宗教系団体の人脈を利用しているため、改正された東京都青少年条例は、近親相姦など宗教的タブーを扱う漫画にだけ異常に厳しい、不自然な条文になっています。
 都条例問題以外でも、必要以上に規制拡大をはかる警察はくりかえし宗教系団体と同じような主張をしています。今年から日本にも導入される見込みの、児童ポルノブロッキングという大義名分のネット検閲制度でも、警察は、どういうサイトが遮断されたのか検証しにくいような方式にこだわっています。エジプトや中国政府のようなネット遮断可能な権力を日本では警察と宗教系団体が握ろうとしてるのでしょうか。
 また、業界は画像が掲載されているサイトの管理者が削除に応じなかったり、警察の捜査が困難だったりした場合に限りブロッキングが可能としているのに対し、警察庁は画像を発見次第、即時にブロッキングができるとしている。設立予定のインターネットコンテンツセーフティ協会には、プロバイダーの意向が反映するとみられ、今後、警察庁の反発も予想される。
(2011.01.31 東京新聞)
 独裁政権転覆を図る大規模デモで緊張が高まる中、エジプト政府は夕べ午前0時頃、全国民8000万人のインターネットを遮断する異例の措置を取りました。
 一体どう切ったのでしょう?
 巨大なレバー、大きな赤いボタンのような「Kill Switch」があってバチンと切った...わけじゃありません。が、それに近いです。エジプト政府が国内大手ISP4社にサービス遮断命令を送ったんですね。
(2011.01.29 ギズモード・ジャパン)


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→ 着衣の少女の彫刻をポルノと中傷され発表の場を失ったドガ
→ 条例改正案を読まずに過剰規制を容認するのは危険
→ 不明確な基準で一般人を摘発する表現規制条例
→ 騒動を利用して、無関係な表現まで検閲しようとする団体
→ いつのまにか過剰になる表現規制
→ 通報されているものはほとんど児童ポルノではない

2010.11.23 Tuesday

さらに差別的になった東京都青少年条例改正案

 「非実在青少年」という語句などが話題になった東京都青少年条例改正案が、問題になった語句などを言い換えた形で再び都議会に提出されました。東京都は記者クラブに対して「条文を修正して規制対象を明確化」と説明したらしく、複数の新聞記事にはそう書かれていますが、実際の改正案条文では漫画の規制範囲が前回より広く不明確になっています。また、13歳未満の水着写真規制や、携帯フィルタリング強制の条文はほぼ前回と同内容で、青少年の表現の自由や知る権利を侵害しています。そして今回も東京都側は議会で審議される直前まで条文を公表していないので、山口貴士弁護士らがネット上に改正案を公開してくれています。
 当初案は、キャラクターながら18歳未満という年齢を定義の1つとしていたが、修正案は刑法に触れる性行為や近親相姦などを「不当に賛美しまたは誇張」した表現を対象にしており、キャラクターの年齢は関係がなくなっている。
 また、当初案では児童ポルノについて、都民は「何人もみだりに所持しない責務を有する」と定め、単純所持規制に踏み込んだ文言が盛り込まれていた。修正案ではこれを削除し、都民に対し「児童ポルノを根絶することについて理解を深め、その実現に向けた自主的な取り組みに努めるものとする」とした。当初案の「青少年性的視覚描写物のまん延防止」といった文言や、「まん延」の防止に向けた事業者と都民の活動を都が支援するよう努めるとした部分なども削除した。
 一方、「13歳未満の者であって衣服の全部もしくは一部を着けない状態または水着もしくは下着のみを着けた状態」の写真などについて、「青少年が性欲の対象として扱われることが青少年の心身に有害な影響を及ぼすことに留意し」、13歳未満がこうした写真や映像の対象にならないよう保護者と事業者に求め、都知事はこのうち「著しく扇情的なもの」に対しては保護者と事業者に必要な指導ができるとしている。
 修正案に対し、山口弁護士は、「不当に賛美しまたは誇張」の部分があいまいで不明確だと指摘。またTwitter上では、「キャラの年齢ではなく描かれた性行為で判断されるため、より広範な表現規制につながるのでは」といった批判が多い。
(2010.11.22 ITmedia News)
第七条中「青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがある」を「次の各号のいずれかに該当する」に改め、同条に次の各号を加える。
 一 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虜性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
 二 漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
第八条第一項第三号を第四号とし、第二号を第三号とし、第一号の次に次の一号を加える。
 二 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、第七条第二号に該当するもののうち、強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為を、著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を、著しく妨げるものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの
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(青少年を性欲の対象として扱う図書類等に係る保護者等の責務)
第十八条の六の三 保護者等は、児童ポルノ及び青少年のうち十三歳未満の者であって衣服の全部若しくは一部を着けない状態又は水着若しくは下着のみを着けた状態(これらと同等とみなされる状態を含む。)にあるものの扇情的な姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性欲の対象として描写した図書類(児童ポルノに該当するものを除く。)又は映画等において青少年が性欲の対象として扱われることが青少年の心身に有害な影響を及ぼすことに留意し、青少年が児童ポルノ及び当該図書類又は映画等の対象とならないように適切な保護監督及び教育に努めなければならない。
2 事業者は、その事業活動に関し、青少年のうち十三歳未満の者が前項の図書類又は映画等の対象にならないように努めなければならない。
3 知事は、保護者又は事業者が青少年のうち十三歳未満の者に係る第一項の図書類又は映画等で著しく扇情的なものとして東京都規則で定める基準に該当するものを販売し、若しくは頒布し、又はこれを閲覧若しくは観覧に供したと認めるときは、当該保護者又は事業者に対し必要な指導又は助言をすることができる。
4 知事は、前項の指導又は助言を行うため必要と認めるときは、保護者及び事業者に対し説明又は資料の提出を求めることができる。
(第百五十六号議案 東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例)
改正案PDF (2010.11.23 弁護士山口貴士大いに語る)
新旧対照表PDF(2010.11.22 青少年条例と児童ポルノ法改定による表現規制を考える 月刊『創』編集部)
ohkoshitkashi: 「なぜ実写を除くのか」→「じゃあ実写を含めて、範囲を拡大してもいいのですか?それでいいなら削除しますよ」 批判すると対象範囲が広まってしまうという。
(2010.11.22 行政書士 大越隆司 Twitter)
 この追加条文の問題点は以下のとおりです。
 第一に、規制対象が過度に広汎なことです。「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為」には、強姦罪や強制わいせつ罪等(13歳未満との性交、性交類似行為は当然に強姦罪、強制わいせつ罪になる)だけではなく、いわゆる淫行条例違反、児童福祉法違反等も含まれます。したがいまして、18歳未満に見える、あるいは、設定年齢を18歳未満とするキャラクターを当事者とする性交若しくは性交類似行為は全てこれに該当することになり、「非実在青少年」規制は消えたように見えて残っています。
 しかも、否決された改正案とは違い、設定上18歳以上による「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為」も規制対象になっています。この点では、むしろ、規制範囲は拡大しています。
 いわゆるボーイズラブも当然に該当します。
(2010.11.23 弁護士山口貴士大いに語る)
 ところが、櫻井氏はあくまでも「内容の規制ではなく描写の規制です」と説明する。
 たとえば、漫画で書かれたキャラクターが、18歳未満のキャラクターであるか、性交している男女が近親にあたるかは、セリフやナレーションなどの文字を読んでいかなければ分からない。
 だが、櫻井氏の見解では「描写=画像+セリフ」であり、内容規制ではないのだという。
 それでは、古典文学の名作『源氏物語』はどうだろう。よく知られているとおり、現在では触法するような性描写を数多く含んでいるし、幾度も漫画化されているのだが......。
「それも描写の内容によります。『源氏物語』の原作には、葵の上とヤッたとか明確に書かれているわけではない。それを、もし性器が露出していないにしても、微に入り細に入り描写したとすれば、それは単に『源氏物語』の呈を借りているだけのものと、判断されるでしょう。もちろん、個別の作品を読んでみなければわかりませんが......」(櫻井課長)
 櫻井課長は今回の条例案は「非実在青少年」問題で紛糾した前回と「言っていることは変わらない」ものだとも話す。
「前回の条例案は年齢などが描いてあるものの、どういった行為が当てはまるのか明確ではなかった。そこで今回の条例案では、施行規則で定める予定だったものを含めた形になっているんです」(櫻井課長)
(2010.11.23 日刊サイゾー 昼間たかし)
 東京都の櫻井美香青少年課課長は「内容の規制ではなく描写の規制です」と説明していますが、性行為を絵によって「微に入り細に入り描写した」漫画は改正前の現行の青少年条例で不健全指定されているので、今回の条例改正とは関係ありません。
 しかも櫻井課長は「前回と言っていることは変わらない」と説明しています。改正案提出前に都が問題視している出版物の例として提示した図書には直接的な性描写がない漫画『僕は妹に恋をする』『奥サマは小学生』があったことから解釈すると「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように」という条文はおそらく「露骨な性器描写や性交場面が画面になくても、強姦や近親相姦や低年齢性交を連想させる描写がある漫画は不健全指定」という意味なのでしょう。
「意見交換会の時に、さまざまな作品を見せて"これはどうなんだ"と問いただしたら、『僕は妹に恋をする』(小学館『少女コミック』掲載の少女マンガ)まで"近親相姦だからダメ"と言われた。意見交換じゃなくて査問みたいな感じでしたよ」(出版関係者)
(2010.11.17 日刊サイゾー 昼間たかし)
 そもそも「漫画、アニメーションその他の画像」と限定した条文なのに、具体的な絵の問題ではなく、セリフの言葉・設定まで「描写」として規制基準となるなら、小説と漫画を分けて規制する必要がありません。つまり、今回の改正案が通ってしまえば東京都は今後の青少年条例改正で漫画・アニメ以外の表現にも規制範囲を拡大しやすくなると考えられます。
 たとえば、親子間の性的虐待を描いた漫画はどうなるのでしょうか。ストーリーの一部には、加害者側の心情として「賛美し又は誇張する」表現が出てくるかもしれませんが、何をもって「不当」とするのでしょうか。
(2010.11.23 てっちゃんの生きづらさオンライン@Ameba 渋井哲也)
mittochi: 近親相姦がいけないのは当然。しかし『なぜいけないのか』といえば、家庭内での強者(大抵は親)が弱者(子供)を性的に搾取する結果になるから。つまり、規制されたり教育されたりする必要があるのは被害者である子供ではなく、加害者である大人の側であるはずです。
(2010.11.22 水戸 泉・小林来夏 Twitter)
ogi_fuji_npo: 人類の歴史において、「どんな性のあり方がタブーか」は、極めて流動的でした。異人種間の性交渉、同性間の性交渉、身分差のある者同士の性交渉、それらはどう扱われてきたでしょうか? 現実の禁忌であるからこそ、それを語ることには意味があります。社会は常に弁証法的に問われ続けるべきなのです。
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ogi_fuji_npo: 東京には、近親間性交渉の結果誕生した人たちが暮らしている。彼ら一人一人に、「自分自身を語る権利」がある。何を肯定的に語るか、何を否定的に語るかを、石原さんに決める資格があるのだろうか? それとも石原さんは、そういった人々をガス室送りにでもしたいのだろうか?
(2010.11.22 荻野幸太郎 Twitter)
 2010年9月の東京都青少年健全育成審議会で、一部の委員が「男女より男と男のラブストーリーのほうが法律的にはよくない」という異常な発言をしていたことも、ブログ「反ヲタク国会議員リストメモ」などでとりあげられ話題になりました。日本の法律は聖書ではないので、同性間の恋愛を禁止する法律はありません。このように宗教と法律を混同している委員が、条例改正後に「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為」を判断するようになることも問題なのですが、今回の条例改正案ではこの委員のような宗教道徳的意見に合わせて、違法ではない「婚姻を禁止されている近親者間における性交」を「刑罰法規に触れる性交」と同じ規制の枠に含め、条文が差別的になり宗教色を強めています。
 そして青少年条例の宗教色が強くなると同時に、規制反対派議員へのバッシングも激しくなっているようです。6月の都議会本会議でも、条例改正案に賛成する自民・公明の都議が、反対討論を行う女性都議を性的に中傷する差別的なヤジを飛ばしていたことが指摘されています。
○■■委員 2番、3番、4番は、今までと同じで本当にセックス描写が多くて指定やむなしですけれども、1番のここに書いてある男と男のラブストーリーといいますか、そういう意味で、絵だけ見たら男女の卑わいさというのは私としては余り感じないのですけれども、青少年に与える影響としては、男女より男と男のラブストーリーのほうが法律的にはよくないのかなと。それを奨励するというのはいけないんですかね。日本の法律としてはどうなんだろうと今考えてしまったんですけれども。
(2010.09.13 第604回 東京都青少年健全育成審議会 議事録)
 注目を集めた条例改正案は結局、6月16日の都議会本会議で否決された。しかし、それは極めて僅差の採決だった。賛成は都議会の与党・自民党と公明党で、合計議席数は61。反対の野党・民主党と共産党の合計議席数も61であり、3議席を持つ「生活者ネットワーク」が反対に回ったことによる辛うじての否決だった。
 その議場では劣勢に立たされた与党席から酷い野次が飛び、改正案への反対討論を行う女性都議に愚劣な罵声が浴びせられる始末だった。
「子どもの敵!」
「お前、痴漢されて喜んでるんだろっ!」
 少なくとも私の目には、それが「表現の自由」を踏み越えてまで「青少年の健全育成」を目指すに値する姿には見えなかった。
(「プレジデント」2010年7.19号 青木 理)(2010.07.01 雪沢村)


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2010.10.27 Wednesday

着衣の少女の彫刻をポルノと中傷され発表の場を失ったドガ

14歳の小さな踊り子 ポルノだとか有害だとされる基準は、その時代の宗教や権力の都合によって大きく変わるものなので、芸術作品は破壊せずに後世に残さなければいけないということを、すべての人が忘れないでほしいものです。

 2010年12月まで横浜美術館で行われているドガの展覧会にあわせて、10月10日のNHK教育『日曜美術館』が、ドガの有名な絵画「エトワール」でバレエのステージ袖に描かれている男性の意味について解説していました。これは当時バレリーナを性の対象としていたパトロンたちがステージ裏からバレリーナを品定めする状況を描いているのだそうです。
 目の病気を抱えながら作品を描き続けたが視力が衰えて鮮やかな絵画を描けなくなり晩年はほとんど作品を発表していなかったドガの死後、アトリエから未発表の150体のバレリーナの彫刻が発見されたというエピソードも番組で語られていました。ドガは生前に彫刻を1体だけ発表しているのですが、バレエの衣装を着た14歳の少女がまっすぐ立っているだけの画期的な彫刻を汚らわしいポルノだと中傷されたため、その後ドガは彫刻をひとつも発表できなかったのです。
 NHKは6月にもBSでドガの特集番組を放送していて、こちらはもうDVD化されているようです。
朝日新聞の番組紹介によると
 今でこそハイカルチャーの一端を担うバレエだが、貧しい移民が食いぶちを稼ぐ手段だった時代もあるという。「踊り子の画家」とも呼ばれるドガが一心にバレリーナを描いたのは、そんな19世紀後半のフランスだ。肌の露出が多い衣裳で人前に出ることはふしだらだとされ、踊り子たちは男たちの欲望の対象に。あどけない少女の肉体をリアルに模したドガの彫刻は、汚らわしいポルノだとひんしゅくを買う。だが視力が衰えていく病を患いながらも、ドガは華やかなパリの裏側にある現実から目をそらさない。苦境に生きる少女たちの味方として。華やかな色彩が思い浮かぶ印象派の中では地味な存在だと感じていたドガのイメージが変わった。
(2010.06.02 Ballet Square)

 このような芸術の歴史から学ぶことはとても重要です。フランスのマスメディアは現在でも芸術の弾圧には批判的で、最近ではヌード写真展にパリ市が年齢制限をつけたことに抗議した大手新聞が問題のヌード写真を一面に載せたそうです。
 ところが、ベルサイユ宮殿を建設したフランス王ルイ14世の子孫らは、現在、宮殿で展覧会を行っている村上隆の作品をポルノだと中傷し展覧会の中止を求めているのだそうです。
 Larry Clark という写真家の回顧展に市当局が年齢制限をつけたということでもめている。Teenage Lust という有名な写真集になっているもので、18歳未満が含まれているか厳密にはいえないけどその流れもあるっぽい。
(2010.10.15 崎山伸夫 Twitter)
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 英語での記事はこちら http://bit.ly/cnCYTd ル・モンドが報じて、年齢制限への抗議の声が沸き起こってリベラシオンは紙上とオンライン版の両方で写真を大々的に載せるという事態に。
(2010.10.15 崎山伸夫 Twitter)
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 リベラシオンの一面の写真は、単なるヌードではなくて、10代のカップルが車の後部座席で全裸で抱き合って互いの性器をまさぐっている写真。でもアート。日本の新聞社が表現の自由のための抗議としてここまでやるかというと、絶対にないわけで、そこらへん、大きな違いを感じざるをえないですね。
(2010.10.15 崎山伸夫 Twitter)
 漫画などをモチーフにした村上さんの計20作品が宮殿の内外に展示されていることについて、シクストアンリ公らの団体は「世界遺産にポルノ作品を飾っており、(自分の)祖先に対する冒涜に当たる」と非難。来週にも中止を求め行政裁判所に仮処分を申請する。
(2010.10.23 共同通信)
 村上隆も作品で示しているように性的な表現にも芸術として残すべき価値があり、性的な表現を行う作家を弾圧するのは間違いです。
 たとえば長崎県は、春画の画集を2008年に有害図書に指定しましたが、日本の美術史を代表する浮世絵師のほとんどが春画も制作しています。
悪書追放運動
(映像:日本ニュース 日本映画社)
ナレーション「昭和20年代末、子供の健全な成長を阻むものだと、週刊誌や漫画を追放する運動が起こりました。この悪書追放運動の矢面に立たされたのが、子供たちに人気のあった手塚の漫画でした」
(2006 NHKスペシャル ラストメッセージ・手塚治虫)
 NHKの連続ドラマ『ゲゲゲの女房』では、1950年代の「悪書追放運動」で貸本屋が弾圧されたエピソードがありました。ドラマでは貸本屋が市民団体に襲撃される場面しか描かれませんでしたが、現実には手塚作品なども含む大量の漫画本を燃やすという文字通りの焚書が行われていたことが、当時のニュース映像に残っています。
 現在も各自治体で行われている青少年健全育成条例による有害図書指定は、かつて焚書を行った凶悪な団体が残した負の遺産なのです。そして、成人女性によるコスプレ映像や、漫画・アニメ・ゲームなどで描かれた架空の青少年の性的な表現を、準児童ポルノとして児童ポルノ法で処罰するべきだと主張する日本ユニセフ協会らの近年の活動も、現実の虐待被害児童を救うという児童ポルノ禁止法の本来の目的から逸脱し、焚書を招くものです。
 こんな話はおおげさだと思われるでしょうか。しかし、実際にいま自治体の有害図書を指定する審議会のなかにも、まるで「聖書こそが日本の法律」「ゲイの青少年の存在は認めない」というカルト宗教信者のような考え方の委員がいるようなのです。もしかするとこの委員は「健全育成」とか「有害指定」という言葉も宗教的な意味でとらえているかもしれません。
 キリスト教原理主義の人口が多いアメリカでは最近、各地の学校でゲイの生徒が執拗にいじめられ自殺に追い込まれる事件が相次いでいるといいます。日本の青少年の人権をこういう宗教的偏見から守るためには、安易な規制ありきの青少年健全育成条例が偏見を助長している構造は見直すべきでしょう。
○■■委員 2番、3番、4番は、今までと同じで本当にセックス描写が多くて指定やむなしですけれども、1番のここに書いてある男と男のラブストーリーといいますか、そういう意味で、絵だけ見たら男女の卑わいさというのは私としては余り感じないのですけれども、青少年に与える影響としては、男女より男と男のラブストーリーのほうが法律的にはよくないのかなと。それを奨励するというのはいけないんですかね。日本の法律としてはどうなんだろうと今考えてしまったんですけれども。
○会長 法的にですか。
(2010.09.13 第604回 東京都青少年健全育成審議会 議事録)
 アメリカで最近起こった反同性愛者いじめと若者同性愛者の自殺が大きな話題となっているわけだが、そんな中専門家たちの元には、若者同性愛者にとって最も苦しい時期は、自己発見が重点的に起こると同時に、いじめと不寛容がピークに達する、中学生時代だという事例が多く集まっている。
(2010.10.12 Seattletimes)(2010.10.18 GEIRO.org)
 Asher Brownさんの両親は、何度も学校にいじめの事実を訴えたのにまともに受け取ってもらえなかったと言っています。
(2010.10.02 みやきち日記)


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2010.06.02 Wednesday

ポーランドの「乱交ゲーム」というデマと日本の青少年厳罰論に共通する悪意

 人口の95%がカトリック信者で、緊急避妊薬(アフターピル)も中絶手術も法律で禁止されていて、昔から平均初婚年齢が早い、ガチガチのキリスト教国・ポーランドでも、他国と同様に若年妊娠は社会問題になっています。現在のポーランドは他国よりも性教育開始年齢が遅いらしいので、対応するためには早期性教育が求められるはずです。ところが、性教育は聖書に反する行為と考え性教育の必要性を認めないキリスト教原理主義者は「普通のカトリック信者の中学生の妊娠が増加」という事実から目をそらし、原因探しを「不道徳な若者の宗教離れ」的な論調にすりかえるために「中学生が乱交ゲーム『太陽と月』で妊娠」というデマをでっちあげて妊娠した少女たちを中傷しているのでしょう。同じ地域で学生が妊娠したことが話題になると、根拠なく「あの子は悪い遊びをしてた」というデマを捏造する大人は日本にもよくいますよね。
 案件を担当している警察のTomasz Klimekさんは、1つの学校で少女が5人妊娠したということは事実とした上で、乱交騒ぎはあくまでゴシップであると噂を否定。すべての生徒はちゃんとした相手がおり、将来的には家族を作ることを保証するとしました。この案件について警察は捜査を行っていますが、乱交についてではなく、違法である15歳以下の少女との性交があったのではないかということの捜査だそうです。
 「性教育はタブー視されがちですが、封じ込めれば封じ込めるほど若者は冒険に走ったり反対のことをしでかしたりします。ちゃんと性教育を受ければ状況は改善するでしょう」と性科学を研究するZbigniew Izdebski教授は語っています。
(2010.06.01 GIGAZINE)
 この記事でも、ポーランドでは15歳以下の男女の性交は違法と書かれています。また、ポーランドでは法的には結婚が可能な年齢は女性18歳・男性21歳が原則(ただし妊娠した場合などは女性16歳・男性18歳で結婚可能)。テレビ放送まで厳格に年齢区分されているポーランドですが、法規制や宗教道徳だけでは現実の青少年の性行動を変えることはできなかったわけです。
 また、ポーランドでは各テレビ番組に年齢制限がつけられていて、画面の隅に特殊な記号が表示される。それぞれの記号を見れば、その番組がどの年齢層に適した番組なのか明確にわかるようになっている。2005年に改正された定義では、以前にも増して詳しい区別がされるようになってきた。
(2006 「ポーランドにおける日本アニメと漫画」 中西めぐみ)
〔ポーランドでは、小学校から高校まで〕学校は知識やマナーを教えるところとされ、家庭でマナーや倫理観、精神的に善良な人間になるための教育をする。
(2009.03 外務省 諸外国の学校情報 ポーランド)
 ポーランドの保守政権は28日、同性愛を推奨する表現が見られるとして、幼児向けテレビ番組『テレタビーズ』に批判の矛先を向けた。
(2007.05.28 ロイター エキサイトニュース)

 さて、このような中傷による魔女狩りは遠い外国だけの出来事ではなく、日本でも昔から青少年規制論者は同じような言説で未成年を中傷しています。
 2003年の東京都議会では公明党の議員が「エイズは天罰」という趣旨の発言をした後、若年層のHIV感染者を中傷する言説を引用したことがありました。5年後の2008年に東京都エイズ専門家会議がまとめた最終報告を見てもわかるように、この公明党議員が引用した赤枝医師のHIV感染者に対する独自見解は現実とはかけ離れています。日本では感染症法によってHIV感染者・エイズ患者は全数報告が義務づけられていますが、実際には10代女性のHIV感染者は数年に1人、10代女性のエイズ患者は過去25年間で1人しかいません。そしてHIV感染者はイギリスやオーストラリアなど法規制の厳しい宗教国のほうが大幅に増加しています。
〇三十九番(中嶋義雄君) 知事は、今定例会の所信表明におきまして、エイズ問題に触れられました。
 かつて清水幾太郎氏は、古来からの天譴思想を紹介し、日本人にとって地震は世の混乱を正す天の譴責であったと書いたことがございます。それに倣っていえば、エイズこそまさに天譴であるのかもしれません。
 それはともかく、近年、エイズへの関心が低下しておりますが、知事が指摘するとおり、事態は深刻でございます。献血からエイズ感染が発見される割合は依然として高く、また、先進国の中でエイズ感染者の増加率が上昇している国は日本のみでございます。
 こうした指摘を通して、長年、エイズ問題の深刻さを訴え、ボランティアで無料相談やエイズ検査を行ってきたのが、赤枝六本木診療所の赤枝恒雄医師でございます。マスコミ等でも紹介され、ご存じの方も多いかもしれませんが、昨年、公明党の女性局が同医師を訪問し、私も二十一日の日曜日に訪ねてまいりました。赤枝医師から聞かされたエイズ問題の実態には、身の毛のよだつ思いがいたします。
 同医師によりますと、二十五歳以上のエイズ感染者はほとんどが男性であるのに対し、二十歳から二十四歳までは約六〇%が女性であり、十代ではそれが約七〇%に上るといいます。しかも、十代の女性の感染者の多くは中学生や高校生であり、いわゆる援助交際という名の売春行為でエイズに感染し、親に相談するわけにもいかず、したがって公的な助成等は一切受けられません。
(2003 東京都議会第3回定例会会議録)
 2010年5月18日、東京都議会の総務委員会で東京都青少年健全育成条例改正案に対する参考人意見聴取が行われ、規制派と反対派それぞれ2名づつ参考人が発言しました。規制に賛成する参考人のひとりとして登場した赤枝医師はいつもの調子で、もともと18歳以上だけしか購入できないように区分陳列されているアダルトビデオに関する独自見解や、未成年の性行為についての独自見解など、持論を披露していたそうです。しかし成人指定商品の区分陳列については、現行の青少年条例に基づいて各販売店への調査・指導が毎月行われています。条例改正案に対する意見聴取の場で今回の改正案の内容とはかけ離れた話ばかりしていた赤枝医師がどういう意図で規制に賛成しているのかよくわからないという感想を持った人も多いようです。
漫画の影響によって「女の子を選ぶ基準がブスでもいいからやらせてくれる子」「日本はレイプ地獄」となったと主張し、都条例改正案を正当化している赤枝恒雄氏は、マスコミに度々登場しているので知っている方も多いかと思います。この産婦人科医師は昔から「10代の中絶・性病を撲滅する為に漫画の性描写を法規制するべきだ」という自論を唱えており、規制派の政治家・官僚・マスコミ関係者らに重宝がられています。
(2010.5 東京都青少年健全育成条例改正問題のまとめサイト)
参考人として出席した産婦人科医は、性病に感染する小中学生が急激に増えていることを挙げて、「子供らはだいたい漫画を持っている。もう待てないほど急ぐ問題。子供を守るための指針がほしい」と話し、条例の改正を求めました。
(2010.5.18 テレ朝news)(sd-m.jp)
 同じく賛成派で六本木で産婦人科医院を開業する赤枝恒雄医師は「反対派は現実を見ていない。子供たちはセックスを『面白い、楽しい』という情報だけで行っている」と、現場の目線から報告。
 その上で、子供の性病や中絶の多さを示し、「アダルトビデオの婦女暴行ものは女性も喜ぶという内容で、成人向け漫画も性行為をオーバーに伝えている。メディアリテラシーを育てるために規制はいけないとはとんでもない」と改正案の早期施行を訴えた。
(2010.5.19 産経新聞)
山口拓(民主)理事質疑
 山口:厚労省の定点観測によると性感染症は増えていないが
 赤枝:インフルエンザと違って子どもが親に保険証を借りられないため病院に行けない。したがって定点観測では議論できない。我々がやっている無料検査でやっとデータが出る。
(2010.05.19 草冠に西 都議会総務委員会傍聴記 参考人赤枝恒雄氏の意見聴取)
…………
【追記】
 2007年から港区が行っている事業により、港区内の拠点病院では誰でも匿名・無料で性病検査が受けられるので、赤枝医師の「〔保険証やお金の問題で〕定点観測になっているきちんとした病院に、子どもたちがやっぱり行けない」発言は、港区の実態とは違います。
 赤枝六本木診療所赤枝議員のHPでは、この港区の無料性病検査事業(AIチェック)を赤枝医師の功績としています。
 ところが赤枝医師はなぜかAIチェック開始後も、取材が来るときだけ不定期に行う赤枝医師の無料検査しか港区に存在しないように思わせる発言を続けているため、赤枝医師が出演したテレビ番組では港区の無料性病検査事業は紹介されません。
…………

 厚生労働省の統計では2003年以降は未成年の性病は減っていて、東京都内の保健所などで全年齢合計年間1.5万人(男性9千人・女性6千人)が受けている匿名・無料の性病検査でも女性の陽性率は減少しています。だから赤枝参考人は発言後の質疑でも都議から独自見解の信憑性について指摘されたのですが、テレビ朝日と産経新聞はなぜか赤枝医師の独自見解をそのまま報道しています。どこで検査を受けたとしても抗生物質による性感染症治療薬の購入には医師の処方箋が必要で、赤枝説は不自然です。
 赤枝医師はどこで発言するときも独自見解による数値を多用しますが、厚生労働省や自治体保健課が集計した統計値はほとんど引用しません。つまり昔から自民・公明は青少年規制に都合のいい都市伝説を議会に持ち込む道具として、厳罰論者の赤枝医師を利用しているのでしょう。
 赤枝医師の持論である性交同意年齢引き上げ・未成年性交罰則化は、現実には性交した少女の負担を増やすだけで青少年のためにならないので、赤枝と同じ立場の医師からも過去に何度も目の前で反論されていますが、赤枝医師は他人の話には耳を貸さずどんどん極端な厳罰論者になっています。もしかすると赤枝医師は、「エイズは天罰」という宗教的発言をした議員と同じような信念を持っているのかもしれません。

・関連
→ 宗教右翼を煽動したジェリー・ファウエルの残した妄言
→ 赤枝医師の発言の信憑性
→ TVタックルで性感染症自己責任論
→ 条例改正案を読まずに過剰規制を容認するのは危険
→ 不明確な基準で一般人を摘発する表現規制条例
→ 青少年のセックスは法律で禁止しても減らない


2010.03.28 Sunday

条例改正案を読まずに過剰規制を容認するのは危険

 いまネット以外でも新聞やラジオなど各方面で話題になっている「東京都青少年の健全な育成に関する条例」改正案は、これまで青少年条例に含まれていた図書販売規制に「(漫画など想像上の)非実在青少年を性的に描写した図書の販売・閲覧規制および不健全図書指定」「(実写の)児童ポルノ単純所持禁止」「18歳未満の都民への携帯フィルタリング強制化と、フィルタリング内容への東京都の介入」などを加えるもので、ほとんどの条文に問題があります。
 さまざまな人が改正案への反対意見を都議に届けてくれたおかげでいったん成立は見送られ継続審議になりました。しかし、6月の定例議会でにまた審議されるので、廃案になるかどうかはまだわかりません。一部を修正した程度で可決されてしまう可能性もあります。
 改正案の具体的な条文は東京都議会図書館では公開されていますが、東京都の公式サイト上ではいまだに公開されていないので、一般の方が複写したものを公開してくれています。これまでの東京都青少年条例との差分は、ブログ「弁護士山口貴士大いに語る」などで整理されています。また、都民のパブリックコメントを無視した今回の改正騒動の概要は、GIGAZINEのまとめ記事「東京都青少年健全育成条例改正問題のまとめサイト」などで詳しく説明されています。
 条例改正案を作成した東京都青少年・治安対策本部は、出版業界団体や有名漫画家や大学やPTAなどさまざまな団体から寄せられた今回の条例改正案への反対意見に反論する見解を、議会での決議前日の3月18日に東京都の公式サイトに発表しました。これは東京都青少年・治安対策本部が、規制基準があいまいな条文自体を修正する意志がないこと、成立するまで改正案そのものを東京都の公式サイトには公開する意志がなかったことを示しています。

 このような条例改正案が話題になると、いまだに「子供の手の届くところにエロがあるのはおかしい」「ゾーニングを徹底するべきだ」という発想で過剰規制を容認してしまう人も多いようですが、東京都青少年条例ではすでに2001年からエロ本の区分陳列が義務づけられているうえに、2004年からはヌードグラビア等を含む雑誌は中が見えないようにシールで止めた状態で出荷されています。つまりエロ本の陳列方法はすでに酒やタバコと同等の扱いになっているので「店頭で子供が間違って買ってしまう」という言説には根拠がありません。
 この青少年条例によって東京都は1964年から毎月数冊の「不健全図書」を指定しています。他県の青少年条例が「有害図書」を指定するのと似ていますが、東京都から不健全図書に指定された図書はほとんど日本全国で流通・販売が自粛されてしまい、雑誌では指定された号だけでなく後にまで影響が及ぶため、東京都の不健全指定は青少年への販売規制ではなく事実上の販売禁止に近い効果があることが以前から問題視されています。もともと成人指定マーク付きで販売されている図書やアダルトビデオを、東京都がさらに不健全図書に指定した事例も多く、東京都は意図的に販売自粛を求めているとも考えられます。
 性的な内容以外では、2001年から東京都青少年条例の不健全図書の指定基準に「著しく自殺若しくは犯罪を誘発するもの」という不明確な語句が加えられています。この不明確な条文が加わったことで、一般的な犯罪報道とあまり変わらない内容の本でも、東京都は安易に不健全図書に指定するようになっていきました。

 さて、2010年の条例改正案騒動のなかで最も話題になったのが、目的が不明確な「非実在青少年」規制の部分ですが、これまでの東京都青少年条例で想像上の人物を描いた漫画が規制されてなかったわけではなく、少女漫画・BL雑誌なども不健全図書に数多く指定されていました。
 東京都青少年・治安対策本部はこの改正案について、未成年に対する性暴力が直接的に描かれた過激な図書だけが不健全指定されるかのように説明しています。しかしそんな過激な図書は現在の青少年条例の枠内で不健全指定できるので条例を改正する必要はありません。では東京都青少年・治安対策本部はなぜ新たに「非実在青少年」を条文に含めようとしているのでしょうか。
〔2009年11月19日の東京都青少年問題協議会の〕拡大専門部会の終了後、青少年課長による記者レクが行われた。その際、問題視している出版物の例として、十数点が提示された。ジュニアアイドル誌は、『Namiのキモチ 浅岡なみセカンド写真集』『虹のしずく 真野しずくセカンド写真集』(いずれも心交社発売)、ゲームソフトは『幼辱〜天使たちの檻〜』(WestVision)、「児童を性の対象にするマンガ」は、『背徳恋愛6』『危険恋愛H45』『レイプvol.1』(以上、松文館)、『奥サマは小学生』(秋田書店)、『碧の季節』『08美少女同人誌徹底攻略』(以上、モエールパブリッシング)、青少協用語の「ラブコミック」(一般にはティーンズラブ)は、『レンアイ至上主義』『僕は妹に恋をする』(いずれも小学館)だ。このうち、実際に条例上の「不健全」図書に指定されているのは『レイプ』のみになる。
(月刊『創』2010年1月号 青少年条例と児童ポルノ法改定による表現規制を考える)
 11月に東京都青少年・治安対策本部が不健全指定すべき例として提示した出版物は、性行為を描いていない漫画や、画面に下半身や裸を描いていない漫画や、性的行為を撮影していないアイドル写真集などを含んでいます。このように性行為を画面に描いていない漫画を不健全図書に指定すべき例としながら、石原慎太郎の「完全な遊戯」のような少女を強姦する場面を文章で描写した小説は不健全指定しないという判断は、公正といえるのでしょうか。
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【追記】現行の条例でこれらの図書が不健全指定できないわけではなく、理由をこじつければ東京都青少年・治安対策本部はどんな図書でも不健全指定できます。しかし、一般的な図書と比べて過激な表現でないものを指定すると、聴き取り調査や審議会でも疑問点が指摘され議事録に残ります。だから東京都は過激でない図書を何冊も不健全指定する根拠を条文に含めたいのでしょう。
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【追記】東京都の意向だけでどんな書籍でも不健全図書にできるとは限らないらしいです。
mangaronsoh: 東京都では審議会にて諮問する図書は事前に「諮問図書に関する打合せ会」にて出版・書店・コンビニ団体の代表と協議される。これは出版・書店が多数で構成されている。 #hijitsuzai
mangaronsoh: 本年1月の打ち合わせ会においては反対多数で諮問予定のうち一冊は取り下げとなっている。詳しくは情報公開請求なりなんなりで資料を確認してくれ。 #hijitsuzai
mangaronsoh: つまり、「職員が選んできた「不健全図書候補」は、やっぱりほぼ100%の確率で不健全図書に指定される」とは限らない。そもそも、ここ最近は都の側も空気を読んで反対されそうなのは出さない。 #hijitsuzai
(2010.04.08 昼間たかしTwitter)
 また、東京都では審議会に諮る前に「諮問図書に関する打合わせ会」が開かれる。これは条例制定時の、自主規制の尊重など各種慎重論などを参考に、自主規制を行っている団体があるときは、それらの意見を聞かなければならない(第15条2)としているからで、その場の意見がかなり審議会に反映しているという。
 この会には、出倫協傘下の4団体(書店業は東京組合)から委員および事務局が参加し意見交換を行っている。他に、首都圏新聞即売委員会、東京都古書籍商業協同組合、東京都貸本組合連合会などの自主規制団体も参加(02年7月〜出版倫理懇話会、日本フランチャイズチェーン協会も加わる)。
(橋本健午 1998.01 日本出版学会編『布川角左衛門事典』日本エディタースクール出版部)
ところが、12月に行われた不健全図書指定の過程で、再びおかしなことが発覚した。
都が「出版業界団体との打合会」に提出した諮問候補リストのうちの1冊が、最終的に告示された不健全図書のリストから消えてしまったというのだ。一体なにが起きたのか。
問題の一冊は打合会の全委員に反対されたが、都はそのまま審議会に諮問した。しかし、審議会でも反対され、結局リストから外されたというのが真相のようである。
(2002.02 宝島社)
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 東京都青少年条例の条文では「青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの」を不健全図書としていますが、3月18日の都議会総務委員会答弁で浅川東京都青少年・治安対策本部参事は「青少年の健全な成長を阻害する」という条文に科学的根拠がないことを認め、改正案に反対意見を寄せた有名漫画家の作品、永井豪「ハレンチ学園」や竹宮恵子「風と木の詩」については規制しない方針を示しました。しかし、11月に東京都青少年課長が不健全指定すべき例として提示した性行為を描いていない漫画と「ハレンチ学園」「風と木の詩」の表現には明確な差はありません。
 これでは、漫画でも実写でも未成年の表現が規制される基準がまったくわかりません。過去のテレビドラマや一般映画の名作とされる作品と比較しても判断できません。改正案の条文には明確な規定も科学的根拠もないので、東京都担当者や審議会の恣意的な判断だけで区分されることになってしまいます。
 ゲームのデザイナーやシナリオライターで作る「コンテンツ文化研究会」は、早くから条例改正問題に取り組んできた。杉野直也代表は非実在青少年の基準があいまいだとし、「年齢がない場合、背景や音声などから類推するのは無理がある。絵柄によっても左右される」と指摘する。「児童ポルノの規制はもちろん必要だ。だが、不明確な基準では、芸術などに大きな影響を与える」と話している。
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 作者だけでなく出版社からも疑問の声が上がっている。日本書籍出版協会と日本雑誌協会が15日に都議会最大会派の民主党に提出した意見書では「青少年と性をテーマとする作品では性描写は避けて通れない。いかに健全な表現であろうと恣意(しい)的に不健全と判断される恐れがある」と批判した。
 園田寿・甲南大法科大学院教授(刑法、情報法)は非実在青少年規制に関し、「改正案は『みだりに』などの表現で規制対象を限定したというかもしれない。しかし、漫画のような創作物での芸術的な表現はそもそもデフォルメされるものだ。条文は具体的な禁止対象がはっきりせず、違憲性が問題になり得るほど過度にあいまいだ」と指摘する。単純所持規制については「現行の児童ポルノ禁止法の定義にあいまいな部分が残る以上、過度の規制になる。法の見直しが先決であり、それを飛ばして条例で規制することは本末転倒だ」と批判。その上で「出版社が集中する東京都の規制強化の影響は、他の道府県にすぐに及ぶ。慎重な論議が必要だ」と話した。
 これに対して都青少年課は「現行でも不健全図書指定の対象の8割から9割は漫画だ。性的感情を刺激しないが、強姦や獣姦、何人もの女性への乱暴行為を賛美するといった反社会的な行為は、現在の基準では指定が難しい。同性愛だからといってただちに反社会的となるわけではない」と説明。単純所持規制についても「罰則はなく、児童ポルノを根絶しようという社会機運を高めるためのあくまで理念規定だ。国に先んじたわけではない」と話している。
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 改正案に反対を訴えている山口貴士弁護士は、「改正案では何をもって単純所持というかの基準が不明確であり、しかも児童ポルノ禁止法にさえない単純所持を禁止することは、地方公共団体は法律の範囲内で条例を制定することができるとする憲法94条に反する」としている。
(2010.03.18 毎日新聞)
 ネットでは、東京都青少年健全育成条例改正案に対し、さまざまな疑問が寄せられている。担当である東京都青少年・治安対策本部青少年課に聞いた。
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 ──判断は誰がするのか
 「『不健全図書』指定を行ってきた第3者機関『青少年健全育成審議会』で判断される。審議会は、議員、PTA、出版倫理協議会、警視庁、都などの委員で構成される」
 ──現在、一般に流通している作品も対象となるのではと懸念する漫画家の声があるが、実際はどのような作品が、どの程度、規制されるか
 「表現の激しさよりも、設定を重視する。通常のストーリーで必要な表現として描かれた性行為ではなく、強姦や近親者との性行為を肯定的に描くなど青少年の感性がゆがむような表現が規制対象となる。現在も月3〜4冊が『不健全図書』に指定されているが、極端に増えることはない」
 ──「非実在青少年」の作品に小説が含まれない理由は
 「文章による表現は受け手の能力を要するが、漫画やアニメは視覚的に年齢問わず、認識してしまう。小説に比べ、知識のない子供が影響を受けやすい」
(2010.03.18 産経新聞)
 東京都が指定する不健全図書の数が月3〜4冊というのは慣例で、条例で数が決まっているわけではありません。これは東京都担当者が審議会に持ち込む図書数がほぼ一定で、議論があっても結果として、審査された図書はほとんど全部が不健全図書に指定されているのが原因です。もし実際に東京都担当者が審議会に毎月数十冊以上の図書を持ち込んだ場合、審議会で一部しか不健全指定されなくなったり、流通・販売の自粛があまり実行されなくなる可能性があるから、上から検閲の要望があった図書を狙い撃ちで販売自粛させられるように担当者が慣例に従っているだけかもしれません。
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【追記】不健全指定に関連した裁判で東京都が示した見解によると「不健全図書類等の指定をするときには、審議会の意見を聴かなければならないと定めているものの、これに拘束されるとは定めていない」ということで、審議会は飾りらしいです。
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 未成年者の強姦や近親者との性行為などは世界的名作とされる手塚治虫作品でもたびたび描かれていますが、たとえば角川書店から再発された「火の鳥 望郷編」では出版社が人肉食や近親相姦などのエピソードをまるごと削除していて、他社の再発版とはストーリーが大幅に異なります。このような過剰な自主規制は必要とは思えません。
 前回の東京都青少年健全育成条例の「改定」は2004年のことでした。実は、2004年の条例改定後、青少年条例の担当部局が従来の生活文化局から、新設された青少年・治安対策本部に移管されています。青少年問題の取り組みが福祉的対応から取締りを基本にした治安問題として扱われるようになりました。そうです、不健全図書制度は、このときに、青少年への福祉的な配慮を前提とした制度から、「治安を乱すものへの取締まり」という観点から行われるようになったのです。青少年・治安対策本部および本部内の青少年課には、警察庁から出向した職員が存在します。彼らが、今回の「改正」案作成の原動力となっています。
(2010.03 弁護士山口貴士大いに語る)

 18歳未満向けの携帯フィルタリング機能は、すでに国の青少年ネット規制法で親が許可しなければ解除できない仕様になっていますが、今回の青少年条例改正案では、解除理由などの事項を記載した書面を親が携帯電話会社に提出しなければ解除できないようにする条文があり、東京都は携帯電話会社のフィルタリング内容や利用状況などについて調査や勧告ができることになっています。
 各携帯電話会社のフィルタリング機能は、利用者の成長段階に応じて保護者が段階的に選択できるようになっています。しかし東京都は18歳未満の利用者に対して一律にフィルタリング設定を解除させないことを想定しているようです。現実には携帯フィルタリング設定の対象はエロサイトだけでないので、成長段階に応じて解除しなければ学校の授業に関連した内容も閲覧できない場合もあり、青少年が学習機会を奪われることになります。
 そもそもこの青少年条例改正案で示されている、18歳未満の青少年を不健全なものから遮断すれば青少年が健全に育成できるという考え方は正しくありません。現代社会の中で育つ青少年は、段階的にリテラシーを学んでいくほうが現実的です。成人するまで不健全なものから遮断して育てられた人間の中にも非人道的な性犯罪者が多いことは、世界各地で大規模なカトリック聖職者による児童への性的虐待が問題になっていることからもわかるでしょう。
 今回の青少年条例改正案には、児童ポルノ単純所持規制に言及した条文もあります。これは現行の児童ポルノ法で販売・配布が禁止されている18歳未満の性的な画像に関する規制で、非実在青少年の規制とは異なります。
 しかし現行の児童ポルノ法では、自分の子供の記念写真や芸術作品などを除外する規定はないので、単純所持禁止を児童ポルノ法と切り離して青少年条例で定めてしまうと、規制の目的が不明確になり冤罪の危険性がさらに高くなってしまいます。日本弁護士連合会も児童ポルノ単純所持犯罪化には反対しています。
 また、実際に児童ポルノ単純所持規制や児童ポルノのブロッキングを行っている国のほうが、日本より児童ポルノ発信数がかなり多いという指摘もあり、このような政策は児童ポルノ対策として効果的とはいえません。
 大阪府など、東京都以外でも同様の問題がある青少年条例改正案をつくる動きは出ているようです。日本中の多くの人の力で条例改正案の内容をよく確認して、役に立たない過剰規制を各地の議会が容認しないようにしてほしいものです。

・関連
→ 不明確な基準で一般人を摘発する表現規制条例
→ 騒動を利用して、無関係な表現まで検閲しようとする団体
→ ネット検閲が日本にも導入されるおそれ
→ いつのまにか過剰になる表現規制
→ 通報されているものはほとんど児童ポルノではない

2010.01.24 Sunday

不明確な基準で一般人を摘発する表現規制条例

 東京都神奈川県愛知県などでまた条例による表現規制強化が検討されているという。
 従来の青少年条例などによる表現規制は制作者側・販売店側に対する締め付けだったが、近年は一般人に対する規制として単純所持罪やネット利用制限義務化などを求める条例案が多くなっている。警察側にとっては、規制基準が不明確で一般人を対象にした法律のほうが摘発件数を稼ぎやすいという利点もある。
 たとえば愛知県は0歳から30歳までの「青少年」のネット利用等を制限するかのような計画案を発表して非難され、後から説明を補足した。
 ネットで話題になったのは「あいち子ども・若者育成計画2010(仮称)(案)」。青少年の健全育成を行うための案で、ここでの子ども・若者の範囲は、「0歳からおおむね30歳未満」、社会的自立が困難な30代も含まれる、という。
 「あいち子ども・若者育成計画」で最も批判を浴びたのが、未成年と20代30代を同列で扱っているのではないか、という点。「子ども・若者を取り巻く社会環境の健全化」の欄には、
  「子どもや若者の判断力を向上させる教育や、保護者の理解を深める啓発が必要だ」
という提言がある。理由は、残酷な暴力シーンや露骨な性描写のある雑誌やゲームソフトが氾濫しているほか、出会い系などネットに有害情報が流れているため、携帯電話等のフィルタリングを強化することが必要、などと書かれている。
(2010/1/22 J-CASTニュース)
 この「子ども・若者」の範囲は、従来の「青少年」と同じく0歳からおおむね30歳までとしておりますが、施策によってその対象となる者が異なる場合があります。
(愛知県 県民生活部 社会活動推進課 青少年グループ)
 日本キリスト教婦人矯風会などの飲酒を罪とする教義の宗教団体は、大正から昭和にかけて、未成年者飲酒禁止法の対象年齢を「25歳未満」に引き上げる法案を提出し続けていた。つまり未成年者に対する規制をつくってから対象年齢を段階的に引き上げて全年齢に対象を広げる計画は宗教議員による規制強化の常套手段で、補足説明はその場しのぎの言い訳にすぎない。また、他の自治体でも愛知県のような計画案が出される可能性もあるだろう。
「25歳未満者の禁酒法案」とは、大日本帝国議会に提出された「未成年者飲酒禁止法中改正法律案」を指す。これは「未成年者飲酒禁止法」を「飲酒取締法」とし、それまでの取締対象であった「未成年者」を「25歳未満ノ者」へ改正すること等を目的とするもので、大正15年(1926)に提出されていたが成立には至らず、以来、毎議会に提出し続けられたのである。
(2008.08 国税庁 NETWORK租税史料)

 有罪となる基準が不明確な表現規制が話題になっても「自分には関係ないはずだ」「どうせ法律に従うしかないのだから法律ができてから考えればいい」などと無関心な人は多いようだ。しかし販売目的以外で家族の写真をただ持っていただけの一般人が明確な基準もなく逮捕されかねない児童ポルノ法改正案や青少年条例は、拡大解釈や冤罪につながりやすいので一般家庭にも影響がある。また、地方自治体の規制条例が原因で、他の法律の規制基準まで変わってしまうこともある。
 元「写真時代」編集長の末井昭インタビューが、雑誌「d/sign デザイン no.17」に掲載されている。「写真時代」は1981年に白夜書房から創刊された写真雑誌で、荒木経惟や森山大道など著名な写真家の作品を数多く掲載していた。警視庁の考える「猥褻の基準」を守っていたはずの「写真時代」が1988年に猥褻図画販売容疑で警視庁から回収命令を受けて廃刊となった経緯について、以前のインタビューよりさらに詳しく語られている。数年後に出版界はヘアヌード解禁という状況になる時代だったのに、自治体条例による不明確な表現規制強化が、ヘアも出してなかった写真雑誌の摘発につながったらしい。
──『写真時代』は、88年までつづきます。『写真時代』が終わるのは、発禁問題によってですか。
末井 まさかと思ったんです。それまでもぼくは、警視庁に毎月のように呼ばれてたんです。そのころはまだ「警告」というシステムがあって、警視庁の保安一課風紀一係というところが毎月何誌か買ってくれて、エロ度のキツい雑誌の会社に電話して、「おたくの雑誌はちょっとヤバイですよ」と。ヤバイとは言わないか(笑)、「ワイセツ性がある」と。で、言われた日に警視庁に行って、始末書を書くんです。「何ページが不適当だと指摘されました、今後そういうことは一切いたしません」というのを書いて帰ってくるんです。そして次の月、また呼ばれる(笑)。同じことをくり返すわけ。なぜそれがいいかというと、向こうの考えがわかるんですね、ワイセツの基準が。「ここから先はマズいよ」というギリギリの線が読めてくる。そのギリギリの線で、こっちも勝負してますから。
──以下のような気持ちですね。
【僕の場合、ワイセツはいけないという法律をいかに守ってワイセツなことができるか、というアイディアを考えたりすることが好きなので、僕は刑法一七五条というものはあったほうが面白いと思っている】(『素敵なダイナマイト・スキャンダル』)
末井 ところが、ある時期から、地方の婦人団体みたいなところから電話が来ることが多くなったんですよ。「私たちは健全な青少年を育成する会ですけど、おたくの雑誌はどういう方針で編集されてるんですか」って。「え、方針?」方針と言われてもね(笑)。さらに、県条例にもひっかかるようになって、対警視庁との関係だけだったらわかりやすかったんですけど、神奈川県や宮城県から電話がくるみたいになって。そうなると、どこを基準に自主規制すればいいのかがわかんなくなるんです。バクゼンと自主規制しなければいけなくなり、雑誌にもエネルギーがなくなるんです。ちょっと飽きてたし、もうやめたいなぁと思っていたころ、いきなり発禁ですよ。警視庁のこれまでとは違う遊軍みたいな部署から来たんです。そういう部署があるのも、知らなかったから、すごくビックリして。風紀一係もビックリしてるんです。仲良くしてましたから。
(2009.12「d/sign デザイン no.17」P134 末井昭、聞き手=鈴木一誌)

評価:
赤瀬川 原平,木村 裕治,寄藤 文平,中村 勇吾,末井 昭,中谷 礼仁,松田 行正,坂手 洋二,石川 初,喜多 千草,鈴木 一誌
太田出版
¥ 1,944
(2009-12-03)

2009.09.18 Friday

熟女イメージDVD摘発でなぜか「疑似児童ポルノ」という報道

 女優の陰部が無修正で映っている「疑似児童ポルノ」DVDを出荷したとして、警視庁はわいせつ図画頒布の疑いで、東京都渋谷区幡ケ谷の写真家、力武靖容疑者(48)と山口県下関市のアダルトDVD制作会社「ムーランコーポレート」元社長、河野憲一容疑者(35)を逮捕した。同課によると、力武容疑者は「映っているのは陰部ではない」とわいせつ性を否定している。
 警視庁によると、少女のように見える成人女優を使った「疑似児童ポルノ」作品が摘発されたのは、全国で初めて。
 逮捕容疑は、今年6月、女優(30)の陰部が映ったDVD「WAREMEX(ワレメックス)No.15」計45枚を、アダルトショップ2店舗に出荷したとしている。
(2009.09.17 産経新聞)
 同課によると、同作品は男女の絡みのないイメージ作品だが、全体の約4割で性器が露出、強調されていた。
(2009.09.17 時事通信)
わいせつ図画頒布容疑なのに、疑似児童ポルノを初摘発したと強調する警察と、警察発表をそのまま垂れ流したマスコミ各社のしょーもなさに失笑しましたわ。
(2009.09.17 「反ヲタク国会議員リスト」メモ)
1)6月23日(火)にたちばな書店・秋葉原店〔えなじぃ秋葉原店〕に警察が家宅捜査。店長が逮捕される。罪状はわいせつ物頒布罪が有力。
2)押収された商品は疑似ロリ系の作品群で、RとかMが制作したものという説が有力だが、具体名までは判明せず。
3)警察がわいせつ物頒布罪でたちばな書店を摘発したのは、6月26日に開かれる自民党・公明党・民主党の3党で行われる、児ポ法改正案の審議に合わせて逮捕者を出したかったが、法令遵守が徹底していたため児ポ法では摘発できず、わいせつ物頒布罪を使って見た目だけでも実績を作りたかったのではないかという説が有力。
(2009.06.25 王様を欲しがったカエル)

大越はるか きわどい性器露出が問題となったDVDは『WAREMEX-ワレメックス-Vol.15 蓮川里歩』らしいが、この蓮川里歩という30歳の女優は、熟女AV女優の大越はるかと同一人物に見えるという指摘もあり「少女のように見える成人女優」という警察発表には違和感がある。ほとんどの新聞報道が同じ「疑似児童ポルノ」という新しい用語を使っているのも警察発表から引用した言葉なのだろう。
 力武容疑者は児童ポルノ法成立前に少女ヌード写真集を制作していたことで有名らしいが、通販サイトなどで今回問題になったDVDのパッケージ画像を見ても、児童を連想させるようなパッケージには見えない。男女の接触場面がなく女性が服を脱いだりするだけのイメージDVDがわいせつ物として摘発されたことはこれまでにもあったが、タイトルやパッケージに児童を連想させるような要素がない熟女イメージDVDに、警察から「疑似児童ポルノ」などという誤解を招くレッテルが貼られたのは初めて。

 2008年から日本ユニセフ協会などは18歳以上が児童を演じるアダルトビデオや児童に見える漫画などモデルの実在しない画像を「準児童ポルノ(子どもポルノ)」と定義し、児童ポルノ法で規制するべきだと主張している。この「準児童ポルノ(子どもポルノ)」には被害児童がいないので規制目的もあいまいで、処罰する基準も明確でないという批判が多かった。
 しかし今回の児童ポルノとは無関係なわいせつ物摘発の警察発表に出てきた「疑似児童ポルノ」という用語は、それ以上に意味不明だ。過去に児童を撮影したことがある容疑者はその後に何を撮影しても警察から「疑似児童ポルノ」というレッテルを貼られ続けることになるのだろうか。

・関連
→ 騒動を利用して、無関係な表現まで検閲しようとする団体
→ いつのまにか過剰になる表現規制
→ 通報されているものはほとんど児童ポルノではない
→ 教義を法律にしようとする宗教団体

2009.06.14 Sunday

騒動を利用して、無関係な表現まで検閲しようとする団体

 日本のアダルトゲーム・メーカー、イリュージョン(Illusion)は8日、女性に対する性的暴力をシミュレーションする同メーカーのアダルトPCゲーム「レイプレイ(Rapelay)」に対し、米国で起きている抗議キャンペーンについて、「国内でしか販売していない」ゲームであると述べ、海外の抗議キャンペーンに対してはコメントできないと語った。
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 日本ユニセフ協会(Japan Committee for UNICEF)の広報担当者は、日本という「抜け穴」が、児童ポルノ撲滅に向けた国際的な取り組みを妨害していると述べる。
(2009.05.09 AFP)

 この騒動に関する報道で、現実の児童保護を目的とした児童ポルノ法とゲーム表現の問題を関連づけるのはおかしい。モデルが実在しないゲーム・アニメ・マンガも児童ポルノ法で規制しろと主張している日本ユニセフ協会はafpbb.comも単なる広告媒体のひとつと考えているのだろうが、AFP通信として書かれた記事は海外に配信されることもあるので、宗教団体が日本ユニセフ協会を利用して発表した妄言をただ垂れ流すのではなく、事実関係を正しく伝える記事にしてほしい。欧米では家族で入浴してる写真があっただけでも親は性的虐待の疑いがかけられ処罰されるというが、そんな宗教的基準で日本を「児童ポルノの主要な製造拠点」と非難するのは偏見にすぎない。
 児童ポルノ法によって単純所持を処罰するということは、児童虐待と無関係な人物でも処罰するということだ。たとえば兵庫県で2歳の娘の裸の写真を母親が児童ポルノとして販売した事件があったからといって、自分の子供の記念写真を撮って保存しているだけのごく普通の親たちまで児童ポルノ犯人として処罰するのは弊害が大きすぎる。
 児童ポルノ法という名称から、悪質なポルノだけを規制する法律という印象を持つ人も多いようだが、日本の児童ポルノ法には芸術や歴史資料などを除外する規定は何もないため、運用面でも芸術的価値などへの配慮がなく、海外で芸術として評価されていた写真家・清岡純子の写真集も国会図書館では閲覧禁止になっている。
 このためゲーム・アニメ・マンガなど創作物が児童ポルノとして規制され所持しているだけで処罰の対象になると『となりのトトロ』『ブラックジャック』『はだしのゲン』が自宅にあるだけでも逮捕される可能性がある。日本中の所持者全員が一斉逮捕されることはありえないが、いいかげんな見込み捜査や別件逮捕の口実に使われる危険性は高いだろう。
 そもそも2008年においてBBFC〔全英映像等級審査機構〕の審査が緩過ぎるとして、保守党下院議員Julian Brazier(ジュリアン・ブライザー)がBBFC審査を上告できる政府組織の設立を可能とする法案を支持するヴァズ議員が「殺人や強姦を行うゲームがある」と証言したところ、強姦ゲームの存在など無いと当時批判されました。この数ヵ月後、ヴァズ議員が「レイプレイ」を持ち出してきたという具合です。これは推測でしかありませんが、強姦ゲームがあるという思い込みで発言したものの、国内にはそのようなゲームが無いのが判明した為に色々検索した結果、Amazonのマーケットプレイスを経由して日本の「レイプレイ」を発見して、これを攻撃再開の糸口としたと思われます。
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 言うまでもありませんが、この問題難しくさせている理由の一つが英国ではアメリカほど様々日本の作品が浸透していませんし、弁護する有識者も足りないというのもあります(もっとも同じ事はアメリカ自体でもいえるのですが)。同時に海外ではHentaiという単語が一人歩きしている実情もあります。
(2009.06.12 兼光ダニエル 連絡網AMI Mailing List)
「女性に対する差別や偏見を助長する」というのは、表現を制約する根拠にはなりません。批判し、非難することは当然としても、発売禁止を求めることは間違っています。と言っても、ああいう人は聞かないんでしょうけどね。
「イクオリティ・ナウ」 Equality Now
http://www.equalitynow.org/english/index.html
http://www.equalitynow.org/english/actions/action_3301_en.html
このサイトには、ご丁寧にクレームレターのテンプレがついていますが、内容は滅茶苦茶です。
(1) 女性差別撤廃条約 5(a)は、エロゲーを含むポルノグラフィの規制を批准国に義務付けていません。
(2) 日本国憲法第14条は、エロゲーを含むポルノグラフィの規制を日本国に義務付けていません。ていうか、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」という条文から、政府に対するポルノ規制の義務を読み込むという非常識な解釈は聞いたことはありません。旧司法試験の答案なら不合格間違いなし。
(3) エロゲーはただのフィクションです。女性差別や女性に対する暴力を助長するものではありません。
(4) エロゲーに被害者はいません。生身の人間と創作物であるキャラクターを同一視すべきではありません。
(2009.05.08 弁護士山口貴士大いに語る)
 表現の自由の限界を考える時に、「殺人」と「殺人を助長する創作物」は、他者の権利侵害のあるなしの点で、分けて考えないと、頭悪いと思われますよ。
対立利益が違うんですよ。こういうことがわからない人は議論に加わってはダメですよ。
 政治的見解を表明するために殺人するという場合は、そういう表現自体が重大な権利侵害だから、表現の自由の面は大幅に制約される。
 殺人行為一般を肯定するとか、助長するとか、煽動する表現の場合は、それ自体では、権利侵害はないから、権利侵害以外の理由(公共の福祉)以外の理由で制約されるとしても、表現の自由が大幅に制約されることはない。
(2009.06.09 奥村徹弁護士の見解)

 この騒動の経緯については「反ヲタク国会議員リスト」「崎山伸夫のBlog」「王様を欲しがったカエル」などのブログが詳しい。
 騒動に乗じてゲームをバッシングしている国際的団体イクオリティ・ナウの理事の1人である日本人弁護士は、ポルノ・買春問題研究会(APP研)という日本の表現規制団体の主要人物で、APP研のサイトに寄せられたセクハラ被害者からの相談メールを、被害者に無断で担当弁護士に告げ口するという非常識な対応をして、担当弁護士との関係が悪化した被害者から守秘義務違反で訴えられており、どうやら実在の女性の人権を守る意識は低いようだ。
原告は職場におけるセクハラについて2人の弁護士に処理を依頼。しかし、弁護士の対応に不信感を抱き、この件をAPP研のサイトを通して、面識のない被告弁護士に相談。
サイトには【寄せられた情報に関しては、守秘義務を固く守ります】という一文があったにもかかわらず、被告弁護士は、これを原告が依頼していた弁護士に連絡。
これによって、原告と弁護士の関係がまずくなり、弁護士は原告の依頼を辞退。
これについて「慰謝料150万円を払え」と原告は要求して訴訟を起こし、これに対して大阪地方裁判所は、20万円の支払いを命じた。
ざっとそういう内容で、たったの20万円ですから、たいした不利益ではないと裁判所は見たとも言えますが、被告弁護士の守秘義務違反を認定したことは間違いない。
実際、ダメでしょ、これ。弁護士じゃなくても、非常識と言われて信頼を失います。
(2007.01.22 松沢呉一の黒子の部屋)
〔※大阪地裁判決〕〔※大阪高裁では棄却〕

 またAPP研は、1990年代前半にレイプ的演出手法が批判されたAV監督・バクシーシ山下に現在も粘着しており、レイプ的演出とは無関係な著書『ひとはみな、ハダカになる。』まで絶版にさせようとしている。
本の読者対象として設定されている中学生や高校生や小学高学年生がこの本を読み、山下の「デビュー作」として紹介されている「女犯」──この徹底的な女性蔑視と女性への暴力を娯楽化した暴力AV──などを視聴したら何が起きるでしょうか。
(2009 ポルノ・買春問題研究会)
 書籍の内容を確認してみたが『ひとはみな、ハダカになる。』の本文中には『女犯』やレイプ表現に関する記述はないので、APP研が問題にしているのは奥付の著者プロフィールに小さな字で記載された【大学在学中からAV業界に足を踏み入れ、90年に『女犯』で監督デビュー。】という部分のことらしい。書籍の内容に直接的な問題がないのに他作品への批判をこじつけ「この本を読むことによって子どもに深刻な被害が発生する」として販売中止を求めるというのはもはや宗教的な理由としか思えない異常な行動で、女性や児童の保護という趣旨にはまるで当てはまらない。
367 名前:朝まで名無しさん 投稿日:2009/05/08(金) 13:44:51 47pv93FM
〔『ひとはみな、ハダカになる。』の回収・絶版を求める〕署名をはじめたのは救世軍などキリスト教系の団体 http://blog.goo.ne.jp/pop0808/e/9795b341984cb87b33041ef9afc39cf4
問題にされているAV監督の著書『ひとはみな、ハダカになる。』にはエロ画像とか違法行為を推奨するような文章はまったく掲載されてないので、都道府県条例で有害図書指定されるような要素はまったく何もない。
しかし「聖書のみが神の法規」という教理の救世軍はAV監督が未成年向けに本を書いたことが気に入らないため出版社に回収・絶版を求めるという感情的な行動をとっている。
(2009.05.11 カマヤンの虚業日記)(2009.05.08 2ch.net)
 率直な言い方をすると、この本を読んでくれている年代は、ぼくの天敵なんです。
 なぜなら、高校生に限らず、中学生までもが、身分証明書を偽造して撮影に応募してくることが本当にあるからなんです。そういう女の子の大人っぽさと証明書とを信用して撮影したりするとあとがたいへんです。だまされたのはこちら側だというのに。児童福祉法違反なんかで逮捕されて、こちらが全責任を問われてしまいます。
(2007 バクシーシ山下『ひとはみな、ハダカになる。』P15-16 理論社)

・関連
→ ネット検閲が日本にも導入されるおそれ
→ いつのまにか過剰になる表現規制
→ 通報されているものはほとんど児童ポルノではない
→ 教義を法律にしようとする宗教団体
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