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2008.08.30 Saturday

HIV感染予防についてよくある誤解

HIV感染予防について間違った知識が書かれているのは宗教系サイトが多いのですが、元ネタが宗教的な偏見から生まれた迷信だと気付かずに都市伝説を広めている人もいるようなので、よくある誤解が解消できるような説明をまとめておきます。HIVについてよくわからない人はエイズ予防情報ネットの「エイズQ&A」や各保健所の資料も参考にしてください。

「HIVはコンドームを通り抜ける」という噂は、アメリカの反避妊団体「AMERICAN LIFE LEAGUE」が広めたガセネタが元になっています。キリスト教原理主義者は避妊用品の販売・配布を妨害するためにコンドーム否定論を広めているのです。
〔AMERICAN LIFE LEAGUEは〕「コンドームが性病予防としても不完全だから禁止」と訴え、「ニュージャージー州バーリントン郡のエイズ・カウンセリング・センターでのコンドームの配布を中止させたという成果をあげた」という例も書かれていた
(反コンドーム派の論理)
エイズウイルスがコンドーム素材を通過するほど小さくないことは顕微鏡写真を見比べてもわかります。日本国内では医療機器として承認されたコンドームだけが販売されており、コンドーム製造工場では電気試験による全数ピンホール検査を行っているので、小さな穴が開いたコンドームが出荷されることもありません。
リンパ球から出芽するエイズウイルス
リンパ球から出芽するエイズウイルス
(広島県感染症情報センター 病原微生物電子顕微鏡写真集)
〔ポリウレタン製コンドーム〕サガミオリジナルの表面(5000倍)
サガミオリジナルの表面(5000倍)
(サガミオリジナル002 相模ゴム工業株式会社)
性行為による〔HIV〕感染はコンドームを正しく使用することにより予防できます。
(鹿児島県:エイズの予防について)

「日本のHIV検査率が0.1%」というのは、保健所などで自発的に無料HIV検査を受けた人数が1年間で人口の約0.1%という意味で、実際には病院や妊婦健診でHIV検査を受ける人のほうがはるかに多いです。地域によってはエイズ対策予算が以前の半分以下に減らされており、保健所の無料HIV検査を平日月1回程度しか行ってないところもあるので、HIV検査率を上げるためには各都道府県のエイズ対策予算を以前の水準に引き上げることも必要です。早期発見のため自発的にHIV検査を普及するべきという観点で、TV番組などではHIV検査率の数字だけを示すことが多いですが、誤解されやすいので説明を加えてほしいところです。
保健所等におけるHIV抗体検査件数
平成19年 年間 〔全国〕計 128,819〔件〕
(厚生労働省エイズ動向委員会 平成19年エイズ発生動向年報)
 エイズウイルス(HIV)の母子感染予防に重要な妊婦のHIV検査の実施率は昨年度、全国の病院で平均95・3%で、前年度より0・6ポイント上昇したが、検査率には最大で2倍近くの地域格差がある
(2007.11.4 産経新聞)

HIV感染者数について「若者を中心にHIV感染が広がっている」と報道されることが多いですが、エイズ患者数のほうは若い世代も中高年も大差ありません。若い世代のほうが性感染症が多いのは当然ですが、エイズは潜伏期間が長いため、あまりHIV検査を受けない中高年世代では夫婦間でもHIV感染が広がる例も多く、高齢になってからいきなりエイズ発症するまでHIV感染に気付きにくいようです。
異性間性行為感染によるもの
2007年の日本人エイズ患者・HIV感染者数
〔HIVの性行為感染経路が〕異性間では若い世代に感染者が多く、中高年世代にエイズ患者が多くみられます。全体でもすべての年齢層にわたっています。
(2008 Yahoo! JAPAN レッドリボンキャンペーン)
初診時に50歳以上だった女性のHIV感染症例を調べたところ、14例中8例(57%)もが、夫やパートナーの感染・発症をきっかけに感染が発覚していることが分かった。
(2005.12 日経メディカル オンライン)

「HIVは遺伝する」というのは誤解です。もし父親がHIV感染者でも、母親に感染していない場合は子供に感染する可能性はありません。HIVの母子感染は出産時に感染者の血液を浴びてしまうことが主な原因なので、HIV感染妊婦がまったく検査や治療を受けずに通常出産した場合でも母子感染の可能性は30%程度ですが、抗HIV治療や帝王切開など予防対策を万全にすれば母子感染の可能性を1%以下にできます。つまりHIV母子感染対策には妊婦HIV検査が最も重要なのです。日本では妊婦健診で95%以上の妊婦にHIV検査を行い、毎年30人程度のHIV感染妊婦が報告されていますが、万全の予防対策で出産すれば母子感染しない実績が10年以上守られています。
もし〔HIV〕陽性が確定しても、専門的治療により妊娠を継続し出産が可能、胎児の感染も防げます。
(エイズ予防情報ネット 妊婦HIV一次検査実施マニュアル)

「エイズウイルスの起源は生物兵器」「サルとセックスした黒人が最初にエイズに感染した」などの迷信は「エイズは天罰(だから神を信じる者はコンドームを使う必要はない)」というキリスト教伝道師の妄言と同じで「自分には関係ない」という偏見から広まったものでしょう。研究によると、チンパンジーを殺して肉をさばいて食べた人が原型のウイルスに感染したのがHIVの起源とされています。
シャープ教授の研究結果によると、HIV-1は1930年ごろにアフリカ中西部のチンパンジーの感染したSIVが起源だという。
(2003.06.19 WIRED NEWS)
アフリカなどのHIV感染率が極端に高い地域では他の性感染症も多いのでHIV感染が起こりやすく、医療が遅れているため注射針の使い回しなどがHIV感染拡大を招いたとも言われています。現地調査によれば出稼ぎ鉱山労働者以外ではアフリカの性行動は欧米とあまり変わらず、アフリカ人は信心深いので獣姦や同性愛の習慣もないそうです。しかし地域によってはクリトリス切除や一夫多妻など女性差別的な習慣があることが、キリスト教団体から偏見を持たれる原因になっているのでしょう。
調査団は、HIVは異性間のセックスよりも感染した注射針の使用やHIVの混入した輸血の方が感染しやすい、と議論している。また調査でも、アフリカの性行動は、北米やヨーロッパなど、感染が明らかに低い地域とほとんど同じだとしている。
また調査では、母親が感染していないにも関わらず、HIV感染している赤ん坊がいることを確認し、こういったケースについては医療現場での感染を要因として疑っている。
「アフリカでは、複数の人に消毒なしに同じ注射針を使用する行為が、毎年数百万単位で行われています」とGisselquistは言う。
(2003 AJF ロイター通信 International Journal of STD & AIDS)
 タンザニアの12集落で、STDの治療や医療関係者による研修が行われた6集落と、それ以外の6集落とを比較したところ、両群で性行動、コンドームの使用では差がなかったにも拘わらず、前者ではHIVの新規感染発生率が平均38%も低かった。
(1999.03 エイズニューズレター)
いまだに時代遅れのエイズウイルス生物兵器説を信じる人たちは、世界のHIV感染や治療の現状には興味がなく、基本的な知識も不足しているようです。アメリカ政府の責任を追及するなら、アメリカ政府が宗教的な理由からコンドーム配布を嫌ってアフリカのHIV予防政策を妨害していることなど、もっと現実的な問題を扱ってほしいものです。
 ナミビアの例では、政府が若者にコンドームの使用を奨励したため、米国のPEPFARからの支援が減らされたり、中止になったりした。ナミビア政府は米国から「コンドームはハイ・リスク・グループのもに使用が許されるべき」だと言われた。それは、兵士、トラック運転手、セックス労働者、麻薬中毒者のことをを指す。多分、この規定は米国独特のもので、人口の22.5%もエイズが蔓延しているナミビアでは、すべての人がハイ・リスクになっている。
 また、米国はPEPFAR援助の条件として、中絶をレイプ、近親相姦、生命に危険のある病気の時の妊娠に限るとしている。ケニアやガーナではすでにこの米国の条件のために、多くの診療所が閉鎖された。
 PEPFARの2005年度予算では、コンドームを使用しないプログラムに、1億8,000万ドルを拠出する計画である。米国内でも、PEPFAR資金を得ることが出来る組織は、特定の宗教団体に限られる。
(2004.08.23 国際問題評論家・北沢洋子)

・関連
→ 沖縄県が妊婦健診HIV抗体検査の公費補助を減額
→ アメリカの援助はアフリカのエイズ感染リスクを拡大している
→ 宗教右翼を煽動したジェリー・ファウエルの残した妄言
→ 高齢者の性感染症

2017.11.05 Sunday

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