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2008.12.11 Thursday

ネット検閲が日本にも導入されるおそれ

イギリスの主要プロバイダ各社が児童ポルノを遮断する目的で導入したインターネット監視団体の有害サイト分類に、オンライン百科事典Wikipedia内の歴史資料価値のあるロックバンドの名盤ジャケットを含むページが指定されたため、自動的にWikipedia全体を遮断してしまうプロバイダが続出した。
 オンライン百科事典Wikipediaを運営する非営利団体Wikimedia Foundationは12月7日、英国の主要インターネットサービスプロバイダー(ISP)がフィルタリング機能と監視機能を導入したために、Wikipediaへのアクセスが困難になっていることを明らかにした。
 今回のフィルタリングは、Wikipediaが18歳以下の児童の不適切なイメージを含むコンテンツをホスティングしているサイトとして、英Internet Watch Foundation(IWF)のリストに掲載されたことに英国のISPが対応したもの。現在、英国内のサーバ6台がコンテンツのフィルタリングを行っており、Wikimedia関連サイトへのアクセスがブロックされている。一部のISPでは、Wikimediaの一部のページだけでなく、テクニカルヘルプデスクを含むすべてのページにアクセスできなくなっていることが報告されている。
 Wikimediaは、ドイツのロックバンド、スコーピオンズの1976年のアルバム「狂熱の蠍団〜ヴァージン・キラー」に関するページに掲載されているアルバムジャケットの少女ヌード画像がアクセス規制の理由だとしている。
(2008.12.09 ITmedia)
いくつか問題があって、アルバムジャケット写真そのものは、「店頭で販売する」という文脈では単なる違法・合法の線引き以上の抑制が働いているわけで、まず売っていないのだが、昔のLPレコードの中古品の売買は普通に行われていて、Wikipediaを運営するWikimedia財団の声明でも、Amazonでイギリスから普通に買えるぞと言及されている。あと、非常にメジャーなところで扱われていたので、Wikipediaに限らず問題の写真を掲載しているWebサイトがあるなか、「通報ベース」とはいえ非常に恣意的に見えた、ということはあるだろう。さらに、そもそも問題なのは「写真だけ」のはずが、ここでは当のアルバムを説明している純粋なテキストまでもが児童ポルノブロッキングに適用されたということだろう。イギリスの児童ポルノブロッキングは、URL単位で行うので「画像だけ」というブロッキングが容易だということになっていた。しかし、現実は画像をインライン表示するテキストページもブロッキングの対象になっていることが白日のもとに晒された。「児童ポルノへの対応」のなかでは、商業的児童ポルノサイトなどへの対応で、あきらかに画像のみではなく幅広いブロッキングを要するケースもあるだろう。しかし、この件はそういう問題ではない。「児童ポルノ」ゆえにブラックリストの内容を公表できないという前提のもと、いったい彼らは何をやっているのか、ということだ。
(2008.12.09 崎山伸夫のBlog)
 英国でWikipediaへのアクセスが遮断されていた問題は、英国のオンライン監視団体Internet Watch Foundation(IWF)が問題とされているページを同団体のブラックリストから外すことでひとまず解決した。IWFが12月9日、この決定を発表した。
(2008.12.10 ITmedia)
日本にもこういうデタラメなネット検閲が導入される可能性が出てきている。しかも、児童ポルノ法改正によるネット検閲ではなく、プロバイダ責任制限法の範囲拡大によって導入される場合には「社会的法益を侵害する情報」という名目で削除・遮断されるのは児童ポルノ法違反サイトに限らない。
 総務省は27日、2007年11月より開催してきた「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の最終取りまとめ案を公表した。同案についてのパブリックコメントを12月17日まで募集する。
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 例えば違法情報への対策の中には、児童ポルノやわいせつ物などの社会的法益を侵害する情報に対する取り組みの方向性が示されており、そのための方策として、「特定電気通信役務提供者の損害賠償の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ責任制限法)の適用範囲を拡大することで、プロバイダなどによる自主的な削除を促す施策を挙げている。また、児童ポルノ対策に関しては、ISP側でユーザーの閲覧を一律に遮断する「ブロッキング」にも言及した。
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 DNSポイズニング方式は、DNSサーバーに対して閲覧規制対象のホスト名でクエリがあった場合に、ダミーのIPアドレスを返すことでアクセスを阻止するもの。ブロッキングとしては一般的な手法で、スウェーデンなど北欧諸国において民間の自主的取り組みとして導入されているという。ただし、ホスト名単位での遮断となるため、児童ポルノ以外のコンテンツが混在しているホストの場合、オーバーブロッキングされる恐れがある。また、ISPのDNSサーバーを経由しなければブロッキングを回避できるという弱点もある。
(2008/11/28 INTERNET Watch)
ホスト名でのブロッキングは、Wikipedia内の1ページを遮断するためにWikipedia全体を遮断した例と同じで、たとえばA社のブログ内の1ページが問題になったらA社のブログ全体が遮断されることになる。
イギリスの例ではブロッキングの具体的な理由が公開され、遮断されたサイトが有名なオンライン百科事典で、問題となった画像が有名で資料価値があったことで世界的な話題となった。しかし一律にブロッキングを強制している国では、どのサイトがどういう理由で遮断されているのか公開されない場合が多く、国内からは事態が把握しにくい。ブラックリスト非公開のフィンランドではブロッキング状況を検証する目的のサイトまで遮断され、ブラックリストの多くが児童ポルノと無関係にもかかわらず改善されない。
 フィンランド国内の団体が2月19日にこのリストに含まれる1047のサイトを精査したところ、9つのサイトが児童ポルノを掲載していたほか、9つのサイトが年齢不詳のポルノを掲載していた。28のサイトは違法か合法か判断が難しく、46のサイトは創作性の認められる児童をモデルとした作品、残り879サイトは合法コンテンツのみだったという。この結果から、ブロッキングが行われる場合には法に基づいて適切に運用されているかどうか十分な監視が不可欠といえるのではないか。
 このリストに日本の大手プロバイダーの管理するサーバーも含まれていたので、筆者から当該プロバイダーにフィンランド警察から照会があったか問い合わせたところ、フィンランド国内からの接続が遮断されていることは認識しているが、先方から特に連絡はなく、どのコンテンツに問題があるかまでは把握していないという。最近は中国からヤフー・ジャパンが一時閲覧できなくなったということが起きた。
(2008.08.08 楠正憲 NIKKEI NET)
 席上、スウェーデンでネットの主要接続業者が二年前から実施している「閲覧遮断(ブロッキング)」の取り組みが紹介された。
 ホットラインを開設する非政府組織(NGO)「エクパット・スウェーデン」が、問題サイトを警察に通報。警察は一覧を作って接続業者に提供する仕組みだ。現在、遮断の処理件数は毎日約三万件に上るという。
(2007.04.26 中日新聞)
このような過剰なネット検閲は弊害が多く世界的に批判されているもので、日本の新聞がネット検閲を待望するような極論だけを掲載するのはおかしい。
スウェーデンのように宗教団体やクレーマーの通報によって毎日数万件ものサイトが新たに遮断リストに加えられ続ける状況で、そのすべてが適切だといえるだろうか。ちなみに日本では児童ポルノとしてネット監視団体に寄せられる通報のほとんどが、成人女性の画像など児童ポルノとは無関係なものだという。プロバイダ責任制限法の範囲拡大はクレーマーを助長させることにつながり、過剰な通報もさらに増加するだろう。
例えば、インターネット・ホットライン・センターには、毎日多くの「児童ポルノ」関連の通報が寄せられますが、現行法の定義では「児童ポルノ」とされないものがその殆どと伺っております。また、〔児童が被害者ではない〕子どもポルノを含めた各種の所謂「有害サイト」に対する自主規制を検討されているインターネット・サービス・プロバイダー業界の皆様の間でも、上記と同様の理由から、現状以上の対応が出来ない状況とのご説明をいただきました。
(2008.03.28 財団法人日本ユニセフ協会)

・関連
→ いつのまにか過剰になる表現規制
→ 中国同様のネット検閲を行うオーストラリアの性犯罪発生率
→ 携帯電話のフィルタリング機能は本当に改善されたのか
→ 通報されているものはほとんど児童ポルノではない

2017.11.05 Sunday

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