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2009.05.30 Saturday

TVタックルで性感染症自己責任論

テレビ朝日で2009年5月25日に放送された番組「ビートたけしのTVタックル 急げ!医療の“水際対策”タックル危機管理SP」がひどい。(→動画)
この日の番組の主な内容は新型インフルエンザ対策と介護問題だったが、番組後半はなぜか10代の性病・性教育の話題。討論前のVTRは「10代の子供たちに広がる性感染症」というテロップで現代の10代だけが異常という演出だったが、実際には一般的な性感染症患者は20代が中心で10代より30代や40代のほうが多く、近年は10代の感染者数は減少している。VTR中に出ていた「性交経験のある男子高校生の6.7%、女子高校生の13.1%が(無症候の)クラミジア陽性」という統計は、成人の最近性交した男女でも同程度の陽性率になる話なので、他の年齢層と比較せずに高校生の性交経験のある集団の無症候感染だけに限定した数字を出すのはおかしい。VTR中の「15歳〜24歳のHIV感染が増えている」という話も、検査率の高い10代の感染報告は少数なのに検査率の低い40歳以上の感染報告が急増していることを問題にするべきだ。
未婚妊婦における年齢別Chlamydia trachomatis検出率(1995〜1997年)
未婚妊婦における年齢別クラミジア検出率
(1998 STD症例におけるHIV及びSTD関連抗体に関する血清疫学的調査)
街の高校生に性体験や性病に関する噂話を取材し、視聴者が噂話を事実と誤認するように全面モザイク加工されたVTRでは、エイズと他の病気の区別ができてないような女子高校生が「友達がエイズ」と言っていた。しかし感染症法によってHIV感染者・エイズ患者は全数報告が義務づけられていて日本全体でも10代女性は年平均1人以下なので、たまたま取材した女子高校生の友達がエイズなんて話はただの都市伝説で、このVTRの演出は誤解を招く。
VTRでは続けて宗教関連団体の理事をしていた山谷えり子議員の2005年3月の国会質問の映像から、自民党の「過激な性教育」捏造アンケート七生養護学校の知的障害者に対する性教育をいまさら話題に取り上げ、世界日報にも取材された林愼吾医師にインタビューするなど「現在の性教育はやりすぎ」という宗教的意見だけを編集していた。まるで宗教番組だ。

VTR内では「中学になるまでセックスは教えないでいい」という意味の話をしていた赤枝恒雄医師が、VTR後のスタジオに登場し、真偽不明の伝聞ネタをもとに性教育批判やセックス厳罰化や性感染症自己責任論を主張した。
赤枝恒雄医師「〔クラミジアは〕小学校でもいまあるわけですから〔※真偽不明〕。」「〔病院に〕来てるお母さんがクラミジアになった。で、ご主人に言ったの『あなた浮気したでしょ』と。で、してないって言ってたんだけど、つきとめたら、それが、〔自称〕小学生と援交してたの。小学生からクラミジアうつされたの〔※真偽不明〕。小学校はそういうふうに援交やってる子と、何も知らない子の差が大きすぎるんですよ。ですから性教育をやって、何でもセックスそのものを教えりゃいいんじゃなくて〔※学習指導要領では具体的な性行為の方法は扱ってない〕、やっぱりひとりひとりの目を見てですね、どういう程度なのかを見て決めていかないと。」
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「いちばんの問題はね、法的整備ができてないんですよ。ようするに世界89カ国ほとんどの国ではですね、16歳以下はセックスしちゃいけないんですよ〔※年齢差が少ない場合には例外処置もある〕。日本おかしいよ、〔刑法の性交同意年齢が〕13歳になってるんですから〔※児童福祉法や児童買春禁止法や青少年条例などの制限があるので、現実には日本の法整備がゆるいわけではない〕。」
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「エイズっていうのは毎月25万円かかるんですよってこと〔※ガセネタ〕。一生25万円治療費がかかりますよってそれはみんな知ってなきゃいけないですよ。それと、お年寄りも75歳以上は後期高齢制度で切られましたけども、性病も必ず国は切ってきます〔※憲法違反〕。もう医療費がこれだけかかってくると、自己責任でしょうと〔※偏見〕、切り捨てになりますよ。はい、切ります。はい。」
(2009.05.25 テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル 赤枝恒雄)
雑誌のインタビュー等でも真偽不明の噂話を語ることが多い赤枝医師は、この番組でも刑法の性交同意年齢の引き上げを主張したり、エイズの治療コストをネタにするなど、怖い話をして脅かせばいいんだというレベルの発言が多いが、偏見や誤解を招く言い方で説明不足。
現在の日本ではHIV感染者の治療費自己負担額は所得に応じて上限が決まっていて、平均的な所得の人は月1万円以下で治療が受けられる。
国の負担を含めた治療費総額でも通常のHIV治療コストはせいぜい月15万円程度といわれており、赤枝医師の想定している金額はおそらくエイズが重症化した患者の最も多く費用がかかる事例なのだろうが、重症患者でも治療が成功すれば医療費は通常の感染者と同程度で一生高額なわけではない。
コストを問題にするなら、検査を普及させて発症前にHIV感染を早期発見したほうが治療を含めたエイズ対策コストを削減できるのは常識。ところが日本では自治体のエイズ対策予算が10年前の3分の1に減り無料HIV検査日程が少なく、エイズ発症まで気付かないHIV感染者の割合が減らない。
新規エイズ患者の割合が多いことは日本よりHIV感染者が増加してる海外先進国と比較しても異常で、自己責任ではなく政策的な失敗。
たとえば島根県の保健所では1日7人・月2回しかHIV検査できないので県全体で年500人しか保健所でHIV検査してない。
エイズ即日検査・相談について
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*受付時間:9:00〜11:00 予約制(20分刻みで予約を入れ、HIV・HCVともに7人を限度とする)
(島根県 : エイズに関する情報)
性感染症が自己責任で天罰だというのはカルト宗教によくある偏見で、実際には日本でも海外でも夫婦間で性病が感染する割合は高く、すべてが自己責任とはいいきれない。過剰な自己責任論は性病に対する偏見を煽るだけで、実際に性病に感染した患者を混乱させ、感染を信じないで医療を拒絶し宗教に走る患者を生み出す原因にもなりかねない。
エイズ対策のため検査・治療を国が援助するのは当然で、日本よりはるかに人口あたりのHIV感染者が多い自己責任の国アメリカでもHIV感染者にはエイズ治療薬補助制度があり、年収の少ない患者の治療費は無料だ。自己負担が高額だと検査や適切な治療を受けない人が増えるだけで、よけいに感染拡大を招くことは海外でも指摘されていて、HIV治療予算の問題を解決するためコピー薬を製造している国もある。性感染症を自己責任というなら予防教育を徹底するべきで、予防教育の妨げになっても青少年のセックスは例外なく処罰するべきという赤枝医師の持論はやはり矛盾している。
青少年を保護する立場から「中学生までは性交をすべきでない」という大人の思いが伝わるよう、条例等に〔中学生のセックスを禁止する〕規定をするべきという意見が〔赤枝医師など〕多数の委員からあった。これに対して条例等による規制を行うことについては、〔妊娠などの問題を周囲に相談できなくなり〕逆効果であるという〔池上千寿子などの〕意見や、あるいは、一定の理解を示しつつも規定の方法によっては「禁止事項故に子どもたちに対する性教育が後退する」ということも懸念され、慎重な対応が必要であるという〔岩室紳也医師などの〕意見があった。
(2004 東京都「青少年の性行動について考える委員会」意見のまとめ)
〔※翌年から「東京都青少年の健全な育成に関する条例」に淫行処罰規定が加えられた〕
これ〔1985年の最高裁判例〕を重く受け止めて、多くの県の県条例では、
「何人も、青少年に対して、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。」
みたいな曖昧な規定の仕方をやめて、金品供与や周旋のあった場合や、脅しや欺罔のあった場合や、単に性欲のはけ口としてだけの目的でセックスする場合などに限定しています。
 なお、実はこのような限定を加えることで、刑法177条の強姦罪の規定との調和を図っています。条例は法律の範囲内でしか定められない(憲法94条)からです。刑法177条では、13歳以上の女子とのセックスは、暴行又は脅迫によらなければ、刑事罰の対象にならないように規定してあります。条例が17歳女子とのセックスを禁止することになると、この法律に反するのではないかという疑いが生じます。この疑いを乗り越えるために、法律と矛盾しないのだよという体裁を整える目的で、上記判例法理と現行の多くの県条例の規定の仕方があるということです。
 ややこしい話になりましたが、このように、「20歳男と17歳女がセックスしたら、男はタイーホ!」と、ただちになるわけでは、ないわけです。
(2009.05.13 インターネット大好き小池さんのブログ)
つまり赤枝医師が刑法の性交同意年齢の引き上げを求めるのは抑止効果ではなく厳罰化が目的で、青少年保護という大義名分とはだいぶ話が違う。

実は現在62歳のビートたけしにも中学生のときに性病になった経験があるのだが、もし番組の収録中にビートたけしが自分自身の話をしても放送されなかっただろうと思われるほど、スタジオの討論の大半は、性教育廃止を叫ぶ三宅久之の若者叩きVS田嶋陽子・家田荘子の女性保護という役柄に単純化されていた。赤枝医師がおおげさなネタ話をしてもスタジオの討論はふりだしに戻され、赤枝医師がまた持論を語るためにさらにおおげさに話を広げるという悪循環だったことが、番組での赤枝医師の発言が不正確な内容ばかりになっていた原因のひとつかもしれない。
──あと病気と言えば、たけしさんには初体験で性病になったという逸話がありましたね。
「うん。あのね。中学生の時にみんなにやらせる女っていうのがいてね。ひどい目にあっちゃった。かっこ悪いでしょう。あんまり多くは語りたくない……」
(2007.01 SIGHT VOL.30 渋谷陽一 北野武)

・関連
→ 赤枝医師の発言の信憑性
→ 抗HIV治療に関するよくある誤解
→ 青少年のセックスは法律で禁止しても減らない
→ 日本で新規エイズ患者数が減らない理由
→ 役に立たない保健の教科書

2017.08.15 Tuesday

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