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2010.01.24 Sunday

不明確な基準で一般人を摘発する表現規制条例

 東京都神奈川県愛知県などでまた条例による表現規制強化が検討されているという。
 従来の青少年条例などによる表現規制は制作者側・販売店側に対する締め付けだったが、近年は一般人に対する規制として単純所持罪やネット利用制限義務化などを求める条例案が多くなっている。警察側にとっては、規制基準が不明確で一般人を対象にした法律のほうが摘発件数を稼ぎやすいという利点もある。
 たとえば愛知県は0歳から30歳までの「青少年」のネット利用等を制限するかのような計画案を発表して非難され、後から説明を補足した。
 ネットで話題になったのは「あいち子ども・若者育成計画2010(仮称)(案)」。青少年の健全育成を行うための案で、ここでの子ども・若者の範囲は、「0歳からおおむね30歳未満」、社会的自立が困難な30代も含まれる、という。
 「あいち子ども・若者育成計画」で最も批判を浴びたのが、未成年と20代30代を同列で扱っているのではないか、という点。「子ども・若者を取り巻く社会環境の健全化」の欄には、
  「子どもや若者の判断力を向上させる教育や、保護者の理解を深める啓発が必要だ」
という提言がある。理由は、残酷な暴力シーンや露骨な性描写のある雑誌やゲームソフトが氾濫しているほか、出会い系などネットに有害情報が流れているため、携帯電話等のフィルタリングを強化することが必要、などと書かれている。
(2010/1/22 J-CASTニュース)
 この「子ども・若者」の範囲は、従来の「青少年」と同じく0歳からおおむね30歳までとしておりますが、施策によってその対象となる者が異なる場合があります。
(愛知県 県民生活部 社会活動推進課 青少年グループ)
 日本キリスト教婦人矯風会などの飲酒を罪とする教義の宗教団体は、大正から昭和にかけて、未成年者飲酒禁止法の対象年齢を「25歳未満」に引き上げる法案を提出し続けていた。つまり未成年者に対する規制をつくってから対象年齢を段階的に引き上げて全年齢に対象を広げる計画は宗教議員による規制強化の常套手段で、補足説明はその場しのぎの言い訳にすぎない。また、他の自治体でも愛知県のような計画案が出される可能性もあるだろう。
「25歳未満者の禁酒法案」とは、大日本帝国議会に提出された「未成年者飲酒禁止法中改正法律案」を指す。これは「未成年者飲酒禁止法」を「飲酒取締法」とし、それまでの取締対象であった「未成年者」を「25歳未満ノ者」へ改正すること等を目的とするもので、大正15年(1926)に提出されていたが成立には至らず、以来、毎議会に提出し続けられたのである。
(2008.08 国税庁 NETWORK租税史料)

 有罪となる基準が不明確な表現規制が話題になっても「自分には関係ないはずだ」「どうせ法律に従うしかないのだから法律ができてから考えればいい」などと無関心な人は多いようだ。しかし販売目的以外で家族の写真をただ持っていただけの一般人が明確な基準もなく逮捕されかねない児童ポルノ法改正案や青少年条例は、拡大解釈や冤罪につながりやすいので一般家庭にも影響がある。また、地方自治体の規制条例が原因で、他の法律の規制基準まで変わってしまうこともある。
 元「写真時代」編集長の末井昭インタビューが、雑誌「d/sign デザイン no.17」に掲載されている。「写真時代」は1981年に白夜書房から創刊された写真雑誌で、荒木経惟や森山大道など著名な写真家の作品を数多く掲載していた。警視庁の考える「猥褻の基準」を守っていたはずの「写真時代」が1988年に猥褻図画販売容疑で警視庁から回収命令を受けて廃刊となった経緯について、以前のインタビューよりさらに詳しく語られている。数年後に出版界はヘアヌード解禁という状況になる時代だったのに、自治体条例による不明確な表現規制強化が、ヘアも出してなかった写真雑誌の摘発につながったらしい。
──『写真時代』は、88年までつづきます。『写真時代』が終わるのは、発禁問題によってですか。
末井 まさかと思ったんです。それまでもぼくは、警視庁に毎月のように呼ばれてたんです。そのころはまだ「警告」というシステムがあって、警視庁の保安一課風紀一係というところが毎月何誌か買ってくれて、エロ度のキツい雑誌の会社に電話して、「おたくの雑誌はちょっとヤバイですよ」と。ヤバイとは言わないか(笑)、「ワイセツ性がある」と。で、言われた日に警視庁に行って、始末書を書くんです。「何ページが不適当だと指摘されました、今後そういうことは一切いたしません」というのを書いて帰ってくるんです。そして次の月、また呼ばれる(笑)。同じことをくり返すわけ。なぜそれがいいかというと、向こうの考えがわかるんですね、ワイセツの基準が。「ここから先はマズいよ」というギリギリの線が読めてくる。そのギリギリの線で、こっちも勝負してますから。
──以下のような気持ちですね。
【僕の場合、ワイセツはいけないという法律をいかに守ってワイセツなことができるか、というアイディアを考えたりすることが好きなので、僕は刑法一七五条というものはあったほうが面白いと思っている】(『素敵なダイナマイト・スキャンダル』)
末井 ところが、ある時期から、地方の婦人団体みたいなところから電話が来ることが多くなったんですよ。「私たちは健全な青少年を育成する会ですけど、おたくの雑誌はどういう方針で編集されてるんですか」って。「え、方針?」方針と言われてもね(笑)。さらに、県条例にもひっかかるようになって、対警視庁との関係だけだったらわかりやすかったんですけど、神奈川県や宮城県から電話がくるみたいになって。そうなると、どこを基準に自主規制すればいいのかがわかんなくなるんです。バクゼンと自主規制しなければいけなくなり、雑誌にもエネルギーがなくなるんです。ちょっと飽きてたし、もうやめたいなぁと思っていたころ、いきなり発禁ですよ。警視庁のこれまでとは違う遊軍みたいな部署から来たんです。そういう部署があるのも、知らなかったから、すごくビックリして。風紀一係もビックリしてるんです。仲良くしてましたから。
(2009.12「d/sign デザイン no.17」P134 末井昭、聞き手=鈴木一誌)

評価:
赤瀬川 原平,木村 裕治,寄藤 文平,中村 勇吾,末井 昭,中谷 礼仁,松田 行正,坂手 洋二,石川 初,喜多 千草,鈴木 一誌
太田出版
¥ 1,944
(2009-12-03)

2017.06.19 Monday

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