<< 条例改正案を読まずに過剰規制を容認するのは危険mainポーランドの「乱交ゲーム」というデマと日本の青少年厳罰論に共通する悪意 >>

2010.05.22 Saturday

2009年のHIV検査件数が減少、新規HIV感染者報告数も減少

 厚生労働省のエイズ動向委員会(委員長・岩本愛吉東京大教授)は12日、国内で2009年に新たに報告されたエイズウイルス(HIV)感染者は1008人、エイズ患者は420人で、計1428人との速報値を発表した。08年の確定値(1545人)比で8%減。03年以降、過去最多を更新し続けていたが、7年ぶりに減少した。
 ただ感染の有無を調べる抗体検査件数は08年から約15%減少しており、これが影響したとみられる。新型インフルエンザ流行でHIVへの関心が薄れたり、啓発不足になっている可能性もあり、厚労省の担当者は「危機感を持っている」と話した。
 感染者・患者の94%は男性。感染経路では同性間の性的接触が62%、異性間が24%だった。ほとんどの年代で感染者は前年より減ったが、30代だけが4%増の581人で、人数も全年代を通じて最も多かった。
(2010.02.12 共同通信)
 〔HIV検査件数の〕減少の理由としては、新型インフルエンザのほか、公共広告機構(現ACジャパン)によるPRが今年6月末で終了した影響も考えられるという。同委員会委員長の岩本愛吉東京大教授(感染症学)は「深刻な事態。12月1日の世界エイズデーのイベントなどを通じ、検査の重要性を周知したい」と話している。
(2009.11.24 読売新聞)
 厚生労働省エイズ動向委員会から2009年の国内の新規HIV感染者・エイズ患者報告数の速報値、東京都福祉保健局から都内の新規HIV感染者・エイズ患者年間報告数が公開されています。それぞれ詳細な年報は例年6〜7月に公開されます。
……
【追記】厚生労働省から2009年の確定値が発表されました。
 厚生労働省のエイズ動向委員会の岩本愛吉委員長(東大医科学研究所教授)は5月27日、2009年のエイズ発生動向の概要について発表した。09年の年間報告(確定値)によると、新規HIV感染者は過去最高だった08年の1126件から105件減の1021件で、新規AIDS患者は過去最高だった08年と同数の431件だった。
 保健所などにおけるHIV抗体検査件数は15万252件で、前年比2万6904件減だった。岩本委員長は、新規HIV感染者の報告数と検査件数の減少について、「一見、同期しているように見えるが、それが本当に同期しているのか、検査が減ったから感染者の報告も減ったのかということに関して、まだ結論付けるのは早いというのが動向委員会の委員の考えだ」と述べた。
 また、新規のHIV感染者とAIDS患者に占めるAIDS患者の割合が、08年の27.7%から09年は29.7%に増加している点について岩本委員長は、「エイズを発症して感染が見つかる方の数が増えている。まず、検査機会などを利用して早めに治療してもらうことが非常に大事と思っている」と強調。
 さらに、地域ブロック別の患者の新規報告数で、「東京を中心とした関東ブロック等では、エイズ報告数は減少あるいは頭打ちの傾向を示しているのに、近畿、九州でエイズとして発見される方々が増えていることは非常に問題が大きい」と述べ、検査機会が十分なのかなど原因を精査する必要性を指摘した。
(2010.05.27 キャリアブレイン)
……

 厚生労働省エイズ動向委員会の発表からは、
  • 新規HIV感染報告数が前年比9%減少(2007年と同程度で過去3番目に高い水準)。
  • 全国保健所等での無料HIV検査件数が前年比16%減少(2007年以前の水準)。相談件数も前年比16%減少。
  • 献血件数は前年比4%増加しているが、献血者中のHIV陽性件数が前年比4%減少した(献血10万件当たりの陽性件数は1.9件で、前年比8%減少)。
  • 検査件数減少により、エイズ発症まで感染に気付かない割合が増加。年齢別では、30代および30歳以上の新規エイズ患者数が増加。
 東京都福祉保健局の発表からは、
  • 都内では新規HIV感染報告数は前年比17%減少したが(2006年と同程度)、新規エイズ患者数は前年比4%増加。
  • 都内では新規HIV感染者数・新規エイズ患者数とも40歳以上が増加し、40歳未満が減少している。
  • 無料HIV検査件数は都内保健所では前年比10%減少、南新宿検査・相談室では前年比6%減少。相談件数も前年比12%減少。
ということがわかります。
前年と比較して、検査件数が約27,000件、相談件数が37,000件減少した。その一因として、新型インフルエンザの影響を受けた可能性は否定できない。
(2010.02.12 エイズ動向委員会 委員長コメント)
 同性間性的接触による報告数は、増加傾向であったが、平成21年は前年と比べ80件減少した。
 異性間性的接触による報告数は、100件弱で推移している。
(2010.03 東京都福祉保健局健康安全部感染症対策課エイズ対策係)
 実際には病院などでHIV検査を受けている人のほうが多いとはいえ、保健所等で自発的に無料HIV検査・性病検査を受ける人のほうがHIV陽性率が高いので、保健所等でのHIV検査件数の減少と連動して新規HIV感染報告数が減るのは良くない傾向です。地域差はありますが、全国的にこの傾向が続くとエイズ発症まで感染に気付かない割合が高くなり、感染拡大につながります。
 たとえば東京都エイズ専門家会議の報告では、保健所等での無料HIV検査の受検者の約8割が40歳未満とされていました。ところが2009年の都内の新規エイズ患者は約6割が40歳以上です。
 昨年全国的に保健所等でのHIV検査件数や電話相談件数が減少したのは、テレビCMが終了したことと、新型インフルエンザ対策の影響で、無料HIV検査の日程や啓発が減ったことが原因とされています。たとえば毎年12月は世界エイズデーのキャンペーンで検査件数が多いのですが、2009年は例年より減少しています。
 そして昨年のHIV感染報告数が減った影響で今年はニュースなどでHIVについて扱われる機会も少なくなっているようです。しかし、これまでHIV感染者数増加というニュースはメディアでは単に不安を煽る若者叩きネタや感染者差別の道具として使われることも多かったので、ただメディアに露出すればHIV検査件数が増えるとは思えません。
 地方の保健所では、定期的な無料HIV検査を平日月1〜2回、数時間しか行わない傾向があるので、数年前まで年間HIV検査件数は横ばいの地域が多かったのですが、週末などにも臨時無料HIV検査・性病検査を不定期に行うことで、2008年の保健所等でのHIV検査件数は2002年の約3倍に増加していました。2003年から2008年まで日本でHIV感染報告が増え続けていたのは、全国の保健所が無料HIV検査・性病検査の日程を増やした効果も大きかったはずです。
 全国で唯一毎日無料HIV検査を行っているため検査件数の増減が少ない東京都南新宿検査・相談室でも、昨年の検査件数は過去6年間で最も少なかったようですが、HIV検査件数を増やすにはやはりまた全国的に無料HIV検査の日程や啓発を増やしていく必要があるでしょう。
 ちなみに厚生労働省とエイズ予防財団では2007年から5年間でHIV抗体検査受検者を2倍にするという目標で研究事業を行っているらしいのですが、2008年に大阪で実験的に啓発広告キャンペーンを行った際にはせっかく検査希望者が増えたのに全員が無料HIV検査が受けられる環境を用意してなかったそうです。
 また、本研究のキャンペーンに伴って、受検者数の大きな増加が認められたために、大阪府内等で、検査体制のキャパシティを超える状況が生じた。
(エイズ予防のための戦略研究 _ 研究課題2 平成20年度報告書)

 さて、日本赤十字は昨年まで献血者のHIV陽性率の微増の要因を献血者だけのせいにした「検査目的で献血する人が増加」というコメント発表を毎年続けていて、2005年の献血者のHIV陽性率が減少したときは「検査目的の献血が減少」と発表していたようですが、2009年の献血者のHIV陽性率が微減したことについてはなにもコメント発表しないようです。日本赤十字の統計によれば、梅毒などによる献血不合格数と比較してもHIVが理由の献血不合格数は極端に少なく、HIV以外の原因を含めた検査不合格率も減少が続いているので、事前の問診で嘘をついて故意に検査目的で献血する人が現実に問題になるほど多かったとは思えません。
 もともと日本の献血者のHIV陽性率は、妊婦のHIV陽性率の半分以下で、それほど高くありませんでした。都内保健所の統計を見ても、保健所等で自発的に無料HIV検査を受ける層のHIV陽性率は、献血者全体のHIV陽性率の100倍以上も高率です。
 これまで献血常連者からHIV陽性が出ていたこともわかっているのに、日本赤十字が「感染の疑いがある方は、絶対に献血しないで下さい」という発表しか行ってなかったのは的外れです。昔から指摘されているように、日本赤十字が献血前の問診で、献血者がコンドームを使用しているか確認し、献血者にコンドームの必要性を周知すれば、HIVなど性感染症による献血不合格率はさらに減らすことができるはずです。

・関連
→ 日本赤十字社は献血の問診項目を変更するべきだ
→ 「HIV検査目的の献血」は本当に多いのか
→ 日本で新規エイズ患者数が減らない理由

2017.11.05 Sunday

スポンサーサイト

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック
 このページの先頭へ