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2010.06.02 Wednesday

ポーランドの「乱交ゲーム」というデマと日本の青少年厳罰論に共通する悪意

 人口の95%がカトリック信者で、緊急避妊薬(アフターピル)も中絶手術も法律で禁止されていて、昔から平均初婚年齢が早い、ガチガチのキリスト教国・ポーランドでも、他国と同様に若年妊娠は社会問題になっています。現在のポーランドは他国よりも性教育開始年齢が遅いらしいので、対応するためには早期性教育が求められるはずです。ところが、性教育は聖書に反する行為と考え性教育の必要性を認めないキリスト教原理主義者は「普通のカトリック信者の中学生の妊娠が増加」という事実から目をそらし、原因探しを「不道徳な若者の宗教離れ」的な論調にすりかえるために「中学生が乱交ゲーム『太陽と月』で妊娠」というデマをでっちあげて妊娠した少女たちを中傷しているのでしょう。同じ地域で学生が妊娠したことが話題になると、根拠なく「あの子は悪い遊びをしてた」というデマを捏造する大人は日本にもよくいますよね。
 案件を担当している警察のTomasz Klimekさんは、1つの学校で少女が5人妊娠したということは事実とした上で、乱交騒ぎはあくまでゴシップであると噂を否定。すべての生徒はちゃんとした相手がおり、将来的には家族を作ることを保証するとしました。この案件について警察は捜査を行っていますが、乱交についてではなく、違法である15歳以下の少女との性交があったのではないかということの捜査だそうです。
 「性教育はタブー視されがちですが、封じ込めれば封じ込めるほど若者は冒険に走ったり反対のことをしでかしたりします。ちゃんと性教育を受ければ状況は改善するでしょう」と性科学を研究するZbigniew Izdebski教授は語っています。
(2010.06.01 GIGAZINE)
 この記事でも、ポーランドでは15歳以下の男女の性交は違法と書かれています。また、ポーランドでは法的には結婚が可能な年齢は女性18歳・男性21歳が原則(ただし妊娠した場合などは女性16歳・男性18歳で結婚可能)。テレビ放送まで厳格に年齢区分されているポーランドですが、法規制や宗教道徳だけでは現実の青少年の性行動を変えることはできなかったわけです。
 また、ポーランドでは各テレビ番組に年齢制限がつけられていて、画面の隅に特殊な記号が表示される。それぞれの記号を見れば、その番組がどの年齢層に適した番組なのか明確にわかるようになっている。2005年に改正された定義では、以前にも増して詳しい区別がされるようになってきた。
(2006 「ポーランドにおける日本アニメと漫画」 中西めぐみ)
〔ポーランドでは、小学校から高校まで〕学校は知識やマナーを教えるところとされ、家庭でマナーや倫理観、精神的に善良な人間になるための教育をする。
(2009.03 外務省 諸外国の学校情報 ポーランド)
 ポーランドの保守政権は28日、同性愛を推奨する表現が見られるとして、幼児向けテレビ番組『テレタビーズ』に批判の矛先を向けた。
(2007.05.28 ロイター エキサイトニュース)

 さて、このような中傷による魔女狩りは遠い外国だけの出来事ではなく、日本でも昔から青少年規制論者は同じような言説で未成年を中傷しています。
 2003年の東京都議会では公明党の議員が「エイズは天罰」という趣旨の発言をした後、若年層のHIV感染者を中傷する言説を引用したことがありました。5年後の2008年に東京都エイズ専門家会議がまとめた最終報告を見てもわかるように、この公明党議員が引用した赤枝医師のHIV感染者に対する独自見解は現実とはかけ離れています。日本では感染症法によってHIV感染者・エイズ患者は全数報告が義務づけられていますが、実際には10代女性のHIV感染者は数年に1人、10代女性のエイズ患者は過去25年間で1人しかいません。そしてHIV感染者はイギリスやオーストラリアなど法規制の厳しい宗教国のほうが大幅に増加しています。
〇三十九番(中嶋義雄君) 知事は、今定例会の所信表明におきまして、エイズ問題に触れられました。
 かつて清水幾太郎氏は、古来からの天譴思想を紹介し、日本人にとって地震は世の混乱を正す天の譴責であったと書いたことがございます。それに倣っていえば、エイズこそまさに天譴であるのかもしれません。
 それはともかく、近年、エイズへの関心が低下しておりますが、知事が指摘するとおり、事態は深刻でございます。献血からエイズ感染が発見される割合は依然として高く、また、先進国の中でエイズ感染者の増加率が上昇している国は日本のみでございます。
 こうした指摘を通して、長年、エイズ問題の深刻さを訴え、ボランティアで無料相談やエイズ検査を行ってきたのが、赤枝六本木診療所の赤枝恒雄医師でございます。マスコミ等でも紹介され、ご存じの方も多いかもしれませんが、昨年、公明党の女性局が同医師を訪問し、私も二十一日の日曜日に訪ねてまいりました。赤枝医師から聞かされたエイズ問題の実態には、身の毛のよだつ思いがいたします。
 同医師によりますと、二十五歳以上のエイズ感染者はほとんどが男性であるのに対し、二十歳から二十四歳までは約六〇%が女性であり、十代ではそれが約七〇%に上るといいます。しかも、十代の女性の感染者の多くは中学生や高校生であり、いわゆる援助交際という名の売春行為でエイズに感染し、親に相談するわけにもいかず、したがって公的な助成等は一切受けられません。
(2003 東京都議会第3回定例会会議録)
 2010年5月18日、東京都議会の総務委員会で東京都青少年健全育成条例改正案に対する参考人意見聴取が行われ、規制派と反対派それぞれ2名づつ参考人が発言しました。規制に賛成する参考人のひとりとして登場した赤枝医師はいつもの調子で、もともと18歳以上だけしか購入できないように区分陳列されているアダルトビデオに関する独自見解や、未成年の性行為についての独自見解など、持論を披露していたそうです。しかし成人指定商品の区分陳列については、現行の青少年条例に基づいて各販売店への調査・指導が毎月行われています。条例改正案に対する意見聴取の場で今回の改正案の内容とはかけ離れた話ばかりしていた赤枝医師がどういう意図で規制に賛成しているのかよくわからないという感想を持った人も多いようです。
漫画の影響によって「女の子を選ぶ基準がブスでもいいからやらせてくれる子」「日本はレイプ地獄」となったと主張し、都条例改正案を正当化している赤枝恒雄氏は、マスコミに度々登場しているので知っている方も多いかと思います。この産婦人科医師は昔から「10代の中絶・性病を撲滅する為に漫画の性描写を法規制するべきだ」という自論を唱えており、規制派の政治家・官僚・マスコミ関係者らに重宝がられています。
(2010.5 東京都青少年健全育成条例改正問題のまとめサイト)
参考人として出席した産婦人科医は、性病に感染する小中学生が急激に増えていることを挙げて、「子供らはだいたい漫画を持っている。もう待てないほど急ぐ問題。子供を守るための指針がほしい」と話し、条例の改正を求めました。
(2010.5.18 テレ朝news)(sd-m.jp)
 同じく賛成派で六本木で産婦人科医院を開業する赤枝恒雄医師は「反対派は現実を見ていない。子供たちはセックスを『面白い、楽しい』という情報だけで行っている」と、現場の目線から報告。
 その上で、子供の性病や中絶の多さを示し、「アダルトビデオの婦女暴行ものは女性も喜ぶという内容で、成人向け漫画も性行為をオーバーに伝えている。メディアリテラシーを育てるために規制はいけないとはとんでもない」と改正案の早期施行を訴えた。
(2010.5.19 産経新聞)
山口拓(民主)理事質疑
 山口:厚労省の定点観測によると性感染症は増えていないが
 赤枝:インフルエンザと違って子どもが親に保険証を借りられないため病院に行けない。したがって定点観測では議論できない。我々がやっている無料検査でやっとデータが出る。
(2010.05.19 草冠に西 都議会総務委員会傍聴記 参考人赤枝恒雄氏の意見聴取)
…………
【追記】
 2007年から港区が行っている事業により、港区内の拠点病院では誰でも匿名・無料で性病検査が受けられるので、赤枝医師の「〔保険証やお金の問題で〕定点観測になっているきちんとした病院に、子どもたちがやっぱり行けない」発言は、港区の実態とは違います。
 赤枝六本木診療所赤枝議員のHPでは、この港区の無料性病検査事業(AIチェック)を赤枝医師の功績としています。
 ところが赤枝医師はなぜかAIチェック開始後も、取材が来るときだけ不定期に行う赤枝医師の無料検査しか港区に存在しないように思わせる発言を続けているため、赤枝医師が出演したテレビ番組では港区の無料性病検査事業は紹介されません。
…………

 厚生労働省の統計では2003年以降は未成年の性病は減っていて、東京都内の保健所などで全年齢合計年間1.5万人(男性9千人・女性6千人)が受けている匿名・無料の性病検査でも女性の陽性率は減少しています。だから赤枝参考人は発言後の質疑でも都議から独自見解の信憑性について指摘されたのですが、テレビ朝日と産経新聞はなぜか赤枝医師の独自見解をそのまま報道しています。どこで検査を受けたとしても抗生物質による性感染症治療薬の購入には医師の処方箋が必要で、赤枝説は不自然です。
 赤枝医師はどこで発言するときも独自見解による数値を多用しますが、厚生労働省や自治体保健課が集計した統計値はほとんど引用しません。つまり昔から自民・公明は青少年規制に都合のいい都市伝説を議会に持ち込む道具として、厳罰論者の赤枝医師を利用しているのでしょう。
 赤枝医師の持論である性交同意年齢引き上げ・未成年性交罰則化は、現実には性交した少女の負担を増やすだけで青少年のためにならないので、赤枝と同じ立場の医師からも過去に何度も目の前で反論されていますが、赤枝医師は他人の話には耳を貸さずどんどん極端な厳罰論者になっています。もしかすると赤枝医師は、「エイズは天罰」という宗教的発言をした議員と同じような信念を持っているのかもしれません。

・関連
→ 宗教右翼を煽動したジェリー・ファウエルの残した妄言
→ 赤枝医師の発言の信憑性
→ TVタックルで性感染症自己責任論
→ 条例改正案を読まずに過剰規制を容認するのは危険
→ 不明確な基準で一般人を摘発する表現規制条例
→ 青少年のセックスは法律で禁止しても減らない


2017.08.15 Tuesday

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ナイーブなエコとナイーブな反エコ http://anond.hatelabo.jp/20100605195535 個人にできるエコって何なんだろう、と考えると意外とできることはない 都市に住んでいれば鉄道への依存度は高いので元からCO2排出は少ない これ以上減らそうと思っても鉄道会社にVVVF車
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