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2011.06.19 Sunday

法輪功が捏造した「陰性エイズ」デマを夕刊フジが拡散

 病気ではないのに自分は重病だと思い込んで症状を訴え続ける心気症は、昔から世界中によくある心の病気(身体表現性障害)のひとつです。HIV検査を受けて感染してないことがわかっても「自分は感染してる」と思い込み続ける、いわゆるエイズノイローゼも心気症にあてはまることが多いようです。
 医者に病気ではないと診断されたのに「現代医学でもわからない奇病」などと思い込んでしまう場合は、心療内科・精神科で適切な診療を受け不安を取り除くべきなのですが、インチキ宗教やニセ医療のカモにされてしまう人もいるようです。
 医療や進化論を否定するカルト宗教団体「法輪功」の広報紙である「大紀元」が、数年前から「中国でエイズによく似た奇病」というデタラメな噂を広めていることはネットで話題になっていました。この噂については中国衛生省も自称患者たちの調査を行い「心理的な要因だ」という調査結果を今年の4月に発表しました。しかし、法輪功系メディアの大紀元や新唐人電視台はその報道を「未知のウイルス」「陰性エイズ」というデマにすりかえ、そのデマをなぜかチャンネル桜夕刊フジが日本で拡散しているようです。
 「夕刊フジが取材した」という2人の自称感染者の証言はまさに心の病気を疑われる内容で、奇病とは思えません。Aさんは「大学病院や総合病院、泌尿器科や性病科など30件ほど回ったが、原因は不明。心療内科にも行ったが『問題なし』」と証言していますが、たいした症状もないのに奇病だと思い込み仕事を辞めて異様な数の病院をまわってる人が心の病気を疑われないのは不自然です。この夕刊フジの取材ネタはチャンネル桜に出演してる坂東忠信という人のブログの5月の記事と酷似しているのですが、ブログ記事には「未知のウイルス」の元ネタが「大紀元」だということも明記されてます。さらにブログ記事ではこの自称感染者のできものはひどい症状ではなく「心療内科も3軒回った」とか「薬は効かないが健康食品が効く」と主張していることも書かれていますが、特定の健康食品だけが症状を軽減させるなんて宣伝する自称感染者たちの話は、半信半疑の読者もさすがにガセネタだと気付くでしょう。
 つまり夕刊フジの記者は「陰性エイズ」がどうしようもないガセネタだとわかってるはずなのに、元記事のヘタな嘘をごまかしたうえで、わざと「コンドームで防御できず?」なんて見出しで煽っているのです。
夕刊フジ2011年6月19日 中国を中心に、エイズに似た症状を訴えながら、検査では「陰性」と判定される患者が相次ぎ、「陰滋病」(陰性エイズ)として話題になっている。中国衛生省は「心理的な要因だ」としているが、新型肺炎SARSに立ち向かった中国の著名医師も研究を始めた。
(2011.06.18 夕刊フジ)
何百人という中国人が、自分がHIVに似た症状の新型疾患にかかったかもしれないと思う一方で、医師は、彼らの病気は身体的なものというより、むしろある精神的病状の結果ではないかと考えています。
(中国に広がる「HIV恐怖症」 BBCニュース 上海 クリス・ホッグ)
上記の症状一覧を見ての私の最初の印象は「あまりエイズに似ていない」。いわゆるエイズ(後天性免疫不全症候群)は、通常、HIVに感染してから数年間経ってから起こるため、「初期症状が主に性行為の後に出る」という点で決定的に異なる。強いて言えば、HIV感染後の急性期に起こる「HIV初感染症候群」に似てなくもない。HIV初感染症候群の臨床症状は伝染性単核球症に似ているとされている。伝染性単核球症の典型的な症状は発熱、咽頭痛、リンパ節腫脹である。通常の風邪と区別がつかないこともあるとされる。要するに、HIV感染だけに見られる急性期の特別な症状はない。何より、急性期の症状は、数日から数週間で治癒するのがほとんどである。感染を心配している日本人のブログによれば、少なくとも数ヶ月は症状が持続している。自然治癒する疾患であれば、怪病として恐れられたりしないだろう。
未知のウイルスによるものという可能性はどうだろうか。SARS(重症急性呼吸器症候群)流行のときに、中国政府の対応は、WHOへの報告が遅れるなどの問題点があった。今回の件でも、中国政府が情報を隠蔽しているかもしれないという懸念が、「注意喚起」を目的とした情報拡散の一因になっているようである。しかし、上記引用している記事の日付は2009年6月である。ほぼ1年前である。もし、「感染経路も極めて多様で、そのスピードの速さには広範囲の感染被害が憂慮される」ような未知のウイルスが存在するならば、1年間近くもWHOなどの公的機関が気付かないなんてことがありうるだろうか? WHOには、中国政府の情報隠蔽に協力する動機はない。唾液や汗などでも感染するような「感染力の強い未知のウイルス」が事実だとしたら、何らかの陰謀論でも持ち出さない限り説明できない。
(2010.05.24 エイズに似た怪病が中国で急速に拡散しているという話はたぶんガセ - NATROMの日記)
心気症は、身体症状または身体機能に対して重病にかかっているのではないかという恐怖や考えにとらわれてしまう障害で、内科や外科を受診し適切な医学的評価や説明を受けても、現代医学でもわからない奇病にかかっているなどといった考えが持続します。規則的な身体的診察が日常生活の障害を防ぐために有用です。
(主な疾患と症状 外苑メンタルクリニック)
Q95 エイズノイローゼとは何か
A HIVに感染したのではないかという不安に始終つきまとわれて、HIV抗体検査結果が陰性であっても、その不安が解消されない人の場合や検査結果が陽性になるのではないかと心配するあまり検査を受けずに悶々とし精神的に大変不安定になる人の場合等をさす。
 前者の場合には、性格的に神経症タイプの人がなる場合や強迫神経症等の神経症の場合、心因反応や精神分裂症のエイズ妄想の場合等が考えられる。これらの場合には、神経科や精神科等での専門的治療を要することが多い。
 後者の場合は、心配性の人がなることが多く、検査を受けて不安を解消するよう時間をかけてくり返し勧めることが望まれる。
(厚生労働省 エイズ相談マニュアル)

 おかしなデマが中国で広まるのは、中国政府の感染症政策と情報隠蔽体質への不信感があるからだとしても、日本のメディアまでこんなデマ拡散に加担しているのは残念です。
 法輪功は2008年にも「中国でエイズスイカ」という差別的なデマを拡散したことで知られています。現実にはもしHIV感染者の血液を注射した食べ物を出荷しても、食べた人がHIV感染する可能性はありません。このデマに類似したバカ設定の、HIV感染者の血液を牛乳に入れて飲ませるという日本の小説「告白」も、読者の誤解を招く描写だと批判されていました。
HIVの感染は、通常血液同士の接触か、性交渉以外では成立しません。勿論ウイルスを多量に含む血液を大量に飲めば、口の粘膜からウイルスが侵入する可能性はありますが、牛乳に混入した程度では感染成立の可能性は、殆ど存在しないでしょう。お母さんの母乳からお子さんに感染した事例はあるのですが、それは量が大量であることと、赤ちゃんの胃腸の免疫機能が、まだ未熟であるためと考えられます。
おまけにこのパートナーは、HIV感染症の治療中なのです。治療中の血液には、もうウイルスは殆どない筈です。従って、感染する可能性も更に低下するのです。
ここまで読んで頂ければ、この方法が実現可能性は殆どないのに、「HIV患者の血液は毒である」という、嫌な気分だけを残し、ある種の誤った病気への感覚を、助長する役割しか果たさないということが、お分かり頂けるのではないか、と思います。
(2009.04.23 「告白」の嘘(ネタばれ注意):六号通り診療所所長のブログ)
 中国当局の統計では、人口13億の中国で、少なくとも74万人のHIV感染者やエイズ患者が存在するが、実際は当局の数字より、さらに多いとみられる。
 こうした人びとは、長い間、偏見や差別にさらされてきた。だが、最近では政府が公にHIV感染の予防を呼びかけていることもあり、HIV感染者らを取り巻く状況は改善しつつある。
 しかし、ILOが18日に発表した報告書によると、中国の医療機関におけるHIV感染者差別はなくなっていない。その主要因は2つある。
 多くの総合病院では、HIV陽性者というだけで患者を自動的に感染症専門の病院に押し付けている。だが、専門医療機関が受け入れるのは、HIV/AIDS治療が目的の患者のみで、HIV/AIDSと直接の関係がない症状の治療は行っていない。
 さらに、中国の病院の多くは利益を優先するため、病院の経営者らが、HIV感染者を治療すれば、これを知った人びとが具合が悪くなった時に他の病院に行ってしまうと恐れていると、報告書は指摘している。
(2011.05.18 中国の病院で門前払いのHIV/AIDS患者たち、ILO報告書 AFPBB News)

・関連
→ デタラメなエイズ噂話をネタにした週刊誌の記事
→ HIV感染者への偏見を広める夜回り先生の被害妄想
→ 抗HIV治療に関するよくある誤解
→ エイズ偏見で韓国HIV感染者の死因の約3割が自殺

2017.08.15 Tuesday

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コメント
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  • 2011/08/28 5:58 PM
やべぇな
  • うはぁ
  • 2012/03/24 10:42 AM
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