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2017.06.17 Saturday

今後排除される危険性があるのは性犯罪を扱う創作物だけではない

 昭和の治安維持法と同様、現実の犯罪を実行していない一般人でも、犯罪っぽいことを計画したとみなされただけで処罰の対象になりかねない共謀罪は、過去に繰り返し国会で審議され廃案になってきた経緯があります。ところが今国会では「組織犯罪処罰法改正案」に「テロ等準備罪」を新設する名目なのにテロとは無関係に対象犯罪を大幅に拡大した法案として提出され、政府の趣旨説明も一貫しないまま、衆議院では強行採決、参議院では委員会を省略する異例の「中間報告」で採決を強行され成立してしまいました。
 過去の国会で議員として共謀罪審議に関わっていた保坂世田谷区長のブログでは、成立した共謀罪の多くの問題点がわかりやすく指摘されています。
保坂 じゃあ、「等」とはなにかというと、テロを除くすべての組織的犯罪だというわけです。「等」のところが非常に多い。外務省は「テロ等準備罪」という言葉を使わないんですよ。「計画罪」という言い方をしています。これはあまりにも、矛盾があるからですね。ここには、印象操作があると思います。
「テロ等準備罪」と聞くと、多くの人は一本の法律ができるんだと勘違いします。「テロを共謀の段階で取り締まる一本の法律」というイメージです。実際には、爆弾や生物化学兵器などのテロに対しての共謀罪とか予備罪は、すでに日本にはある。そのことをちゃんと理解する必要があります。
(2017.05.02 保坂展人 鈴木耕 矛盾だらけの「共謀罪答弁」と「テロ等準備罪」という印象操作(対談・動画))
金田法務大臣は「一般の人は捜査の対象とならない」と述べながら、盛山法務副大臣は、「捜査上、一般の人を対象とした調査はありえる」としていて、答弁は食い違っています。これまでの政府の説明は、「組織的犯罪集団を対象とするもので、およそ一般の人が対象になるものではない」というものでしたが、「組織的犯罪集団」の定義や範囲が、大きな論点となります。「正当な目的で活動する団体でも、変質して組織的犯罪集団となる場合がある」とも言われています。
(2017.04.24 保坂展人 「277の共謀罪」に「テロ等準備罪」がないのはなぜか?)
ここからが問題です。「一般の人」と自他共に認識している人であっても、「組織的犯罪集団との関与」が疑われる事態となり捜査対象となった段階で、「一般の人」ではなくなる。つまり、捜査対象となったのは「非・一般の人」なので、「一般の人」を捜査対象としたことにはならないという理屈です。金田大臣の答弁を分解するなら、「仮に、組織的犯罪主集団に関わる者として『一般の人』の人が捜査対象になったと考えると、その時点で『一般の人』とは呼べない存在になるから、あくまで『一般の人』は無関係である」という論旨が答弁の本質なのではないでしょうか。
(2017.05.10 保坂展人 共謀罪の対象ではない「一般の人」はどこにいるのか?)
 「犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定したので一般人は処罰対象にならない」としていた点も今月に入って説明が変わった。一日の参院法務委で金田勝年法相は「組織的犯罪集団と関わりがある周辺者が処罰されることもあり得る」と答弁を一転。林氏も「構成員以外を一般人というのなら、一般人が計画に参画することはあり得る」と認めた。
(2017.06.14 東京新聞)

 恣意的な運用の危険性が指摘されているにもかかわらず、法案を審議する国会では、野党議員に自民党の土屋正忠理事が「テロ行為だ」とヤジを飛ばしていました。どういうつもりなのでしょうか。
 「共謀罪」法案を審議した二十一日の衆院法務委員会で、法務省の林真琴刑事局長の席に詰め寄った民進党議員に、自民党の土屋正忠理事が「テロ行為だ」とヤジを飛ばしたとして、民進、共産両党が抗議した。
(2017.04.22 東京新聞)

 そして共謀罪の成立と同じ日に埼玉県警は、複数の性犯罪で逮捕されていた性犯罪者が1件の犯行について「(著作権者に無許可でネットに公開されていた)成人向けの同人漫画をまねてやった」と供述したことを理由に、その性犯罪者とは面識がない漫画家の自宅を訪問、法的根拠もないのに漫画家側に対して「作品内容が模倣されない配慮」などを要請し「少女が性的被害に遭うような漫画は今後書かない」との返答があったとして「(他の事件でも)同様のケースがあれば今後も申し入れを検討する」意向を複数の新聞社に伝えました。どういうつもりなのでしょうか。
 県警は今月7日に漫画家を訪ね、作品内容が模倣されないような配慮と、作中の行為が犯罪に当たると注意喚起を促すことなどを要請した。漫画家は「少女が性的被害に遭うような漫画は今後描かない」と了承したという。県警幹部は「表現の自由との兼ね合いもあり難しいが、社会に与える影響を考慮した。同様のケースがあれば今後も申し入れを検討する」としている。
(2017.06.14 毎日新聞)

 もし犯罪者が手口を模倣する可能性が本当に問題なら、この新聞記事などで事件の手口を公開することにも同じ問題があるはずです。なぜ漫画家だけ自粛要請されたのでしょうか。
 弁護士など多くの人が埼玉県警の行動について疑問を呈していますが、暴力的な漫画を描いていた漫画家が配慮を求められるのは当然であるかのように警察の圧力を擁護する人もいるようです。しかしこの性犯罪者は漫画に描かれていた手口以外でも複数の性犯罪で起訴されている常習犯であり、漫画を排除すれば性犯罪を犯さなくなるわけではありません。そして、どの新聞社の記事を見ても埼玉県警は「エロ漫画限定で自粛要請する」とは言っていません。警察は「申し入れ」圧力の前例作りとしてエロ漫画家を利用したかっただけです。
 2009年には、警察がコンビニに対して暴力団を扱った漫画の取り扱い自粛要請を行った前例もありました。極端な対象を選びながらじわじわと前例を踏み越え、治安維持法があった時代のように、すべての出版物について憲法違反の検閲を正当化しようとしているようにも見えます。
 刑法学者で、共謀罪に反対の論陣を張ったことでも知られる京都大学・高山佳奈子教授は「表現の自由に対する重大な脅威」と懸念を表明。AERA dot.の取材に「性表現は弾圧されやすいが、同じ理屈ならミステリー小説やホラーなども規制されるべきことになってしまう」とコメントし、また「そもそも有害図書等規制が行われている趣旨は“子どもがまねをする”ためで、大人はまねをしないことが大前提。(表現物を)勝手にまねをする大人が出ても、それは100%その個人の責任」と、容疑者の供述に何ら正当性がないことを強調する。
(2017.06.15 AERA dot. 佐藤圭亮)
 この〔福岡県警から福岡県コンビニエンスストア等防犯協会への〕要請書には、「これらは暴力団を美化する風潮があり、青少年が誤った憧れを抱き、暴力団に加入してしまう恐れがあることから、売り場からの撤去を検討すべきだと考えている。ご理解の上、適切な措置をお願いしたい」とあった。
(「暴力団排除」と言論規制/宮崎 学)

 2017年の国会では禁欲教育論者の自民党・赤枝恒雄衆院議員が、青少年同士の出産問題を扱った性描写のない漫画原作の映画「コドモのコドモ」を名指しして、別のドラマの話と混同させるように映画とは異なる内容を語り、悪影響だと中傷していました。「コドモのコドモ」は原作漫画にも映画にもいっさい性描写がない作品ですが、映画が公開された2008年当時に、元「世界日報」記者で、安倍晋三・岡崎久彦の対談本「この国を守る決意」の編集者で、「新しい歴史教科書をつくる会」元理事で、「美しい日本をつくる会」代表だった純潔教育論者の桜井裕子らがチャンネル桜などで誇張した解釈をもとに批判を行っていたため、いまだにデタラメな伝聞情報だけで中傷され続けているようです。
 以前から性教育弾圧を行ってきた自民党は宗教色の強い青少年政策を推進し、表現規制を強める「青少年健全育成基本法案」も繰り返し提出しているので、今後は警察がこのようなカルト議員の指示で、性教育的な趣旨であっても青少年の出産問題を扱う創作物全般に自粛を求めるような危険性も考えられます。
 社会の中のいろいろなメディアも悪いんですけれども、「十四才の母」なんていう大ヒットしたテレビ番組があったんですね。「十四才の母」、これはよくできていました、ストーリーが。塾に行って、塾に行っているということで、ちょっと遊んでいて、女の子とたまたま川に入っちゃって、ぬれたから乾かそうと思って小屋に入ったら、そういう関係になっちゃったということ。僕たちこれでいいの、いいのと言いながらしちゃっているんですけれども。
 それから「コドモのコドモ」という、これは小学生同士が、くっつけっこというのがはやった時期があるんですよ。くっつけっこをやったときに、やはりできちゃった。
 今言ったとおり、日本では合法ですよ、十四歳のセックスは。ところが、外国、八十九カ国は、十四歳の性行為はレイプ事件ですよ。ましてや小学生は。しかし、日本ではそれは認められていて、こういうメディアの番組の悪いのは、そういう、子供たちが性行為をして、結末はみんなハッピーエンドです。最初は親は反対していた、ずっと。おろしなさい。病院まで行った。だけれども、子供は逃げて帰ってきて、嫌だ、産みたい。親も反対していたけれども、産んだ。その後は、おじいちゃんもおばあちゃんも子供を愛してくれて、ハッピーエンド。
 僕は、こういう余り好ましくない行為自体がハッピーエンドで終わっているというのは、子供たちに対する影響も余りよくない。
(2017.02.22 赤枝恒雄衆院議員 第193回国会 予算委員会第三分科会)
「コドモノコドモ」という映画です。これはフィクションですが、11歳、小学校5年生の春菜ちゃんという子が子供を産むというものです。ランドセルを背負った小学校5年生が子供を産むというストーリーでございますけれども、日本ではこれまで「14歳の母」というテレビドラマがございました。
(2008.09.28 桜井裕子)

・関連
→ 小池百合子と表現規制を推進する宗教組織と高橋史朗の関係
→ 赤枝恒雄議員は以前から問題発言の多い自己責任論者(過去発言まとめ)
→ 赤枝医師の発言の信憑性
→ TVタックルで性感染症自己責任論
→ 集票に利用される宗教と政治家を利用する宗教

2017.08.15 Tuesday

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