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2009.01.29 Thursday

日本で新規エイズ患者数が減らない理由

 東京の実情に見合ったエイズ対策を検討する「東京都エイズ専門家会議」(座長・木村哲東京逓信病院長)は24日、「都内におけるエイズの現状〜現在の課題と今後の方向性」と題する最終報告書をまとめた。同会議は92年から毎年開かれているが、報告書をまとめたのは初めて。都は最終報告書を受け、今年度内に「エイズ対策推進計画」(仮称)を策定する。
(2008.12.25 毎日新聞)
 東京都のエイズ専門家会議は12月24日、事務局が示した最終報告案を大筋で了承した。都の取り組むべき課題として、エイズおよびHIV感染に対する社会的な理解の促進や、感染拡大の防止に向けた重点的な予防対策、陽性者への支援を挙げている。都はこの日出た委員らの意見を同案に反映させた上で、来年1月中に最終報告を公表する予定。
 同案によると、全国のHIV感染者、エイズ患者報告数の3分の1が東京都に集中している。国籍別・性別では、日本人男性が約9割で、感染経路別では、同性間性的接触が約7割を占める。また、年齢別では、HIV感染者の約9割を20-30歳代が占め、エイズについては40歳代以上で発症し、診断される割合が高い。
 同案は、入院から外来中心に移行し、陽性者が働き続けながら治療を受けられる環境づくりが重要であることや、陽性者の予後が長期化し、長期の服薬や高齢化によるさまざまな健康問題の顕在化が懸念され、療養支援の必要性が増していることなども指摘している。
 その上で、エイズ対策の課題として、▽幅広い年齢層に感染が見られる一方で、正確な知識や情報がいまだ十分行き届いていない▽同性愛者など、特にターゲットを絞って感染予防を促すべき層がある▽陽性者の予後が長期化するに伴い、診療体制や療養に関するさまざまな課題が生じている―などを指摘。都が今後、自ら取り組むべき対策としては、エイズおよびHIV感染に対する社会的な理解の促進、感染拡大の防止に向けた重点的な予防対策、陽性者への支援を挙げている。
(2008.12.24 医療介護CBニュース)
東京都福祉保健局のページで、東京都エイズ専門家会議による最終報告が公開されている。この報告では東京のエイズの現状や諸外国の動向が分析されていて、「資料編(6)」では先進諸国における人口100万人当たりの新規HIV感染者及びエイズ患者報告数も比較されている。
先進諸国における人口100万人当たりのHIV感染者及びエイズ患者報告数
先進諸国における人口100万人当たりのHIV感染者及びエイズ患者報告数
(東京都エイズ専門家会議「東京都におけるエイズの現状〜現在の課題と今後の方向性〜」)
西欧諸国の動向を比較したグラフを見てすぐわかるように、イギリスなどでは日本以上に新規HIV感染者が増えている。しかし、HIV感染報告数が増加している国でも新規エイズ患者報告数は激減しており、このグラフで新規エイズ患者が増加傾向なのは日本だけだ。イギリスの新規HIV感染者数が特に多いのは、先進国では珍しく新規HIV感染者の半数以上が女性で、異性間の性的接触によるHIV感染報告数が多いことが原因。オーストラリアやアメリカでも異性間HIV感染の割合は増えていて、これまでエイズ予防対策を薬物使用者や同性愛者など感染リスクの高い集団に限定しようとした結果、一般社会全体に予防知識が伝わらず、かえって感染リスクの高い集団にも正しい予防知識が届かなくなる傾向もあるように見える。

医療先進国では一般的に、20代でHIV感染しても治療を受け続ければ高齢になるまでエイズ発症しない。日本の新規エイズ患者報告数が増加しているのは、エイズ発症するまでHIV検査を受けない人がまだ多いからだ。これは多くの自治体で無料HIV検査予算が減っているため、保健所の検査日程が改善されずHIV検査率が上がらないことも原因だ。他の自治体より検査が受けやすい東京都でも新規HIV感染者報告数の約9割が40歳未満だが、無料HIV検査を受けた人の約8割が40歳未満なので、新規エイズ患者報告数は年代別の差がなく中高年も多い。つまり40歳以上ではエイズ発症してから初めて医療機関でHIV感染に気付く割合が高く、50歳以上のHIV感染者では半数以上がエイズ発症するまでHIV検査を受けてない。東京以外の地域では、エイズ発症するまでHIV検査を受けてない人の割合はさらに高い。これも欧米と同様、一般社会全体に正しいエイズ予防知識が伝わってないからだろう。
○ 東京のエイズの現状
・行政が実施する〔保健所などの無料HIV〕検査の受検者の約8割が30歳代までの比較的若い世代。発症した状態で感染が判明する〔割合が高い〕40歳代以上の受検が少ない。
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(2)感染拡大の防止
・若い世代、40歳代以上の世代、同性愛者等、感染予防に向けた行動の支援を必要としている層に対し、対象者それぞれの人権や社会的背景に配慮しながら、対象層の行動特性に合わせた発想や手法を用いた予防啓発の実施を検討すべきである。
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・同性愛者や外国人等に対しては、コミュニティへの介入など、地域に根ざした普及啓発とともに、コミュニティに繋がりを持たない対象に対してもメディアを通じた情報発信に取り組むことなどを検討すべきである。
(東京都福祉保健局 東京都エイズ専門家会議「最終報告」について)
〔エイズ発症するまでHIV検査を受けてない〕エイズ患者として報告される割合は、全国の約3割に対し、長野県では約6割と高い。
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HIV感染者(キャリア)は20代に多いが、〔長野県の〕エイズ患者は40〜50代に多い。
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全国は「同性間〔の性的接触によるHIV感染〕」の割合が高いが、長野県では圧倒的に「異性間」が高くなっている。
(長野県衛生部 長野県のHIV/エイズの現状と特徴)
 厚生労働省のエイズ対策を研究するチーム(主任研究員、東優子・大阪府立大学准教授)は、『日本の性娯楽施設・産業に係わる人々への支援・予防対策の開発に関する学際的研究』をまとめた。
 それによると、年齢が上がると、コンドームの使用率が減少する傾向があることがわかった。
(2007.05 渋井哲也 OhmyNews)
東京都はこの報告をふまえて「エイズ対策推進プラン」(仮称)を今年度中に公開するらしい。エイズ対策に限らず、いわゆる「専門家会議」の報告を東京都が重視しているのかは疑問だが、日本の新規HIV感染者・エイズ患者報告数の約3分の1が東京で報告されているので、東京都が従来より有効なエイズ予防対策を意識して無料HIV検査予算を拡大することに期待したい。
 築地市場(東京都中央区)の移転先の豊洲地区(江東区)の土地から、公表値の約115倍の濃度の発がん性化学物質「ベンゾ(a)ピレン」が検出されたとする調査書を東京都が6月に受理していたにもかかわらず、汚染対策について議論する公開の専門会議の最終会合(7月開催)でその結果を報告しなかったことが26日、分かった。都は「報告事項に該当しない」として、10月末まで調査書の結果を把握する作業を放置したため、同会合で公表できなかったと説明している。
(2009.01.26 産経新聞)

・関連
→ 都市周辺県で「いきなりエイズ」が多い理由
→ 高齢者の性感染症
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