2011.06.19 Sunday

法輪功が捏造した「陰性エイズ」デマを夕刊フジが拡散

 病気ではないのに自分は重病だと思い込んで症状を訴え続ける心気症は、昔から世界中によくある心の病気(身体表現性障害)のひとつです。HIV検査を受けて感染してないことがわかっても「自分は感染してる」と思い込み続ける、いわゆるエイズノイローゼも心気症にあてはまることが多いようです。
 医者に病気ではないと診断されたのに「現代医学でもわからない奇病」などと思い込んでしまう場合は、心療内科・精神科で適切な診療を受け不安を取り除くべきなのですが、インチキ宗教やニセ医療のカモにされてしまう人もいるようです。
 医療や進化論を否定するカルト宗教団体「法輪功」の広報紙である「大紀元」が、数年前から「中国でエイズによく似た奇病」というデタラメな噂を広めていることはネットで話題になっていました。この噂については中国衛生省も自称患者たちの調査を行い「心理的な要因だ」という調査結果を今年の4月に発表しました。しかし、法輪功系メディアの大紀元や新唐人電視台はその報道を「未知のウイルス」「陰性エイズ」というデマにすりかえ、そのデマをなぜかチャンネル桜夕刊フジが日本で拡散しているようです。
 「夕刊フジが取材した」という2人の自称感染者の証言はまさに心の病気を疑われる内容で、奇病とは思えません。Aさんは「大学病院や総合病院、泌尿器科や性病科など30件ほど回ったが、原因は不明。心療内科にも行ったが『問題なし』」と証言していますが、たいした症状もないのに奇病だと思い込み仕事を辞めて異様な数の病院をまわってる人が心の病気を疑われないのは不自然です。この夕刊フジの取材ネタはチャンネル桜に出演してる坂東忠信という人のブログの5月の記事と酷似しているのですが、ブログ記事には「未知のウイルス」の元ネタが「大紀元」だということも明記されてます。さらにブログ記事ではこの自称感染者のできものはひどい症状ではなく「心療内科も3軒回った」とか「薬は効かないが健康食品が効く」と主張していることも書かれていますが、特定の健康食品だけが症状を軽減させるなんて宣伝する自称感染者たちの話は、半信半疑の読者もさすがにガセネタだと気付くでしょう。
 つまり夕刊フジの記者は「陰性エイズ」がどうしようもないガセネタだとわかってるはずなのに、元記事のヘタな嘘をごまかしたうえで、わざと「コンドームで防御できず?」なんて見出しで煽っているのです。
夕刊フジ2011年6月19日 中国を中心に、エイズに似た症状を訴えながら、検査では「陰性」と判定される患者が相次ぎ、「陰滋病」(陰性エイズ)として話題になっている。中国衛生省は「心理的な要因だ」としているが、新型肺炎SARSに立ち向かった中国の著名医師も研究を始めた。
(2011.06.18 夕刊フジ)
何百人という中国人が、自分がHIVに似た症状の新型疾患にかかったかもしれないと思う一方で、医師は、彼らの病気は身体的なものというより、むしろある精神的病状の結果ではないかと考えています。
(中国に広がる「HIV恐怖症」 BBCニュース 上海 クリス・ホッグ)
上記の症状一覧を見ての私の最初の印象は「あまりエイズに似ていない」。いわゆるエイズ(後天性免疫不全症候群)は、通常、HIVに感染してから数年間経ってから起こるため、「初期症状が主に性行為の後に出る」という点で決定的に異なる。強いて言えば、HIV感染後の急性期に起こる「HIV初感染症候群」に似てなくもない。HIV初感染症候群の臨床症状は伝染性単核球症に似ているとされている。伝染性単核球症の典型的な症状は発熱、咽頭痛、リンパ節腫脹である。通常の風邪と区別がつかないこともあるとされる。要するに、HIV感染だけに見られる急性期の特別な症状はない。何より、急性期の症状は、数日から数週間で治癒するのがほとんどである。感染を心配している日本人のブログによれば、少なくとも数ヶ月は症状が持続している。自然治癒する疾患であれば、怪病として恐れられたりしないだろう。
未知のウイルスによるものという可能性はどうだろうか。SARS(重症急性呼吸器症候群)流行のときに、中国政府の対応は、WHOへの報告が遅れるなどの問題点があった。今回の件でも、中国政府が情報を隠蔽しているかもしれないという懸念が、「注意喚起」を目的とした情報拡散の一因になっているようである。しかし、上記引用している記事の日付は2009年6月である。ほぼ1年前である。もし、「感染経路も極めて多様で、そのスピードの速さには広範囲の感染被害が憂慮される」ような未知のウイルスが存在するならば、1年間近くもWHOなどの公的機関が気付かないなんてことがありうるだろうか? WHOには、中国政府の情報隠蔽に協力する動機はない。唾液や汗などでも感染するような「感染力の強い未知のウイルス」が事実だとしたら、何らかの陰謀論でも持ち出さない限り説明できない。
(2010.05.24 エイズに似た怪病が中国で急速に拡散しているという話はたぶんガセ - NATROMの日記)
心気症は、身体症状または身体機能に対して重病にかかっているのではないかという恐怖や考えにとらわれてしまう障害で、内科や外科を受診し適切な医学的評価や説明を受けても、現代医学でもわからない奇病にかかっているなどといった考えが持続します。規則的な身体的診察が日常生活の障害を防ぐために有用です。
(主な疾患と症状 外苑メンタルクリニック)
Q95 エイズノイローゼとは何か
A HIVに感染したのではないかという不安に始終つきまとわれて、HIV抗体検査結果が陰性であっても、その不安が解消されない人の場合や検査結果が陽性になるのではないかと心配するあまり検査を受けずに悶々とし精神的に大変不安定になる人の場合等をさす。
 前者の場合には、性格的に神経症タイプの人がなる場合や強迫神経症等の神経症の場合、心因反応や精神分裂症のエイズ妄想の場合等が考えられる。これらの場合には、神経科や精神科等での専門的治療を要することが多い。
 後者の場合は、心配性の人がなることが多く、検査を受けて不安を解消するよう時間をかけてくり返し勧めることが望まれる。
(厚生労働省 エイズ相談マニュアル)

 おかしなデマが中国で広まるのは、中国政府の感染症政策と情報隠蔽体質への不信感があるからだとしても、日本のメディアまでこんなデマ拡散に加担しているのは残念です。
 法輪功は2008年にも「中国でエイズスイカ」という差別的なデマを拡散したことで知られています。現実にはもしHIV感染者の血液を注射した食べ物を出荷しても、食べた人がHIV感染する可能性はありません。このデマに類似したバカ設定の、HIV感染者の血液を牛乳に入れて飲ませるという日本の小説「告白」も、読者の誤解を招く描写だと批判されていました。
HIVの感染は、通常血液同士の接触か、性交渉以外では成立しません。勿論ウイルスを多量に含む血液を大量に飲めば、口の粘膜からウイルスが侵入する可能性はありますが、牛乳に混入した程度では感染成立の可能性は、殆ど存在しないでしょう。お母さんの母乳からお子さんに感染した事例はあるのですが、それは量が大量であることと、赤ちゃんの胃腸の免疫機能が、まだ未熟であるためと考えられます。
おまけにこのパートナーは、HIV感染症の治療中なのです。治療中の血液には、もうウイルスは殆どない筈です。従って、感染する可能性も更に低下するのです。
ここまで読んで頂ければ、この方法が実現可能性は殆どないのに、「HIV患者の血液は毒である」という、嫌な気分だけを残し、ある種の誤った病気への感覚を、助長する役割しか果たさないということが、お分かり頂けるのではないか、と思います。
(2009.04.23 「告白」の嘘(ネタばれ注意):六号通り診療所所長のブログ)
 中国当局の統計では、人口13億の中国で、少なくとも74万人のHIV感染者やエイズ患者が存在するが、実際は当局の数字より、さらに多いとみられる。
 こうした人びとは、長い間、偏見や差別にさらされてきた。だが、最近では政府が公にHIV感染の予防を呼びかけていることもあり、HIV感染者らを取り巻く状況は改善しつつある。
 しかし、ILOが18日に発表した報告書によると、中国の医療機関におけるHIV感染者差別はなくなっていない。その主要因は2つある。
 多くの総合病院では、HIV陽性者というだけで患者を自動的に感染症専門の病院に押し付けている。だが、専門医療機関が受け入れるのは、HIV/AIDS治療が目的の患者のみで、HIV/AIDSと直接の関係がない症状の治療は行っていない。
 さらに、中国の病院の多くは利益を優先するため、病院の経営者らが、HIV感染者を治療すれば、これを知った人びとが具合が悪くなった時に他の病院に行ってしまうと恐れていると、報告書は指摘している。
(2011.05.18 中国の病院で門前払いのHIV/AIDS患者たち、ILO報告書 AFPBB News)

・関連
→ デタラメなエイズ噂話をネタにした週刊誌の記事
→ HIV感染者への偏見を広める夜回り先生の被害妄想
→ 抗HIV治療に関するよくある誤解
→ エイズ偏見で韓国HIV感染者の死因の約3割が自殺

2011.03.18 Friday

自然災害と宗教を選挙に利用する石原都知事の「津波は天罰」発言

 知事引退を撤回した出馬会見で石原慎太郎知事が「津波は天罰」と被災者を中傷する宗教的発言をしたうえ、その後の会見で新聞記者から発言意図を確認されても撤回せず「日本に対する天罰だ」と重ねて主張したことが問題になり、宮城県知事から抗議を受けた石原都知事は発言の翌日にようやく謝罪しました。
 東京都の石原慎太郎知事は14日、東日本大震災への国民の対応について記者団に問われ「我欲で縛られた政治もポピュリズムでやっている。それを一気に押し流す。津波をうまく利用して、我欲をやっぱり一回洗い落とす必要がある。積年にたまった日本人の心のあかをね。やっぱり天罰だと思う。被災者の方々はかわいそうですよ」と述べた。
 知事は一連の発言の前に、持論を展開して「日本人のアイデンティティーは我欲になっちゃった。アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等だ。日本はそんなもんない。我欲だよ。物欲、金銭欲」と語っていた。
 同日、この後に開いた都庁の記者会見で「天罰」の意味について「日本に対する天罰だ」と釈明。「大きな反省の一つのよすがになるんじゃないか。それしなかったら犠牲者たちは浮かばれない」と話した。天罰について発言した際、「『被災された人は非常に耳障りな言葉に聞こえるかもしれないが』と言葉を添えた」としたが、実際には話していなかった。
(2011.03.14 共同通信)
 東京都の石原慎太郎知事は15日、記者会見し、東日本大震災を「天罰」とした14日の発言について「撤回し、深くおわびします」と陳謝した。
 知事は「行政の長である私が使った『天罰』という言葉に、添える言葉が足りなかった。かつてない困難の中にある被災者の皆さまの失意と無念は拝察するにあまりある。同じ日本に住む者として、明日はわが身、わがことであると思う」と述べた。
(2011.03.15 共同通信)
 では、逆に考えて、石原慎太郎は「我欲を捨て、正しい治世を行なえば、災害は起こらない」と考えているのでしょうか? しかし、そう考えの人間が上に立てば、災害対策が蔑ろにされることは容易に想像がつきます。
 災害と一言で言っても、地震や津波といった自然由来の部分は人間の力ではどうにもならないとしても、備えや事後の対処といった人為由来の部分については、ちゃんとした対策をすれば、ひとりでも多くの人の命や財産を救うことができます。今回の地震と津波は確かに大きな被害を発生させました。報道などでは為す術が無かったかのように報じられていますが、それでも堤防や物資などの備えや、その後の人々の行動が、被害から人々を守ったという側面もあるはずです。
 本来であれば、現在地震の影響を受けている東京都の知事である石原慎太郎が行なうべきは、まず第一に都民の混乱や不安に対する対処、第二に東京の災害対策に対する評価と新たな対策なのですが、石原はそうしたことを飛び越えて、自ら「天罰という宗教的道徳観」に逃げ込み、現実の被害を腐したのです。
(2011.03.16 赤木智弘の眼光紙背)

 「津波は天罰」と発言する3日前の、11日の地震直後の緊急会見では石原都知事は「(東京が)今程度の損壊で済むようなら、他県に比べてありがたい」と、被災者に対して他人事という意識が感じられる発言もしていました。
 また石原都知事は10年前からテレビなどでたびたび「東京湾に造ったっていいくらい日本の原発は安全」と主張していました。しかし現実には、津波による被害を受けた福島原発は以前から「津波が発生した際には機器冷却海水の取水が出来なくなる」と指摘されていたのに、東京電力は津波対策も機器点検も怠っていたのです。

 自然災害の被害に対して「天罰」という言葉を使うことじたい被災者を中傷した問題発言ですが、謝罪会見で石原都知事は「添える言葉が足りなかった」と釈明し「天罰」の存在は否定しませんでした。
 ネット上などでこの石原発言を擁護してる人たちは、発言の前後の文脈では被災者に配慮しているので中傷する意図はないなどと弁明しています。
 しかし、この中傷発言の前後の文脈が噛みあわないのは、石原都知事が「天罰」が実在するという前提で語っているからでしょう。今回の謝罪会見で石原都知事が「天罰」の存在を否定しないのは、被災者への謝罪より石原の選挙を支える宗教団体への配慮を優先しているように見えます。この時期の出馬会見でわざわざ「津波は天罰」という露骨な宗教的発言を行ったのは、これまで石原都知事が「同性愛者は遺伝とかのせい」「変態はDNAが狂ってる」など非科学的な差別発言を繰り返してきたことの延長で、信仰心を示して宗教団体の支持を固めることが目的なのでしょう。討論会も延期され、通常の選挙活動すら自粛されかねない今回の都知事選では、これまで以上に宗教団体の影響力は大きいかもしれません。
 石原慎太郎自身は霊友会の信者で「法華経に生きる」という著書もありますが、それだけではなく慎太郎は崇教真光の教祖を自宅にも招くほど親密で対談本もあり、今回知事引退する意向だった石原慎太郎に出馬を説得した息子の石原伸晃は崇教真光の信者として大祭に出席しています。また、石原親子は個人的に信仰する団体だけでなく複数の宗教団体と関係して選挙協力を受けていることは週刊誌の選挙取材でも指摘されていて、2009年当時全選挙区に候補を擁立していた幸福実現党石原宏高の選挙区では対立候補の出馬をとりやめたり、立正佼成会の拠点である石原伸晃の選挙区で民主党が対立候補を擁立しなかったなど、宗教団体を対立候補の出馬調整にも利用しているようにも見えます。そして今回の都知事選では石原慎太郎は、かつて統一教会の大会に祝電を送っていた松沢成文神奈川県知事を出馬辞退させるかわりに副知事に起用するのだそうです。
石原知事は4選を果たした場合に、松沢氏を副知事など重要ポストで起用する考えを示唆した。
(2011.03.14 時事通信)
 宗教団体などを支持母体とする候補者が、差別的発言を繰り返すことで選挙の争点をずらし、宗教保守層の支持を固める手法は、アメリカなど海外の選挙でもよく使われています。しかし、キリスト教原理主義の人口が多いアメリカ南部と違い、東京都は宗教信者の票だけでは知事選には当選できないはずです。知らないうちに宗教団体の扇動にのせられてしまう人が多いのでしょうか。
(→ 差別発言をくりかえす石原都知事に媚びる週刊誌)

 奈良・平安時代の日本では「天譴(天罰)」という迷信の意味は、儒教の「為政者に対する天の譴責」という思想に基づいていました。ところが、大正の関東大震災の後に内村鑑三などのキリスト教信者などが流行させた「震災は堕落した国民への警告」という狂った言説が、公職者などにとって都合がいいものだったため、日本でも「天譴」という迷信は自業自得という意味にすりかえられ、当時の道徳教育は儒教主義だったのに、震災の後は中学校の「修身」の授業でも被災者の生徒たちに「地震は人々の贅沢を戒める天罰」と教えていたといいます。
 当時の天譴論に対する反論は、実業家の渋沢栄一に反論した芥川龍之介の『大正12年9月1日の大震に際して』にも書かれています。
『日本震災史』によれぱ,「天譴」の思想はもともと儒教主義に基づくものであり、奈良・平安の王朝時代に既にこの「天譴」ということばが用いられているということである。このことばの本来の意味は,「為政者に対する天の譴責」ということだとされているのだが,大正時代に再びよみがえったこの天譴の思想は、少々異なったニュアンスをもって登場してきている。
(1982 仲田誠 『災害と日本人』)
 同胞よ。面皮を厚くせよ。「カンニング」を見つけられし中学生の如く、天譴なりなどと信ずること勿れ。僕のこの言を倣す所以は、渋沢子爵の一言より、滔滔と何でもしやべり得る僕の才力を示さんが為なり。されどかならずしもその為のみにはあらず。同胞よ。冷淡なる自然の前に、アダム以来の人間を樹立せよ。否定的精神の奴隷となること勿れ。
(1923 芥川龍之介 『大正十二年九月一日の大震に際して』)
もし先生の説明を受け容れるならば、このクラスで私だけが天物暴殄の罪を犯して、私だけが天譴を受けたことになるのではないか。私のことなど、どうでもよい。貧しい、汚い、臭い場末の人々、天物暴殄に最も縁の遠い人々、その人々の上に最も厳しい天譴が下されたことになるのではないか。私は、先生の説明が一段落つくのも待たずに、右のような趣旨の質問をした。先生が何とお答えになったかは覚えていない。何とお答えになったとしても、私は「天譴」および「天物暴殄」という概念を受け容れることは出来なかった。
(1975 清水幾太郎 『わが人生の断片』)

 地震の後はさまざまな宗教団体の施設が帰宅難民の一時避難所などに役立っていたという話もあります。しかし、もし被災者に対して「地震は天罰だ」と罵るような宗教団体があったら、人助けをしても偽善にしか見えず感謝されないでしょう。
 同様に「地震は天罰」と主張した人物をまた都知事に選ぶなら、いくら被災地を支援しても、東京都民はインチキ宗教の信者のような人たちだと思われるかもしれません。

・関連
→ ポーランドの「乱交ゲーム」というデマと日本の青少年厳罰論に共通する悪意
→ 差別発言をくりかえす石原都知事に媚びる週刊誌
→ 赤枝医師の発言の信憑性
→ TVタックルで性感染症自己責任論
→ 宗教右翼を煽動したジェリー・ファウエルの残した妄言

2011.01.31 Monday

差別発言をくりかえす石原都知事に媚びる週刊誌

 石原都知事が2010年12月の記者会見で青少年条例の話から、同性愛者について「遺伝のせい」「どこか足りない」など差別的な発言をしたことが毎日新聞や東京新聞や朝日新聞で報道されました。ところが、読売新聞や産経新聞、そしてほとんどのテレビ局は、会見の場に記者がいたはずなのに、都知事の差別発言について報道しませんでした。そして週刊新潮は、都知事の差別発言を批判した人物を槍玉にあげ、さらに性教育まで批判する、まるで宗教広報誌のような論調の記事を掲載して差別に加担しています。
 東京都の石原慎太郎知事は7日、同性愛者について「どこかやっぱり足りない感じがする。遺伝とかのせいでしょう。マイノリティーで気の毒ですよ」と発言した。石原知事は3日にPTA団体から性的な漫画の規制強化を陳情された際、「テレビなんかでも同性愛者の連中が出てきて平気でやるでしょ。日本は野放図になり過ぎている」と述べており、その真意を確認する記者の質問に答えた。
 7日の石原知事は、過去に米・サンフランシスコを視察した際の記憶として、「ゲイのパレードを見ましたけど、見てて本当に気の毒だと思った。男のペア、女のペアあるけど、どこかやっぱり足りない感じがする」と話した。同性愛者のテレビ出演に関しては、「それをことさら売り物にし、ショーアップして、テレビのどうのこうのにするってのは、外国じゃ例がないね」と改めて言及した。
(2010.12.07 毎日新聞 真野森作)
〇七番(福士敬子君) それから、青少年条例は、知事答弁を避けられました。都小P協の要請時、知事が、テレビに同性愛者が平気で出ると発言されたとの報道がありました。条例案を勘違いされていませんか、伺います。発言の趣旨はどんな思いでおっしゃったのか、お答えをいただきたいというふうに思います。以上です。
〇青少年・治安対策本部長(倉田潤君) 本条例案の性交等につきまして、同性か異性であるかということについて何ら変わりはございません。
(2010.12.08 東京都議会会議録)
 東京都の石原慎太郎知事は17日の記者会見で、過激な性描写のある漫画などの販売を規制する都改正青少年健全育成条例が成立したことに関連し「世の中には変態ってやっぱりいる。気の毒な人で、DNAが狂っていて。やっぱりアブノーマル。幼い子の強姦(ごうかん)がストーリーとして描かれているものは、何の役にも立たないし、(百)害あって一利もない」と述べ、規制の必要性を改めて強調した。
(2010.12.17 時事通信)
続いて東京の一般参加者が、
「東京都では性教育への圧力が高まっています。来校した看護師の方に実物のコンドームの装着の仕方は教えてもらえなかったりと、圧力に屈しています」
 また各分科会には、日教組の主張の代弁者である共同研究者がいるが、ここでは、女性の共同研究者が、
「石原都知事が同性愛に対して“足りない”と言うのは、哀しい差別です」
と、こう主張し始めた。
「全体主義の戦争をした国だから同調圧力があり、異質性を認めることができないのです。韓国併合で朝鮮人を無理やり帰化させ、自分たちに同調させた過去がありますからね」
家族は要らず、学校はコンドームの装着法を教えなければならず、同性愛者の権利は認められるべき…。そんなことが“教育研究”の名を借りて、大声で叫ばれているのである。
(2011 週刊新潮 2月3日号 『ゆとりをもう一度! 同性愛者の権利を! 売国と自虐で喝采! 正気を疑う「日教組」亡国の教研集会』) (2011.01.31 yudai TwitLonger)

 石原都知事の「同性愛者は遺伝とかのせい」「変態はDNAが狂ってる」説はまったくデタラメで、暴論の根拠すら示されてません。また、幼い子を強姦する描写がある漫画が一般向けとして売られている実例もありません。「テレビ出演は外国じゃ例がない」説もひどい嘘で、カミングアウトしている有名人や政治家はたくさんいます。レズビアンとして知られている、東京都と姉妹都市提携を結ぶニューヨーク市議会のクリスティン・クイン議長も、石原の差別発言と表現規制を批判しています。

 石原都知事は就任以来、根拠のない偏見に基づいた差別的な発言を数多く繰り返しているのは有名ですが、問題発言をまとめたサイト「石原慎太郎の監視小屋」Wikipediaなどをあらためて見ると、自分が忘れていた事例や見落としていた発言も多くうんざりします。石原親子は複数の宗教団体と関係していることも公言しています。
 2010年の東京都青少年条例の改正について会見などで質問される機会が増えてから、石原都知事はこれまで以上に、宗教的な発言や、LGBTや漫画読者などを蔑視する発言を繰り返すようになりました。しかしテレビ等では相変わらず石原都知事はなぜか大御所タレント的な扱いで、カメラの前で差別発言をしてもほとんど報道されない存在になっています。TOKYO MXテレビではマツコ・デラックスがレギュラー番組『5時に夢中』の中で石原都知事の発言を批判しましたが、MXテレビの幹部は石原都知事の方針に反するアニメ好きを今後は社員に採用しないことも考えていると週刊現代は煽っています。
 宗教団体などを支持母体とする候補者が、差別的発言を繰り返すことで選挙の争点をずらし、宗教保守層の支持を固める手法は、アメリカなど海外の選挙でもよく使われています。しかし、キリスト教原理主義の人口が多いアメリカ南部と違い、東京都は宗教信者の票だけでは知事選には当選できないはずです。知らないうちに宗教団体の扇動にのせられてしまう人が多いのでしょうか。
 さらにこの〔MXの〕幹部は、条例によって番組だけでなく、新卒採用の方針も変えなければならないと頭を抱える。
「うちはアニメに強い放送局ということで学生にも人気があるのですが、会社は『今後のことを踏まえて、アニメ好きを過度にアピールする学生は採用しないほうがいいのでは』と考えています。
(2011 週刊現代 2月12日号) (2011.01.31 かるび Twitter)
今週発行の週刊誌に、TOKYO MXの新卒採用に関して、
「アニメが好きか否か」が採用の基準であるかのような記事が掲載されましたが、
そのような事実はまったくございません。
応募をお考えの皆様、ご心配なくエントリーをお願い申し上げます。
(2011.01.31 TOKYO MX 新卒採用ブログ)
 今回〔2004年米大統領選〕、CNN他のアンケートによると、ブッシュに投票した理由で最も多かったのは「モラル政策」がトップだったと報道された。具体的には中絶問題とそれに伴う幹細胞研究、およびゲイ結婚への反対だ。
 経済政策への関心は二番目で、対テロ、戦争に関する政策は三番目だった。
(2004.11.03 町山智浩アメリカ日記)

 東京都の青少年条例改正案を作成した東京都青少年・治安対策本部の部長らは警察からの出向職員だそうです。東京都以外でも警察関係者が青少年条例を主導している自治体が多いため、警察の権限を拡大する方向に条例改正されているという指摘もあります。かつては警察官の妻たちの組織「母の会」が悪書追放運動を扇動してきたともいわれています。そして警察も条例改正への圧力に宗教系団体の人脈を利用しているため、改正された東京都青少年条例は、近親相姦など宗教的タブーを扱う漫画にだけ異常に厳しい、不自然な条文になっています。
 都条例問題以外でも、必要以上に規制拡大をはかる警察はくりかえし宗教系団体と同じような主張をしています。今年から日本にも導入される見込みの、児童ポルノブロッキングという大義名分のネット検閲制度でも、警察は、どういうサイトが遮断されたのか検証しにくいような方式にこだわっています。エジプトや中国政府のようなネット遮断可能な権力を日本では警察と宗教系団体が握ろうとしてるのでしょうか。
 また、業界は画像が掲載されているサイトの管理者が削除に応じなかったり、警察の捜査が困難だったりした場合に限りブロッキングが可能としているのに対し、警察庁は画像を発見次第、即時にブロッキングができるとしている。設立予定のインターネットコンテンツセーフティ協会には、プロバイダーの意向が反映するとみられ、今後、警察庁の反発も予想される。
(2011.01.31 東京新聞)
 独裁政権転覆を図る大規模デモで緊張が高まる中、エジプト政府は夕べ午前0時頃、全国民8000万人のインターネットを遮断する異例の措置を取りました。
 一体どう切ったのでしょう?
 巨大なレバー、大きな赤いボタンのような「Kill Switch」があってバチンと切った...わけじゃありません。が、それに近いです。エジプト政府が国内大手ISP4社にサービス遮断命令を送ったんですね。
(2011.01.29 ギズモード・ジャパン)


・関連
→ 着衣の少女の彫刻をポルノと中傷され発表の場を失ったドガ
→ 条例改正案を読まずに過剰規制を容認するのは危険
→ 不明確な基準で一般人を摘発する表現規制条例
→ 騒動を利用して、無関係な表現まで検閲しようとする団体
→ いつのまにか過剰になる表現規制
→ 通報されているものはほとんど児童ポルノではない
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