2007.05.11 Friday

カルト宗教が広めた都市伝説

ORICON STYLEのインターネット調査では「人類は月に行っていないと思う」人が18.5%もいたという。
(ORICON STYLE:人類月に立つ歴史、信じない人約2割に)

都市伝説本の流行やTV番組の影響で日本にも広まったアポロ計画捏造説だが、この噂の元ネタは、聖書に書かれていないことを認めないキリスト教原理主義団体のひとつFlat Earth Society(大地平面協会:地球は球ではなく聖書にあるとおり平らであると主張する団体)が唱えたものらしい。
(Wikipedia:アポロ計画陰謀論)

こうした宗教的迷信が都市伝説になるのは、宗教的な部分を隠して迷信だけを広めようとする動きがあるからだ。カルト宗教団体が広めたニセ科学として有名なもののひとつにインテリジェント・デザイン論(反進化論:進化は神のごとき偉大な知性の操作によるものだという説)がある。ブッシュ大統領はこれを公教育で教えるべきだと発言している。現在でもアメリカ人の半数近くは神が人類を創造したと考えているという。
(2007.03 NewsWeek)


日本では、霊感商法で知られる悪徳カルト宗教の統−教会が保守系新聞を利用してインテリジェント・デザイン論や反性教育運動を広めている。
「人間の祖先はサルだという教育は、生物の授業の仮説ならともかく歴史教育や道徳教育にはマイナスだ」
(2005.09.26 産経新聞:渡辺久義・京大名誉教授に聞く)

宗教上の理由で避妊を認めない人たちによる反避妊団体は、コンドームの効果を否定するようなデマを世界中で広めている。
(AMERICAN LIFE LEAGUEの反コンドーム論)

例えば「コンドームには目に見えない穴があいている」という話はデタラメだ。日本のコンドーム製造工場では電気導通方式で機械による全数ピンホール検査を行っている。
(オカモトコンドームができるまで)

カルト宗教が広めた迷信をネット上で面白がってネタにしているうちに、それを読んで嘘を信じてしまう人が日本でも増えているようだ。このようなコンドーム否定説に限らず、中絶や性病や避妊に関する都市伝説の多くは反避妊団体が広めた嘘が元ネタなので注意してほしい。

2007.05.10 Thursday

禁欲主義をアフリカに強制した米政府高官が買春発覚で辞任

米国大統領エイズ救済緊急計画の地球規模HIV/AIDS調整官で、世界エイズ・結核・マラリア対策基金の政策・戦略委員長でもある、ランドール・トバイアス米国際開発局長は、アフリカのエイズ対策として禁欲を促進していた人物。
 米国政治の中心地であるワシントンD.C.で、政界の重鎮たちを相手に高級デートクラブを運営していた通称「DCマダム(DC Madam)」は、現在、売春容疑のため起訴されている。
 DCマダムことデボラ・ジーン・パルフリー(Deborah Jeane Palfrey)被告は前日、顧客の1人の政府高官が辞任したことについて「申し訳ないと思う」と話すものの、一方で、検察側が起訴を取り下げない限り「これからも、実名多数を暴露することになる」と発言した。
(2007.05.01 AFP)
トバイアス氏はエイズ対策支援担当大使だった04年、禁欲による感染予防の有効性を主張している。
(2007.04.30 毎日新聞)
トバイアス氏はコンドームがエイズ感染に効果的とする科学的証拠を軽視している。
(2005.05.19 NewYorkTimes)
「(この高級デートクラブの)売りはですね、女子大生とか、大卒以上のインテリが来るということで。首都ワシントンで、政府高官とかが顧客なんで」
(TBSラジオ・podcasting954 ストリーム 町山智浩)

米国大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)を運営する地球規模エイズ調整官事務局とは、簡単にいえばアメリカの国外援助をコンドーム配布に使わせないようにするための組織。ブッシュ大統領の支持層であるキリスト教原理主義者たちは、人命にかかわるエイズ予防支援よりも信仰を重要視している。
PEPFARの予防戦略はABCアプローチと呼ばれており、禁欲Abstain、貞操Be Faithful、コンドームCondomsの3つを柱としているが、コンドームよりも、禁欲や貞操により重きをおいている。このことは各方面からの批判を招いており、米会計検査院 US Government Accountability Office は、禁欲と貞操の戦略を推進するにあたって、他の重要なプログラムの予算が削られることになってしまう、と述べている。会計検査院はさらに、この理想一辺倒の戦略を実行するにあたり、現場は困難に直面していると指摘した。
(2006.04 Global AIDS Alliance)

他国民に対して禁欲を強制する米国大統領エイズ救済緊急計画の責任者だったトバイアス米国際開発局長が買春していたことは国際的な問題にもなりかねない。

2007.05.07 Monday

エイズ感染を克服したブラジル

ブラジルでは、国全体でコンドームは2004年に合計1.5億個が、2005年に2.5億個が配布されたが、今年は最低でも15億個のコンドーム配布を目標としている。
(2006.02.08 Kaiser Daily News)
国連はブラジルのエイズプログラムを、途上国におけるエイズ治療の模範として評価している。ブラジル政府は治療を必要とする患者に無料でエイズ薬を提供しており、その患者数は現在16万人に上る。無料薬によって、ブラジルのエイズによる死亡者数は欧米と同じレベルにまで減少した。また10年以上にわたり実施されている、より安全な性行為 safer sex に関する率直なキャンペーンは、ブラジルのHIV感染率を世界で最も低い西ヨーロッパに近いレベルにまで下げるのに貢献してきた。
(2005.10.11 Associated Press)
ラテンアメリカで最も多い人口を抱えるブラジルでは、62万人[37万−100万人]の人々がHIVとともに生きており、この数は、ラテンアメリカでHIVとともに生きる人々の3分の1に相当する(UNAIDS、2006)。ブラジルでは予防と治療の強化が功を奏し、この5−6年にわたりHIVの流行は安定化している(Okie、2006)。学校での性教育とエイズ予防、コンドームの使用奨励、ハームリダクションやHIV検査などを協調して実施した結果、成人の国家レベルのHIV陽性率は、2000年以降約0.5%で横這い化している。また、1998年と2005年では、性的に活動的な若者の割合がほとんど変化していないが、コンドームの使用率は劇的に高まり、15−24歳の男女の間の使用率は、3分の1以上高まった(Berquo、2005)。また、同じ期間で、全年齢のブラジル人のコンドームの使用率も、約50%上昇している(Berquo、2005)。
(UNAIDS:HIV/AIDS最新情報・2006年末現在)

ブラジルがエイズ感染率を下げることができたのは、宗教的な偏見にとらわれずエイズ治療と性教育などの予防対策に力を入れてきたからだろう。ブラジルのエイズ対策は世界でも進歩的といわれている。
 
 2005年4月末、ブラジル政府は、米国からのHIV/AIDS対策への4,000万ドルの援助を拒否したと発表した。ブッシュ政権は、HIV/AIDSに関わる団体が他国で行う活動に資金援助を行う場合、その団体が性産業・買売春を支持しないように確約させるという方針をとっており、これに背けば、米国からの資金援助は受けられなくなる。さらに、同政権は性産業と薬物使用反対をうたい、これに賛同しないHIV/AIDS活動グループに対しての資金援助を打ち切っている。ブラジル政府が米国の援助を拒否したのは、ブッシュ政権の上記の方針に反対の意を表明するためである。
 HIV/AIDSの活動家によると、ブラジルのエイズ対策プログラムは、セックス・ワーカーや注射薬物使用者(IDU)、男性と性行為を持つ男性(MSM)、その他のハイリスク・グループに、非常に寛容でオープンな姿勢で臨んでいる。ブラジルのエイズプログラムの責任者ペドロ・チェケル氏 Pedro Chequer は、「米国の政策は、ブラジルの多様性、倫理、人権政策への干渉である」と述べた。
 性産業は、ブラジルでは合法で、セックス・ワーカーの団体は、エイズ問題に最も活動的な組織の一つである。米国は、当初セックス・ワーカー関連8団体への支援を含む予定であったが、団体と米国政府との話し合いは決裂した。ブラジル政府は米国から得られなかったエイズ関連予算の不足分を補うために、追加の資金を割り当てる予定。
(2005.05.02 Kaisernetwork)

宗教的な考え方では性産業は認めたくない存在らしい。しかし性感染症予防という観点から考えれば、すべての性風俗店に性病予防対策や検査を義務づけ公的に予防対策を援助するほうが現実的だろう。もし国内から性風俗店をなくしても、隠れて個人売春をする女性が増えるだけかもしれない。国内の性産業がなくなると国外の性産業を利用する人が増えるおそれもある。信仰よりも性感染症予防を優先させるという政策は国民の支持を得るのが難しそうにも思えるが、ブラジルの場合はセックス・ワーカー関連団体が積極的なエイズ対策活動をしていたことが政府や国民に理解されていたのだろう。
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