2007.05.10 Thursday

禁欲主義をアフリカに強制した米政府高官が買春発覚で辞任

米国大統領エイズ救済緊急計画の地球規模HIV/AIDS調整官で、世界エイズ・結核・マラリア対策基金の政策・戦略委員長でもある、ランドール・トバイアス米国際開発局長は、アフリカのエイズ対策として禁欲を促進していた人物。
 米国政治の中心地であるワシントンD.C.で、政界の重鎮たちを相手に高級デートクラブを運営していた通称「DCマダム(DC Madam)」は、現在、売春容疑のため起訴されている。
 DCマダムことデボラ・ジーン・パルフリー(Deborah Jeane Palfrey)被告は前日、顧客の1人の政府高官が辞任したことについて「申し訳ないと思う」と話すものの、一方で、検察側が起訴を取り下げない限り「これからも、実名多数を暴露することになる」と発言した。
(2007.05.01 AFP)
トバイアス氏はエイズ対策支援担当大使だった04年、禁欲による感染予防の有効性を主張している。
(2007.04.30 毎日新聞)
トバイアス氏はコンドームがエイズ感染に効果的とする科学的証拠を軽視している。
(2005.05.19 NewYorkTimes)
「(この高級デートクラブの)売りはですね、女子大生とか、大卒以上のインテリが来るということで。首都ワシントンで、政府高官とかが顧客なんで」
(TBSラジオ・podcasting954 ストリーム 町山智浩)

米国大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)を運営する地球規模エイズ調整官事務局とは、簡単にいえばアメリカの国外援助をコンドーム配布に使わせないようにするための組織。ブッシュ大統領の支持層であるキリスト教原理主義者たちは、人命にかかわるエイズ予防支援よりも信仰を重要視している。
PEPFARの予防戦略はABCアプローチと呼ばれており、禁欲Abstain、貞操Be Faithful、コンドームCondomsの3つを柱としているが、コンドームよりも、禁欲や貞操により重きをおいている。このことは各方面からの批判を招いており、米会計検査院 US Government Accountability Office は、禁欲と貞操の戦略を推進するにあたって、他の重要なプログラムの予算が削られることになってしまう、と述べている。会計検査院はさらに、この理想一辺倒の戦略を実行するにあたり、現場は困難に直面していると指摘した。
(2006.04 Global AIDS Alliance)

他国民に対して禁欲を強制する米国大統領エイズ救済緊急計画の責任者だったトバイアス米国際開発局長が買春していたことは国際的な問題にもなりかねない。

2007.05.07 Monday

エイズ感染を克服したブラジル

ブラジルでは、国全体でコンドームは2004年に合計1.5億個が、2005年に2.5億個が配布されたが、今年は最低でも15億個のコンドーム配布を目標としている。
(2006.02.08 Kaiser Daily News)
国連はブラジルのエイズプログラムを、途上国におけるエイズ治療の模範として評価している。ブラジル政府は治療を必要とする患者に無料でエイズ薬を提供しており、その患者数は現在16万人に上る。無料薬によって、ブラジルのエイズによる死亡者数は欧米と同じレベルにまで減少した。また10年以上にわたり実施されている、より安全な性行為 safer sex に関する率直なキャンペーンは、ブラジルのHIV感染率を世界で最も低い西ヨーロッパに近いレベルにまで下げるのに貢献してきた。
(2005.10.11 Associated Press)
ラテンアメリカで最も多い人口を抱えるブラジルでは、62万人[37万−100万人]の人々がHIVとともに生きており、この数は、ラテンアメリカでHIVとともに生きる人々の3分の1に相当する(UNAIDS、2006)。ブラジルでは予防と治療の強化が功を奏し、この5−6年にわたりHIVの流行は安定化している(Okie、2006)。学校での性教育とエイズ予防、コンドームの使用奨励、ハームリダクションやHIV検査などを協調して実施した結果、成人の国家レベルのHIV陽性率は、2000年以降約0.5%で横這い化している。また、1998年と2005年では、性的に活動的な若者の割合がほとんど変化していないが、コンドームの使用率は劇的に高まり、15−24歳の男女の間の使用率は、3分の1以上高まった(Berquo、2005)。また、同じ期間で、全年齢のブラジル人のコンドームの使用率も、約50%上昇している(Berquo、2005)。
(UNAIDS:HIV/AIDS最新情報・2006年末現在)

ブラジルがエイズ感染率を下げることができたのは、宗教的な偏見にとらわれずエイズ治療と性教育などの予防対策に力を入れてきたからだろう。ブラジルのエイズ対策は世界でも進歩的といわれている。
 
 2005年4月末、ブラジル政府は、米国からのHIV/AIDS対策への4,000万ドルの援助を拒否したと発表した。ブッシュ政権は、HIV/AIDSに関わる団体が他国で行う活動に資金援助を行う場合、その団体が性産業・買売春を支持しないように確約させるという方針をとっており、これに背けば、米国からの資金援助は受けられなくなる。さらに、同政権は性産業と薬物使用反対をうたい、これに賛同しないHIV/AIDS活動グループに対しての資金援助を打ち切っている。ブラジル政府が米国の援助を拒否したのは、ブッシュ政権の上記の方針に反対の意を表明するためである。
 HIV/AIDSの活動家によると、ブラジルのエイズ対策プログラムは、セックス・ワーカーや注射薬物使用者(IDU)、男性と性行為を持つ男性(MSM)、その他のハイリスク・グループに、非常に寛容でオープンな姿勢で臨んでいる。ブラジルのエイズプログラムの責任者ペドロ・チェケル氏 Pedro Chequer は、「米国の政策は、ブラジルの多様性、倫理、人権政策への干渉である」と述べた。
 性産業は、ブラジルでは合法で、セックス・ワーカーの団体は、エイズ問題に最も活動的な組織の一つである。米国は、当初セックス・ワーカー関連8団体への支援を含む予定であったが、団体と米国政府との話し合いは決裂した。ブラジル政府は米国から得られなかったエイズ関連予算の不足分を補うために、追加の資金を割り当てる予定。
(2005.05.02 Kaisernetwork)

宗教的な考え方では性産業は認めたくない存在らしい。しかし性感染症予防という観点から考えれば、すべての性風俗店に性病予防対策や検査を義務づけ公的に予防対策を援助するほうが現実的だろう。もし国内から性風俗店をなくしても、隠れて個人売春をする女性が増えるだけかもしれない。国内の性産業がなくなると国外の性産業を利用する人が増えるおそれもある。信仰よりも性感染症予防を優先させるという政策は国民の支持を得るのが難しそうにも思えるが、ブラジルの場合はセックス・ワーカー関連団体が積極的なエイズ対策活動をしていたことが政府や国民に理解されていたのだろう。

2007.05.03 Thursday

性道徳だけ教えても性感染症予防にはならない

アメリカのキリスト教原理主義者たちは法律で中絶を全面禁止にしようとしている。
米議会が先週、中絶の一部を禁止する法案を賛成多数で通過させたのに続き、ブッシュ大統領も二十八日の記者会見で法案に署名すると明言した。しかし、女性団体などは強く反発、法廷に持ち込む方針だ。この法案は個人の権利として中絶を認めてきた政策を三十年ぶりに大きく転換する重要なテーマ。
(2003.10.30 西日本新聞)

サウスダコタ州ではすでに、レイプ被害者でも中絶全面禁止とする州法が2006年に成立した。
 人工妊娠中絶を合法と判断した1973年の連邦最高裁判決に反しているが、ブッシュ大統領指名の保守派ジョン・ロバーツ氏が長官に就任するなど連邦最高裁の保守化も進行。知事は「73年の判断を覆すことは可能だ」と述べた。
(2006.03.07 共同通信)

キリスト教原理主義者が多数派の国アメリカでは、公立学校で牧師が生徒に「性器に触れるだけで妊娠する」「HIVは涙や汗を媒介に感染する」など誤った性知識を教えている。
ブッシュ政権は、絶対禁欲主義の性教育プログラムを採用する団体に1億7000万ドル(約172億円)の予算をつけている。絶対禁欲主義の性教育プログラムは1999年に始まり、その数は100以上、数百万人の9〜18歳の青少年が参加している。
(2004.12.03 ロイター/ワシントンポスト)
指導員が少しでも生徒に避妊の仕方を教えると政府の助成金は打ち切られる。
(町山智浩アメリカ日記:避妊も禁止の性教育)

この禁欲教育はまるで効果がなく、純潔を誓った若者の性感染症罹患率は誓約しなかった若者と比べて差がなかった。
「純潔の誓い」を立てた2万人以上の若者を面接調査した結果、誓いを破った者は、88%に達していたという。
(2005.10 CBSドキュメント)
コンドームの有効性や使用法などについて教えられていないこと、性器を結合するという点においては禁欲を守るものの、口腔性交や肛門性交などに向かい、結果として性感染症を広げてしまった危険性があります。
(2005.05.06 毎日新聞)

オハイオ州の高校では、女子490人のうち約13%にあたる64人が妊娠していた。
「多くの生徒が性体験を持っているけど、避妊の知識はあまり持っていない」
(2005.09.05 AP通信/ライブドア・ニュース)

この問題はアメリカ国内だけにとどまらない。ウガンダではエイズ予防対策が成功しているといわれていたが、アメリカの宗教団体による反コンドーム宣伝が行われたことで事態が悪化。2004年にはアメリカの圧力によってコンドームの無料配布が中止され、ウガンダ国内のコンドーム価格は税率引き上げにより最大500%上昇した。
禁欲のみを重視するアメリカのエイズ政策はコンドームの役割を軽視し、アフリカにおけるエイズとの闘いの妨げになっている。
(国連事務総長HIV/AIDS特別代表スティーブン・ルイス)
アメリカやカトリック系の国はコンドームに開発援助が使われることをきらう。こうした愚かなキリスト教道徳のおかげで、毎年何十億ドルもの援助が浪費されている。
(“The White Man's Burden” William Russell Easterly)

性教育を性道徳教育にすりかえる動きは日本にもある。性感染症罹患率や青少年の性交渉体験率が他県より高い茨城県では、県立高校で道徳教育を全国で初めて導入することで、性感染症対策を性道徳教育にすりかえようとしている。
県では19年度から県立高校で道徳教育を全国で初めて導入することもあり、県教育庁学校保健担当は「性を語る上で、望ましい男女間、人と人とのつながりは欠かせない。性感染症を避けるためにも、青少年の性交渉は抑制していく方向で指導していきたい」と話している。
(2007.03.25 産経新聞)
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